パラレルワールドナイト・イオン   エレぇ人(神)にゃ逆らえねーからな、なんたって主神様だもんな。そんで俺はなにすりゃいーんだ?から始まった世界の安寧秩序化プロジェクト(本人知らず)。

@akasata0202

第1話 俺のオヤジは・・・

1回目、部族の争いに巻き込まれ、槍で心臓を貫かれ死亡。


2回目、猛獣に喉元を食い破られ死亡。


3回目、飢饉、食い物がなくなり餓死。


4回目、再度部族間抗争、殴り殺される。


5回目、水死。6回目、撲殺。7回目・・・


×××回目、婚約者に裏切られて身ぐるみ剝がされ、保険金詐欺殺害。


○○○回目、貧困の中生を受けたが、生活苦のため一家心中。


□□□回目、戦地で少年兵として戦闘中、敵機ミサイル爆撃により爆死。


△△△回目、入社した会社が倒産し、転職成功するもブラック企業。過重労働により死亡。



・・・もうたくさんだ。。。


「父よ、私は幾度人生を繰り返せばいいのでしょうか。。。」


記憶の糸が細く細く途切れそうな過去、優雅に自由を謳歌していた過去は確かにあった。。。


俺は主神(父)の怒りを買い、人間界に堕とされた。それからは前世の記憶を引きずり生死を繰り返す天罰。。。もう何回人生を繰り返したか、100回くらいから以降数えていない。


男は祈る。切に祈る。


「父上、お許し下さい。この祈りももう何千回目でしょうか?最期を迎える事の出来ない輪廻地獄に疲れ果ててしまいました。」


許しを請う、その行為に虚しさと無情を感じながらもまた今世が終わった。。。


魂が天上に昇る最中、頭大の大きさの光の玉が雲から降りてきた。その玉には初老前の髭を蓄えた男性が映っており、その男性が話し始める。


「久しぶりだな、イオン。もうかれこれ1万年は経つか。。。お前ももう十分反省しておろう。」


「おお、父上。。。やっと私の祈りが・・・


もう1万年ですか。。。そうですか。。。そうですね。。。そうだったんだ。。。そうか。。。ようやく。。。


・・・・・クソがっ!!!


もっと早く出てきてもイーじゃねーか?オイ!なんで1万年も経ってんだっ!!っていうか、忘れてたな!!!オイ、お前、忘れてただろ!??暇つぶしに人間界をのぞいてみたら、あっ、コイツの事忘れてた、ってなもんだろ!?!


どんだけヒデー目にあったのか知ってんのか?剣闘士の死合で負けて猛獣に食われたり、魔女狩り裁判で火炙りにされたり、シリア内戦の爆撃でバラバラになったり。。。日本のブラック企業での過労死や、医療崩壊した病院で衰弱死てのもあったな!!!


たいていの人生はロクに結婚もできなくて、結婚しても直ぐに離婚か死別、子供なんてできる以前に死んじまう!結婚した相手に殺されるってのも何回かあったな!!!


あーーーーりえねーーーーーーーー、ワザととだろっ?!絶対にワザとだろ?!!そーとしか思えねー!!!」


どの人生でも精一杯、まともに、平和に、安らかに過ごそうと努力してきたつもりだった。途中まで上手くいく時もあった。でも途中で「なんでこーなる?」っていう落とし穴が必ず用意されていた。


1万年分の感情がマグマの如く爆発してきた。目、鼻、口、穴という穴から感情の結晶が迸る。


「(やっぱりバレたか?そりゃそういうふうに設定したからのう)・・・、ウホン、もうそろそろ罰を解いてもよかろうと思案していたところじゃ。1万年も経つしのう。。。


というか、そもそもお前がワシの新妻にちょっかい出すのが悪いんじゃ。」


「いい年こいたジジイが何人も新しい嫁ハンをもらってんじゃねーよ!あの新妻だって、地方の神が娘を献上してきただけじゃねーか!!どーみても嫌々だったし、息がクセーとか、話題が古くて付き合ってらんねーっとか俺に愚痴ってたぞ!!!むしろ向こうから助けてくれってサイン出してたんだぞ!!!」


醜い親子の口喧嘩が騒々しく続くこと約30分・・・


「ッく・・・、だからと言ってアンな事して良いわけないじゃろ!!!というかお前本当に反省してるのか?さっきの「もう許して下さい」のくだりはなんだったんじゃ?もう1万逝っとく・・・」


「はー!!!・・・。いーよ、もう。許してやんよ。


オヤジ様のやることにゃ逆らえねーからな。


仕方ねーもんな、お父様で、主神様だからよ、しかもその上の議長様でエレーからよ!!あんたにゃ誰も敵いませんな~~~。ケっ!!!


んで、これからどーすんだよ?!許してくれんだろ?さっさと天界に戻せよ!!!お袋にも色々と話があるからな!!!」。


湧き上がる父の怒りの神気と「1万」の言にビビりながら、絶妙の文句とタイミングで会話を切り、今後の身の振りをオヤジに詰め寄った。


「クッ・・・まぁよい。実はお前にやってもらいたいことを思いついたのじゃ。いやなに、暇つぶしに下界を眺めていたところにちょうど良い質と量の神気を持つ魂を見つけてな。よく見ると1万年前に勘当した息子って、わしゃツイとるワイ。」


ぬけぬけと、あっけらかんと言い放ち主神は続ける。。。このボケジジイめ・・・。


「お前も知っとるように、ワシが治めているこの世界以外にも平行世界がいくつもあってな、定期的に主神会議があって、いろんなことを話しあっとる。


議題の一つに挙がったのがわしと仲の良い主神の治めている世界での、ホレ、お前も小さいころ遊んでもらったシンちゃんの世界じゃ。シンちゃんの世界はここ数百年戦乱が続いとって、カルマが蓄積され過ぎておる。このままではシンちゃんの世界を消滅させざるをえないんじゃ。」


「へー・・・大変だな、シンちゃんも。世界が消えりゃ別世界の下働きから始まって、主神に返り咲くのに運が良くて3,000年はかかるだろうなー。」


俺は興味なさげにボケっと聞き流していた。


「そうじゃ、誰かがその世界を立て直さんといかん。


そこでお前じゃ!!!その平行世界に転生し、世界を通常状態に戻し、消滅を防ぐのじゃ」。


キッと俺をドヤ顔で見据えてワケの分からんことを言う1万年ぶりの父親。。。何を言っているのかわからず、暫くポカンとしていたが、ふと我に返る。


はぁ?何を言ってんだ、コイツ。。。ボロボロになった息子の1万年ぶりの再会でいきなり仕事を押し付ける気か?だんだん怒りが込み上げてきた。


「・・・あんたマジか?1万年ぶりの再会で、まだ1時間経ってねーんだぞ。ヤダよ。何で俺がそんな事やんなきゃなんねーんだよ、疲れてんだよ、俺は。天上界で休んで、久しぶりに伸び伸びして、女神や精霊のネーちゃん達と遊びてーの。


あと100年くらい遊んで遊び飽きてやることなかったら暇つぶしにやってもいいかもしんねーけど。他当たってよ。絶対ヤだかんね!!!」


まくし立てたが、明後日の方向を向いて、何もなかったかの如く目をつむったまま主神はそのまま滔々と続ける。


相変わらず人の話を聞かねーヤツだ。お袋もよくこんなヤツと結婚したもんだと思う。


「シンちゃんにはお前を派遣することをさっき伝えたわい。世界を元に戻せなければありとあらゆる苦痛を100万回与え、それを100万年続けると鼻息を荒くしとった。なにせ自分も瀬戸際じゃからのう。


じゃあの、息子よ、頑張れよ!」。


「オイ、話聞けよ。マジかお前?!1万年ぶりに会ってそれかよっ、ってお~~~~~~~~~~~~い・・・


この、クソがぁーーーーーーーーーーー!!!」


断末魔の如き叫びと共に、俺は問答無用で別の世界に転送された。クソっ、何かシンちゃんに弱みでも握られてるのか???


魂をシンちゃんの元に強制転移させた後、主神は宙を見つめつぶやく。。。


「・・・はぁ、ようやくアレを解決する手立てが打てたか。。。確かにここしばらく忘れてたんじゃが、1000年毎にちゃんとタイマーをセットしてお前のことは見とったぞ。


お前を下界に落としたのはそれなりに意味があったんじゃよ。


天界の厄介事に巻き込んでしまってスマンが、ワシが直接手を下せんのじゃ。お前ならきっと何とかしよるじゃろ。。。それでは、ラウンド1、じゃ。


頼んだぞ、息子よ。。。」

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