第2話 シンちゃんよ・・・
「久しぶりだな、イオン、元気にしてたか?」
転送された先には琥珀色のローブを羽織った壮年の痩せた男性が座っていた。消耗したシンちゃんおっちゃんだった。文句の一つや二つや、百個くらいは言いたかったんだが、、、
「・・・はぁ~~~、、、まぁ、オジサンには関係ないか。。。久しぶりですね。1万年の間、人間界で転生させ続けられてようやく戻ったばっかりなんで、元気もクソもへったくれもありませんよ。」
思わず嫌みの一つや二つ出てしまったが、シンちゃんオッちゃんには関係ないと自分に言い聞かせた。これが終わったらサッサと天界に返り、オヤジをどうやって痛めつけようか考えよう。
「んで、そっちは元気・・・なさそうですね。。。自分の世界は荒れ放題で、他の神からはボロカス言われて、世界消滅の危機ですもんね~。
奥さんとか子供さんとかにも立つ瀬ないですね。家庭内大丈夫ですか?無視とかされてません?その歳で降格して地方の神様業務を一から始めるのは屈辱っすよね。給料半分とか、年下の上司とかでしょ?
まぁ元気があったら頭オカシイっすよね。でも元気出していきましょーよ。ファイト!」
肩をトントンとたたき、イオンは励ましたつもりになっているが、およそデリカシーの無い発言が疲れ切った中年の心にビュンビュンと突き刺さる。青かった顔がみるみる赤くなってきた。
(しまった、ウッカリオヤジへの八つ当たりをしてしまった。怒りで元気が出てきて、神気に殺気が混じってくる。)
「・・・っク、ワシもなんで世界があんなに荒廃したのか分からん。やっと一つ争いを収めても、次から次へと戦乱の種が芽を吹くんだよ!
お前。。。もし世界を通常状態に戻せなかったら、お前のアレを××××××(活字自粛)して、○○○○○○(活字自粛)を△△△△△△(活字自粛)した挙句、百万年に渡り■■■■■■(活字自粛)して@@@@@@@@(活字自粛)してやるからな・・・覚悟しろおーーーーーーーー!!!」
ヤバいな、目が座ってる。早く話を本題に戻さなければ。。。
「俺疲れてんだけど、まぁしょーがないかな。いいよ、やってあげるよ。ってか俺に選択肢ないんでしょ?説明してよ。」
だんだん落着きを取り戻し始めたシンちゃんが話し始める。それにしてもxxxxxxとか@@@@@@@@とか。。。コイツがこの世界の混乱の原因じゃねーかと思ってしまう。
「・・・フゥ、良し。俺の世界はアースと呼ばれていてな、お前に転生してもい、アースをある程度平和な通常状態にしてくれれば、任務完了だ。っていうかぶっちゃけ、一つの国の混乱を治めてくれるだけで良い。簡単だろ?次の主神会議はもう100年後だからそれまでにある程度形になってればOKだ。」
「どの子供に転生できるのか選べるの?」
「選べる、誰でも構わない。一番早く効率の良いと思われる子供に転生できるように調整する。」
比較的好条件だな。ある程度勢力を持った家の息子に生まれると他国の征服や友好関係を作ることは難しくないように思える。さて、どうしようか。
①王族・皇族・貴族のどこかの家に生まれて領土を拡大する
②地方の庶民の生まれ、もしくは孤児上がりから村主、地方主と、のし上がっていく
②もロマンがあっていいかもしれないけど、長くなりそうだし。ちゃっちゃと終わらせたいから①のパターンが良いな。いろんなしがらみとか法律とかありそうだけど、そんなもん偉くなって変えちゃえば良いし。
「“通常状態”の判定基準は?何を基準に世界が通常になったのか、なってないのか分からんのでは、任務が達成できているのかどうかもわからんよ。」
それはな、といいつつシンちゃんは懐からドス黒く、澱んだ手のひらサイズの球を出してきた。
「これはカルマ球という。この球の透明度がこの星のカルマ値を示してくれてな、数値はマイナス100からプラス100までの数値を示す。通常状態では透明になり、平和になるとこの球は光り輝くんだ。ちなみにお前がさっきまで居った地球はくすみがかった透明で、数値はマイナス10くらいだ。」
21世紀初頭の地球でくすみがかった透明なのね。。。じゃぁ地域の内乱とか、局所的な貧困とか、性差別とかは、「何十億も生きていればそんなもんだ」でカウントしてくれるのか。
「へ~、便利なモンがあんのな。ところで、この世界は何か国くらいあるの?あとこの世界の特徴教えてくれない?」
「この世界は地球をベースにした平行世界でな。小さい国とか島を一つ一つ数えると50くらいあるけど、戦乱の激しい、人口が多く、負のカルマの多い国の戦乱を収めて欲しい。さっき一つの国の混乱を治めてくれるだけで良いといったが、ぶっちゃけ、日本がベースの大和の国だけを何とかして欲しいんだ。
言語や文化、生息する生き物なんかは地球ベースだから、お前にとってそんなに違和感はないはずだ。俺好みの生物や文化なんかも多少盛り込んでるけどな。」
どうやらイチから世界を創造するのは非常に時間も労力もかかるから、オリジナルとなる世界のある時間軸からコピーを分岐させるのが一番手っ取り早いらしい。
「あと、この世界では神気が使える様にしてある。」
「マジっすか?!」
「でも魔力や意力はないからな、基本的に身体のパワーだけだ。でも、お前は神で気の出力が半端ないから、気を付けとけよ。」
魔力や意力は使えないのか、それでも俺はうれしいな。地球では神気が使えなかったから、スゲー苦労した。もう長く使ってないからその存在を忘れてたよ。
「ごめんごめん、話戻すけど、要はこのカルマ球をピカピカに光らせなければいいの?」
「いや、あくまで透明の通常状態に戻すだけで構わん。今のこの世界の人類でカルマ値が100に近づくと、進化しなくなってしまうからな。人間の進化には段階が必要なんだよ。」
「まぁ分からんでもないな。了解、とりあえずゼロに持っていくようにするよ。」
その後、色々と細かい事情を聴き、地上を覗きながら、アースの、特に大和の国の情報を頭に入れていく。
「了解、おっちゃん、なんとなく分かったよ。思ったよりヒデーな、この世界、つーかこの国だけかな。暗くて、陰湿な気でドロドロだわ。穢れがスゲー。
そりゃこの国一つでカルマ球真っ黒になるわな。地球でも戦乱時代あったけど、ここの連中より笑顔が多かったと思う。。。
とにかくなんとかしてやらねーとな!!」
「すまんな、イオン。頼んだぞ。」
「ありがとう、じゃ、行ってくる。」
そう言って下界へと飛び降り、転生先に向かった。
「ブツブツと文句も多いし、動かすまでは大変だけど、アイツ、優しいからなー。そりゃカルマ値が振れずに1万年のあの修行に耐えられるわけだ。。。
それにしても、1万年も輪廻転生しまくってたから、神気がバカみたいに膨れ上がってたな。・・・よく見ると凄いな、オイ。俺より多いんじゃね?アイツなら何とかなるか、な?何とかしてくれよ。。。してくれないと困るぞ。頼むぞ~。」
神気は修行、臨死体験、信仰、感情の起伏、実際の死などで増加する。
1万年、数百回の人生を積み重ねていくうちに、イオンの神気は膨れ上がり、それはもはや一地方神のそれどころではなくなっていた。
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