第6話 真夜中の✖✖✖
吉豊師:10歳
他にやることが無いのか、案外真面目なのか、人間の身体での気の訓練が思いのほか楽しいのか。夏の真夜中、新月。今日も俺は深夜にイソイソと修行に勤しもうとしていた。
町を抜けようとした時、お面をした黒装束の怪しげな奴ら5人、大きな屋敷の塀を越えようとしていた。訓練された動きだ。そういえばここ最近、庄屋や商人を狙った泥棒が増えてきていると聞く。殺しはしないが金、食料を奪い、足跡一つ残さず、霧の如く消えるという。
国が乱れ、食うに食えず、賊に堕ちる人も増えている。だからと言って、そのまま放置しておくこともできん。全くヤレヤレだ、神も仏もこの世界にゃいねーな。
この町でそこそこ大きな商人の家のそばの細い通りに彼らは居た。塀の向こう側で気配を消して動向を伺う。
「般若は縁側で見張り、童子は玄関で退路を確保。」
翁面をしたリーダーらしき男がそれぞれの仮面をつけた部下4人に指示をしていく。指示は端的で正確。この声、この体格。。。もしかしたらと思い、俺はリーダーに声をかける。
「よう、お勤めご苦労!作戦は決まったか?」
俺は笑顔でリーダーの後ろに立ち、話しかけた。
「!!!・・・」
リーダーが前方へ、俺と距離を取っている間、獅子面と鬼面の二人が小刀を抜いて左右から俺に襲い掛かる。ほう・・・中々いい反応と連携だ、しかし、
「遅いっ!」
左右それぞれ、俺は急所を狙ってきた小刀を鷲掴みし、右回し蹴りと左肘打ちで二人を吹き飛ばす。二人の体が塀に当たり、ドンドン、と鈍い音がする。二人は動かない。
獅子面と鬼面が死んでいないと判断するや否や、翁面の指示は迅速だった。
「撤退!!!集合場所は亜の五!!!」
指示のもと、残り三人が散り散りに一斉に逃げ出す。早く、迷いが無い判断。こいつら忍か。。。戦乱で国が潰れ、訓練された忍集団が野良化しているのか?それにしてもなかなかやるな、コイツ等。最初はヤレヤレ面倒だと思っていたが、興味が湧いてきた。
気絶している二人を置いて、個別に捕まえていく。
童子・・・、次は般若・・・、逃げていくお面に追いつき、それぞれ手刀で気絶させる。最後は翁(リーダー)・・・。
町の外れにある木の枝に身を潜めていた翁、そのさらに上の枝から声をかける。
「なかなか速いな、お前ら何処の国に所属していた?」
「その体躯でその速さと剛力、・・・物の怪め!」
「そうと言われると微妙だが、今は正真正銘の人間だ。ところで、お前も気絶してもらうぞ。」
木から降り、逃げ出そうとした翁だが、正面に回り込んだ俺の左拳が鳩尾にめり込んでいた。。。
ヤレヤレ、気絶させたは良いが運ぶの面倒だな、仕方ない、爺に手配をかけて運ばせるか。。。
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