第19話 めんどくせー兄妹だな、まぁいいけど


齊藤は老獪な戦上手で、負けはしないが、長引けばこちらのダメージが大きい。秘密兵器の鉄砲も量産までまだしばらく時間が必要だ。何とか搦め手で三濃の国を奪いたいが、アレと結婚するのは無理だ。貞操の危機だし、殺そうとしてるので命の危機だ。何とかせねば。。。帰って来てからしばらく、俺はサルと作戦を練っていた。


「・・・よし、これで行くか。仮面衆を呼んでくれ。」

「そうですね、あの二人も特に何もいいますまい。」


仮面衆が集まり、三濃攻略について今後の方針を話す。

「まず、三濃の姫をもらい受ける、が、この国に入った直後に、本人には死神に嫁入りしてもらう。ただ、生きているように見せなければならないから、代役の姫を立てる。一方道二と義辰には派手に親子喧嘩させて、喧嘩中に二人には相討ってもらおう。相討ちの知らせを受けてから、三濃の後継者として一気に侵略する。」


「一家諸共殲滅、ですね。」

「禍根を残すわけにはいきませんもんね。」

「もともと俺の事も殺そうとしてたヤツだからな。殺す覚悟があるのなら殺される覚悟もしておかねばなるまい。」


「代役の姫様はどうするのー?」

ねねが聞いてきた。


「あぁ、それな。ちよ、お前に任せた。お前は今日からちよ、から蝶(ちよう)になってもらう。お前俺の嫁な。指南役をつけるから暫く姫様の作法を身に着けてくれ。大和撫子への修行だ。」


「ブっプゥーーーーーー!!!」

とちよが飲んでいたお茶を盛大に吐き出した。


「汚ねーな!!何やってんだよ!!!」

ちよは何が起こったのか分からない様で、湯呑を置いた後、腕を上に、横に、手をぐーぱーぐーぱーしている。本当に何やってんだか。めんどくせーヤツだ。まぁいいけど。


「御屋形ひゃま、ちよふぁ姫に?、蝶?、御屋形様にょ嫁?」

正吉もロレツが回っていない。大丈夫かこの兄妹。


「ちよ姉ちゃん、ガサツだからなー。大丈夫?」

「ちよ姉、お姫様になるの?大丈夫?色々やらかしそう。」


別にちよじゃなくてもいいんじゃないか、と源三が意図を確認してきた。


「いや、代役を立てるにしても、俺の意図を汲み取ってそれなりに動ける奴が良いんだよ。あと嫁として横に置いとくにも信頼できるちよを置いとく方が俺も安心できる。」


正吉は涙を流しながら、なにやら喋っているが、正直何を言っているか分からない。ちよはちよで、ようやく我に返りつつあり、顔を真っ赤にしながらまた俺の右腕をゴツゴツ正拳で叩いてくる。


「おまえら、ずっと影の仕事が多かったし、これから順番に日の当たる仕事を増やしていかないとな。正吉も源三もそろそろ改名して表舞台に出さなくちゃいけないし、雷太もな。ねねも年ごろになったら嫁に出さなきゃいけないなー。っていうか、腕が痛てーよ、ちよ。」


元々まじめな正吉はきちんと勉強に取り組み、知識をどんどん増やしており、周りからの信頼も厚い。源三は本好きが高じて、建築や文芸、果ては料理等にも造詣が深くなっている。勉強はイマイチな雷太だが、身体能力が高い。ねねはカワイク、少々お転婆だが勝気な姉御肌になってきている。最近ちよのだらしない所をツッコむ光景をよく見る。みんないい子に育って俺はうれしいよ。


話が脱線してこれからの身の振りを色々と話をしていると、

「我らの事をそこまで考えて下さっていたとは。。。」

と、正吉がまた泣き始める。コイツもめんどくせーヤツだ。まぁいいけど。


「とりあえず、分かったな。なり替わりと親子争いを進めて短期間で三濃を落とすぞ。サル、家臣団にはうまい事言っとけ。」


「承知しました。」

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