第3話 吉豊師 3歳

・・・・目覚めると白い産着にくるまれていた。転生完了か。ここから喋れるようになり、体が動き、自分の意志でいろいろできるようになるのに3年はかかるか。。。ヤレヤレだ。


シンちゃんには言わなかったけど、天上から幾つか人間ではないおかしな気を感じたんだよな。何か嫌な予感がする。。。こんな面倒な事を押し付けやがって、クソオヤジめ。


高笑いしているオヤジの顔を想像して思わず天に唾を吐きたくなった。


俺は雄田家の長男、吉豊師として転生した。地球の歴史と酷似しているが、並行分岐しているので微妙に違う。地球の歴史の通り、この時代、この国は戦国時代の群雄割拠の混乱時代。戦争、疫病、天災のオンパレード。この星のこの時代ではこの国がダントツに戦争しまくってて、人が死にまくっている。


この家の子供を選んだ理由は色々あるのだが、何といっても一番早くこの国を統一できそうな地理的優位と、ポテンシャルを有していたからだ。


とは言っても、今は何もできない。できるとすれば食って寝てウンコして、神気のコントロールの練習くらいか。自分で動けるようになるまで少々暇だが、1万年に比べればアッという間だな。いろいろ考えたら腹減ったな。。。


まぁ、とりあえず、


「オギャー、オギャー、オギャー」


「あらあら、声の大きいこと。それにしても吉豊師様はよく乳を飲みなさる。乳母が何人いても足らないわねぇ~。どうしたものかしら。」

「それにしても、このお方、大きいですよねぇ。もう2歳になる私の長男と同じくらいあるんじゃないかしら。」

「あと何だかこの方、もう私たちのいう事分かっている節がありません?なんだか少し怖いでわ。」


「オギャー、オギャー、オギャー」

「ハイハイ、少し待って下さいね~。」


そして時間は過ぎていく、、、ゆっくりゆっくり。。。転生から3年。。。




吉豊師:3歳


シンちゃんにリクエストしておいた能力分析で自分のステータスを確認してみる。

・ 名前:吉豊師

・ 年齢:3歳

・ 神力:791,231,312

・ 能力:―


「アイタっ!クソ、難しいな。」


3歳になった俺は今日も神気コントロールの訓練、訓練だ。


神気はその名の通り神が使うエネルギーで、修行を重ねた人間が使う仙気よりもはるかにエネルギー密度が濃い。今でもやろうと思えば全力疾走で時速60kmらいで走れだろうが、その運動量に3歳の人間の俺の体が追い付かない。ちょっとでも神気のコントロールを誤ればあちこちの毛細血管が破裂する。


気を心臓から体の隅々まで行渡らせて・・・循環、大気に漏れ出る気を体表面に留める。。。体の小さい内に気のコントロールをしておく。逆に言うとこんなことしか今はできん。。。それにしても、この世界の人間の体は脆弱だな。


俺は丁寧に気を使いながら細胞、神経、骨など、ちょっとずつ気で活性化し、成長を促していく。。。


気のコントロールの練習は腹減る。まぁ、細胞が成長、活性化しているのだから、その分エネルギーも早く消費してしまうか。


「爺、腹減った。山芋をすったとろろと、梅干し、魚の干物と、肉も欲しいな。。。あ、ご飯は1升分炊いといて。あっ、そうそう、みそ汁と、法蓮草のお浸しと、カブの漬物もね。甘いものも欲しいなぁ。柿とかみかん20個くらい持ってきて。」


世話係の爺は半ば呆れながら、女中に献立を指示した。


30分後、言った料理がお膳にズラッと並んだ。


もぐもぐ、ムシャムシャ、ゴクンゴクン。。。並べられた料理がドンドンと腹の中に消えていく。食えば食うほど腹が減るとは言い過ぎだが、いくら食ってもその分栄養が細胞に吸い取られているようだ。


起きているのに膝やら腰やら、あちこちの骨がミシミシと音を立てて成長している気がする。あっ!歯がまた抜けた。これで何本目だ?


「ん?食いすぎたか?もう腹が張ってきた。〇ンコウン×ウ△コッコ~っと。。。」

「はぁ・・・・若様、食事中に便所は・・・」

爺の叱り声が遠くから聞こえるが、出るものは仕方がない。


「はぁ~、スッキリした~!!出したら腹減ったな。爺、ご飯オカワリ!!!あと、これと、これと、これも追加ね!」

明らかに自分の図体と同じくらいの食料がどんどん消えていく。世話係の爺は呆れられながら、再度女中に料理を指示した。


吉法師3歳。体格は既に7歳児のそれと同等、平時の筋力は既にそこらの成人男性の力をはるかに凌駕していた。

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