09 罠があると分かっていても



 今度は友達の所へ向かった。


 友達の屋敷の扉を開いて「フィアです。今日は緊急の用事があってきました」と告げる。


 そうして、しばらく待ったあと、「フィアちゃん。やっと来てくれたんだね」と友達が出迎えてくれた。


 その手に、ロープを持って。


 背後に控える使用人たちも、剣や包丁などを持っていた。


 私は慌てて、その場から逃げ出した。


 ユフィにことごとく先回りされている!?


 私の行動を読んで、皆を操って回っているのかもしれない。


 だとしたら、これ以上人を頼るのは無理だ。


 いや、けれど私は、頭の中に思い浮かぶ人たちにどうしても会っておかなければならなかった。


「うわっ、なんだこの鳩!」


 背後で鳩がバサバサとあばれている。


 振り返ると、私を追いかけていた人たちが、鳩に邪魔されているのが見えた。


「危ないよ! こっちにおいで」


 呼びかけると鳩は、素直にこっちにきて肩にとまった。


 無我夢中で逃げた私は、無事に逃げ切れたらしい。


 その後、人目のつかない路地裏で、腰を落ち着けて休憩する事にした。


 疲れていたので横になりたかったけれど、道が汚くて、できなかった。


 しかも石畳の地面は固くて冷たい。


 ろくに光もささないから真っ暗だ。


「どうしてこんな目にあうんだろう」


 ぽつりとつぶやいてみても、誰からの返答は来ない。


「私、何か悪い事したのかな。ユフィを助けられなかったからなのかな」


 弱音を一つはいたらとまらなくなった。


 良くない事が頭の中をぐるぐるとめぐっていった。


 しかし、そこに追い打ちをかけるような出来事が。


「なんだぁ、こんな所にガキか。あん? その身なり、貴族の娘じゃねーか」


 路地の奥から、大きな男がやってきた。


 その人物はこちらを見つめて、にやりと笑う。


 王都で出会った人達と同じ雰囲気を感じて後ずさる。


 今、ここでつかまるわけにはいかない。


 私は疲れの残る体で走った。


 しかし、大男の方が足が速かった。


 すぐに追いつかれてしまう。


「陰気臭ぇ顔してるけど、良い面してんじゃねぇか、へへっ運が良い。売り飛ばしたら高くなるぜ」

「いやっ、離して!」


 腕を掴まれてしまったので、必死に振りほどこうとするけれど、相手の方が力が強い。

 そのまま、無理やり引きずられていってしまう。


 私は絶望感に心が折れそうになるが。


「そこまでだ!」


 そこに一人の少年がやってきた。


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