第11話 ベタなアレについて


「逃げるぞ、たえ!!早く。」

「ハイ。賊よーーー、誰かーーー!!!」


「ヒャッハー、こりゃスゲーベッピンさんだ、こりゃ今夜はお楽しみだな~。」

「そうですね、兄貴。なかなかお目にかからない色白美人さんだ。へへッ、涎がとまらねぇ。」


3人の山賊が旅の男女を襲っていた。はぁ~~~~~。。。またかよ。。。どんだけ世の中荒んでんだよ。


日暮れ前、夕刻、山間の街道から黄色い悲鳴とゲスい会話が聞こえてくる。活性化された俺の視力は下種のホクロまで視認でき、聴力は集音マイクのごとくその地点の音を拾う事が出来る。。。この国の治安もまだまだだな。。。仮面衆はそれぞれ担当のエリアに出てしまっているし、仕方ないな。


俺は黒装束に着替え、ヒョットコのお面をかぶり、走り出す。距離は約15km。5分かからず行ける距離だ。


現場に到着すると、旅の男女は追い詰められていた。


「オイ男、女を差し出せばお前の命は助けてやるぜ。どうする?」


・・・女は怯えた涙目でブルブル震えながら男を見つめる。

「俺たちはこれから祝言を挙げるんだ。馬鹿な事を言うな!!」


「そうかい、残念だな。ほれ、じゃあ、俺たちがここでお先に初夜を迎えるから横で見とけよ。」

サクっと男の腹に刀が入り、倒れたところを賊二人に抑え込まれる。

「!!!・・・っくぅ、たえー、逃げろーーー。」

「いやー、あなたーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」


なんだかベタなワンシーンだなぁ。。。と思いながら、助けに入る。


「オイ、オッサン、汚ねーケツ見せんなよ。」


「あんっ?」

と下の着物を脱ぎ、事に至ろうとしていた山賊が振り返った瞬間、山賊の顔を正拳突き。山賊は吹っ飛び、木に当たって気絶した。

「兄貴っ!!!」

子分二人が頭の方を向いたその隙に、首の後ろを手刀、意識を刈り取る。


腹を刺された男に近づき、お腹に手を当てながらぼやく。

「はぁ~。。。この世の中、こんな時間に、力もないのにウロウロしちゃダメだよ。襲う方も悪いけど、お兄さん達も不注意すぎるよ。」


「・・・つっ、はぁ、すいません、どうしても祝言に使う白無垢を教の都で購入したくて。。。って、あれ、痛くない。」

「ハイハイ、もういいから。。。お姉さん、こんな事があった中申し訳ないんだけど、お兄さん連れて町に戻って。今だったらこの道、安全だから。お姉さん綺麗なんだし、これから気を付けて。


あと、このお兄さんは信頼できると思うし。山賊の下種な脅しにも即答だったでしょ。なかなかできるこっちゃないと思う、良い良人見つけたね。これから二人で幸せになりなよ。じゃあね。」


「はい。。。どうも、ありがとう、ございます。。。」


何が起こったか整理がついていない。狐に化かされたような顔をして、二人は町に行った。



さて、下種を片付けるか。。。



「おーい、起きろー。」

大きな声で山賊の目を覚ましていくが、なかなか目を覚まさないので急所を外して刀を腹にスッ、スッ、スッっと順番に刺していく。


「ギャー、このガキ、何しやがる!!??」

山賊が目を剥いて飛び起きる。


「ギャーじゃねえよ。お前ら、俺の縄張りで下品な事しやがって。」

「なんだ、このガキ。オイ、お前ら、この気持ち悪いガキを殺るぞ。」


「誰が気持ち悪いガキだ?」

俺は刀で三人の耳を削ぎはじめる。

「ギャー、このガキ、何しやがる!!??」


「同じ事言ってやがる。脳味噌の代わりにウンコでも詰まってるのか?」

今度は腕と太腿に刀を刺していく。


「あぁっーーー止めろ!!!止めて、止めてください、お願いします。何でもします。俺が悪かったー。。。。」


刺して、脅して、切って、蹴って、気を失えば治癒して治す。


また刺して、切って、脅して、殴って、治癒して。。。


笑顔を絶やさず、

飽きることなく、

緩めることなく、

繰り返し繰り返し、粛々と粛々と、何度も何度も、延々と延々と、。。。


血の気が失せ、声が枯れ、涙が枯れ、表情が消えていく。


しばらく前は恐怖に怯えガタガタと体を震わせていたが、いつの間にかその振動がピタリと止まっていた。


目、鼻、口、性器から体液を出し切り、もう何も出そうもない。


顔は引きつり、硬直している。


視線は俺と合わせず、じっと地面を凝視している。


活性化の修行を進めていくうちに、怪我や病気の加速回復ができるようになった。白血球、血小板、細胞の再生・分裂の加速など、自分のみならず他人への活性化も可能となっている。戦闘時はもとより、こういった拷問時にもすこぶる役に立つ。


俺は終始笑顔で尋問する。

「うん、いい感じに落ち着いたな。最初に言っておくが、俺は世の中に悪い影響しか与えない、いい年齢したお前たちの様な大人が、大嫌いだ。


これからお前たちが矯正できるかどうか、審査を行う。見込みがないと判断されれば、お前たちにはそこ辺に、人が丁度三人入れる大きな穴を掘ってもらう。


何の穴か分かるよな?」


「・・・す、すいません。申し訳ございません。私はこのような真似をしました。償いようもありません。。。」


・・・そういえば許してもらえるとも思っているのだろうか?同情を買えるとも思っているのだろうか?張り付いた無表情の下に計算を感じた。


微笑を顔に無理やり張り付けて問う。


「このような真似とはなんだ?言ってみろ。」


「・・・人を襲い、金を奪う事です。」


男の鼻が縦半分に切れた。

「ギャー――――――――――――――――――――」

「ん?何か言ってない事があるんじゃないのか?」


ヒューヒューと鼻から呼吸を漏れ出しながら、男が弁明する。

「・・・すっすっすっすびません。い、い、い、言いそひれましは。男は襲い、お、お、おっ、女を辱め、殺し、奪う事へす。」


「ハイ、良く言えました。お前ら、何時、何処から来た?」

そう言いながら鼻をくっつける。


「みっ、3日程前、駿川から流れてきっきました。。。こここっちの方がかかか金の周りが良いって聞いたもんで。」


「そうか、経済が上向くのは良いが、悪人も集まるよな。で、次は余罪を白状しろ。何人殺した?」


「・・・じゅじゅ10人くらいかと。。。」


「オイ、手下二人。頭は10人くらいと言ってるが、実際何人くらいなんだ?正直に言えばお前たちの解放を検討してやらんわけでもないが。」


手下二人は即答する。

「少なくとも30人以上は殺ってます。全部お頭の命令です。」

「男はもとより、女、子供、老人に至るまで、お頭の命令で殺りまくりました。。。」


「お前らっ、何をっ!!!」


「なるほど。おい、頭よ、手下どもはお前の首を手土産に助かりたいそうだ。


お前が正直に言えば、手下どもの首でお前を開放することも考えてやるぞ。」


「すいません、コイツ等と俺は全く関係ございません。いつの間にか俺の下につき、俺のおこぼれを漁っていた様な奴らです。コイツ等がもっともっと、と誘うせいで俺は此処まで堕ちてしまいました。」


「てめぇ、勝手な事言いやがって!!!」


「・・・そうか、なるほどな。わかった。どうしようもねーな。仕方ない。。。」


俺は精神操作で3人の意識をリセットし、脳を改変した。


次の日から、町の掃除、どぶさらい、ゴミ拾い、肥さらいなどを、黙々と、率先して行う3人の男が現れたという。身寄りのない年寄りの介護など、皆が嫌がる事を率先して黙々とこなしている。感謝の気持ちを述べてると、満面の笑顔を返すだけで、夜になると何処かに消えてしまうという。

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