第8話 風呂、鍋、そして部下

「ほれ、煮えてるぞ、早く食えよ。鍋はみんなでワイワイ騒ぎながらつつくのがウメーんだから。」


最初は怪しんでいてロクに箸をつけようとしなかったが、年少の子供たちが物欲しそうな顔で鍋を見つめているのを見たリーダーらしき少年の翁が、皆を促し食事が始まった。皆あまり物を食ってなかったのか、皆一心不乱に食べ進み、鍋の中身がみるみる内になくなっていった。


「あー、腹一杯だ。よし、じゃあ自己紹介。


俺は吉豊師、10歳だ。雄張の国の領主の息子で、近い将来その地盤を受け継ぐ予定だ。おまえら、名前と歳は?」


雄張の領主の息子という事に動揺を隠せないまま、各人自己紹介が続く。

翁「・・・俺は正吉、13だ。」

般若「私はちよ、10歳。正吉の妹・・・」

獅子「源三と言います。12です。」

童子「僕は雷太、9になった。」

鬼「ねね、8つでーす。」


「正吉、ちよ、源三、雷太、ねね、っと。。。分かった。お前たちはこれから俺の配下として仕事してもらう。城の近くに屋敷を用意するからそこに住め。」


「「「「「はい?」」」」」


「ん、いい返事だ。何か質問はあるか?」


「いや、ハイ!じゃなくて、はい?なんだけど。こんな状況で、ハイ!って聞こえる方がおかしいでしょ。質問はあるかとか言われても、質問だらけなんだけど!?」

失禁させられたことをかなり根に持ってるのか、ちよの当たりが強い。


「あー、そうなのか、ごめんごめん。ところで服乾いた?お前らにとっちゃおしっこ漏れそーなほどうれしい条件だろうから、ハイ!って聞こえちゃったよ。」


「殺す!!!」

ちよが顔を紅潮させ、俺に向かって手裏剣を投げるが、それをパシパシッとはしでつまんでいく。


「落ち着こーぜ。うれしいのは分かるけど、またうれションしたくないだろ~?」

「!!!!!!!!」

顔を真っ赤にし、ワナワナと筋肉を震えさせながら、ちよは席に着く。。。


正吉「・・・断ると言ったら?」


その瞬間、真剣な面持ちで聞き返す。

「・・・断って何かすることあるのか?また泥棒するのか?」

「・・・・・」


源三「なんで私たちにここまでしてくれるんですか?」


「良い質問だ。理由は三つ、

一つ、俺は今、裏で動いてくれる手足が欲しい。お前ら結構やり手だったもんな。

二つ、忍としての技量はありながらも、心根が歪んじゃいねー。珍しいんだよ、お前らみたいなの。

三つ、国が荒廃してるせいでお前らみてーなガキが悪事に手を染めてるのは見たくねーのよ。


でな、あっ! あともう一つ、四つめ、世直しと人助けは俺(神)の趣味みたいなもんだ。俺の今世での目標は、この国をなるたけ早く統一して、お前らみてーな不幸なガキがいない世の中を作るこった。


ガキが戦争で死ぬのも、食うモン無くて腹空かせてるのも、世の中呪ってなんもかんも諦めた暗い目してんのも見たくねーんだよ、俺は。


と言う訳だ。他にもう無いぞ。」


「・・・みんな一緒に暮らせるの?」

一番小さいねねが俯きかげんに上目遣いでおそるおそる聞いた。


「ああ、約束する。」


「ごはんは?」

既に腹をパンパンに膨らませている雷太。


「一日三食、残さず食えよ。」


正吉が姿勢の良い正座で問う。

「・・・具体的な仕事内容は?」


「雄張の国の情報収集だ。民の困り事、他国の情報収集や、治安維持の為に賊を始末してもらう事もゆくゆくは頼むことになる。」


「最後に、もう一回聞く、何故俺達にここまでする?」

正吉は中々納得しやがらない。疑い深いな、コイツ。


「困ってるガキ助けるのに理由が必要か?あえて理由を言うなら、


暗い目して絶望してるガキを見ると俺が不愉快になるからだ!!!


あとな、、、はぁ~~~~~~~~~~。。。


いいか?お前らさっき、自分のことはさておいて仲間の命を助けてくれと命乞いしただろ?なんでだ?自分の命よりも仲間たちの命の方が大事だったんだろ?他の命のために自分の命を差し出す奴って、自暴自棄の馬鹿か、「お人好し」で括れないくらいの馬鹿優しい奴だろ?


お前らは自暴自棄の馬鹿じゃねー。つー事は、お前らは今じゃ珍しいくらいの馬鹿が付くくらいのお人好しだ。


優しい奴が周りにいっぱいいると、周りも俺も気持ちいいんだよ!!!


不愉快な事減らして、気持ちいい事を増やしてーのよ、俺は。


もう他にねーのか?なかったら四の五の言わずに、お前らの力を俺の為に使え。それがどうしても嫌だったら解放してやるからどっかで静かに暮らす努力をしろ!!!」


疑う気持ちも分からんでもないが。早く天界に戻りてーとか、ダラダラゆっくりしてーとか色々あるけど、イジイジしてるヤツを見てるとイライラしてくるんだよなー。まぁ俺もちょっと前まではそんなんだったけど。


「・・・少し皆で考えさせてくれ。。。」


「分かった、俺は家の中にいるから思う存分相談してくれ。」

1km離れていてもコイツ等の声は聞こえるけどね。


遠く離れたことを確認して、5人が各々話をする。


正吉「まぁ、状況的に断れないよな。あの子供、化け物じみて強いし。他に行く当てが無いし。」


源三「何か裏があるかもしれませんがこの5人、裏があろうがなかろうが、問題ないですからねぇ。私たち、特に未練も背景もないですから。」


ちよ「あなた達、頭オカシイんじゃないの?あんなナリで、あれだけ強くって、妙な力も持ってる。しかも領主の息子で、この国を速やかに統一とかいう頭のオカシイ子供よ。何かとんでもない事に巻き込まれてるわ、私たち。」


雷太「とりあえず、みんなと一緒に住めるところ用意してくれるっていうし、いいんじゃないかな。ヤバそうになったらスキを見つけてマジで逃げようよ。離島まで行きゃ追ってこないだろうし」


ねね「私もう泥棒してご飯食べるのイヤー。吉豊師さん、話してみるとそんなに悪い人じゃないし、お世話になろうよー。」


正吉「・・・だな。盗みは良くないもんな。。。


・・・それにしても、風呂なんか久しぶりだし、久しぶりのあったかいちゃんとしたご飯、美味かったな。。。


結局あいつの気持ち良い世の中にしたいっって事なんだろうけどさ。。。あいつが言ってたみたいな世の中になったら良いなって、、、俺も思う・・・し。


・・・ごめんな、皆、盗賊なんかさせちまって。忍の技術を良い方向に役立てられるんなら、俺は。。。」


「・・・・・・・・」


遠く離れたところで、俺は頬を緩める。それから暫くして、


「おーい、吉豊師さーん。」


遠くから俺を呼ぶ声。。。その日、俺は5人の部下を持つことになった。


現在のステータス

・ 名前:吉豊師(イオン)

・ 年齢:10歳

・ 神力:792,902,381

・ 能力:神気操作、精神操作、気配感知、活性化

・ 備考:もう毛が生えてきた。

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