第18話 現場現物現状確認、そして帰宅

場所は城から離れた仮面衆のアジト。面子は俺とサルと仮面衆。何やら正吉と源三の目にクマが出来ているが、寝てないのであろうか?


正吉からの長々とした報告を聞くと、どうやら齊藤家は家庭崩壊を起こしているらしい。


「・・・つまり要約するとこうか。商人から大名に成り上がり、下剋上大名として大きな成功を収めた。しかしドラ息子が自分を隠居させようと画策していて、その間に隣国(俺)が勢力を伸ばし、今にも三濃に攻め込もうとしている。内から外から、前から後ろからはタマランと、慌てて外を搦め手(政略結婚)で抑え込もうとしている、というわけだな。」


「その通りでございます。」

正吉が頭を垂れる。


やれやれ、と頭をかきながら、どうしたものかと視線をサルに移す。


「策は既にできておりますが。」

サルが申し出る。


「・・・ほう、言ってみろ?」


「はっ、では僭越ながら。。。


齊藤家は既に家庭崩壊を起こしかけております。道二と息子の不仲を助長して殺し合いをさせましょう。その隙に道二の娘をもらい受け、正当な三濃の後継として一気に三濃を手中にするのです。」


「なるほど。でっ、俺結婚すんの?相手どんな奴だよ。」


「・・・それは。。。一度ご自身の目で確かめられた方が宜しいかと。。。」

正吉が何とも言えない顔で、振り絞るような声で言う。


「・・・そんなに、か。。。」

「一度お確かめを。。。」


サルは下を向いたまま顔を上げない。どんな奴なんだ。

次の日の晩、俺は案内役の正吉とちよを連れ、三濃へと出発した。目的は御家事情の確認と、嫁(候補)の視認だ。


人目を避け、高速で三濃の国に突き進んでいく。

「御屋形様、速いです。もう少し押さえて下さい。」

「未来の嫁が待ってますもんね。楽しみで仕方ないのよ。」

若干ちよがふくれ気味で言う。


「これくらいの速度でへこたれんな。もっと飛ばすぞ、ホレ、気配が消えて無いぞ、ちよ。」

走りながら右の臀部に蹴りを入れる。


「ギャ、嫁入り前の娘のお尻を蹴らないでよ。」

「嫁入り前の娘はギャ、とか言わん。」


「そうだぞ、ちよ。お前はもう少し落ち着きや、恥じらいというものを身につけなければ。。。兄ちゃん心配で心配で。。。そもそもこんな速さで走れて、手裏剣が必殺で、、、ああ、ダメだ。。。お前を何とかしてくれる人間は御屋形様以外思い浮かばん。御屋形様、ちよを何卒お願い致します。」

「そーよそーよ、責任取りなさいよ。」


まったく、この兄妹は・・・。


そうこうしている内に齊藤の拠点にたどり着いた。辺りはもう暗い。周囲の気配感知しながら自分の気配を殺し、屋根裏へと忍び込む。丁度齊藤と娘の蝶が話し合っているところだ。どれどれ、と天井板を少しずらして確認するとオッサンと女が見える。


「・・・それにしても義辰のバカめが。図体ばかりデカくなりおって、脳みその発育が体に追い付いとらん。あいつを後継にするくらいなら、よちよち歩きの孫にさせた方が100倍マシじゃわ。」


「おつむが残念なお兄様の事はもういいじゃない。私がこの体を使って慶長を篭絡して時間稼ぎをするわ。そのうち毒を盛って殺しちゃうから、それまで少し待ってて。それより新しい着物が欲しいんだけど。あと、お父様の新しい小姓、なかなかカワイイじゃない。明日の晩来るように言っておいてくれる、あと・・・」


・・・なんというか、顔のパーツの一つ一つが元気いっぱいで、動物というよりは昆虫に近く。。。


体を使って篭絡を企んでいる割には腹周りに栄養が偏っており、どの口がそのセリフを言っているのかと、神経を疑ってしまう。。。


聞いての通り性格も性根も腐っとる。。。


「・・・帰ろうか。」

「・・・そうですね。」

「御屋形様、元気出しなよ。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る