08 包囲網から逃れる



 夜が明けてすぐ歩き始める事にした。


 いてもたってもいられなかったからだ。


 できるだけ真っすぐ歩くようにした私は、山の中から抜け出す事ができた。


 通りがかった馬車に、部屋を出るときに持ってきたポーチの、その中に入っていた金貨をさしだした。


「迷子になってるんです。これから言う場所まで連れていってください」


 欲をかくような人間だったら、ここで有り金全部をとられて放置されるか、最悪人さらいなどに売り払われてしまうかだったが、その人間は良い人だったらしい。


「分かった。その代わり、ご両親にはよろしく言っておいておくれよ、お嬢ちゃん」


 私は、知り合いの貴族がいる町まで連れてってもらった。


 それから、半日ほどかけて、町にたどりついた。


 知り合いの貴族の屋敷まで行って扉を叩く。


 父の友人であるというその男性は、優しい顔を見せて私を迎え入れてくれた。


 私がわけを話すと大変だったねと言って、肩を叩き慰めてくれた。


「もう大丈夫だからね。騎士団に連絡してその危ない人間を捕まえてもらうよ。だからフィアちゃんは部屋で休んでなさい」


 これでもう大丈夫だ。


 そう思っていた。


 けれど、休んでいた部屋の外から不穏な会話が聞こえてきた。


「捕まえ―――」

「ユフィ様に――」


 私はまた逃げ出さなければならなくなった。






 次に向かったのは、友達の家だ。


 社交界でできた友人の。


 私と同じように恋愛小説が好きだからと言っていたから、よく一緒に話をしていたのだ。


 すると、大きな屋敷の扉を叩く前に、鳩が舞い降りた。


 手紙を運んでくれたようだった。


 シフォンちゃんは、どうして私の居場所を知っているのだろうか?


 手紙には たすけにいく まで がんばれ と書かれていた。


 どうしてシフォンちゃんは、私が危ない目にあっている事を知っているのだろうか。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る