第9話 隻腕の女剣士
ーーバチバチッ!
「『
「フィオナとエルは安全な場所に行け!」
隻腕剣士が盗人の首元から剣を引いたと思ったら凄まじい殺気が辺りを覆った、俺とおっさん、ジンにロロの動き速かった。
俺はフィオナとエルに離れるよう指示、ロロはそれに着いて行って、ジンはリーシャの前に立ち様子を見る。おっさんは残り魔力はあっても体はボロボロだろうに斧を呼び出して突っ込んでいった。
盗人を刺すまでの動作が流れるようで間に入って止めれなかったし、一切の躊躇すらないってどんな神経してんだよ!
ーーガキンッ!
「くっ!」
「王国騎士団……相変わらず役に立たない連中だ」
右手に持っている細剣でおっさんの雷魔力を纏った一撃を難なく受け止める隻腕剣士、どんな力してんだよ!
盗人を刺すほどの物を盗まれて売られてしまったから完全に悪いって言うのもあれだけど、命を奪うような行為はまた別の話か。
「はぁぁぁぁ! 紫電一閃!」
黒髪剣士がおっさんと同じように雷魔力を纏いながら突っ込んでいく。
すると隻腕剣士がいる背後の空間が歪んでそこから5発の魔弾が黒髪剣士に放たれる。
ーーズゴオォォンッ!
「ぐはぁ!!」
不意の一撃に直撃してしまい倒れる黒髪剣士、あの隻腕剣士魔術も使えるのかよ!
と思っていたら歪んでいた空間から見覚えのある全身黒いローブが出てきた。
「まさか…」
「物はありましたか? グラエル」
「売られてしまったようだ」
ーーバシュッ!!
「ぐっ!」
見覚えのある狐面に聞き覚えのある声、おっさんに対して何かの魔術で距離をとらせた狐面は隻腕剣士の仲間みたいだな。
「見覚えのある顔がいくつかありますね」
「…こんなに速く見つかるなんてな」
「この短期間で見違えるほどの魔力量…面白いですね」
「知り合いか?」
「エルフリッドで7代目魔王を殺したときにうろついていた少年ですよ」
ゼキルさんの命を狙い、罪の無い魔族50人とエルフリッドの兵士を多く犠牲にしてヘラヘラしてやがる狐面。
怒りで沸騰しそうだけど、一線超えて冷静になっている。
「はぁぁぁぁ!!」
「領主様の娘さんまで」
ーーバシュッ!
「くぁっ!」
リーシャもおっさんと同じように弾き飛ばされてしまう。ジンは俺を見ているので俺にやらせてくれるんだろう。
「みんな離れてろ! 俺が叩き潰す!」
「面白い子だね」
「グラエルの好きそうな子ですね」
余裕な態度でこっちを評価してきやがる、おっさんもリーシャとジンも眼中には無さそうだな。
おっさんと戦った後で、この2人が相手で行けるのか分からないけども見逃すなんてあり得ない!
「『
橙色の魔力が渦巻くように俺の周囲に溢れだす。予想外の連続使用になるけれど大丈夫なはずだ。
「
俺が真名を呼んだのと同時に『
隻腕剣士はかなりの技量があるし、おっさんの一撃を簡単に受け止めるくらいの何かがある。でも警戒してるばかりじゃ意味が無いから仕掛けてみないとな。
「汚れたくないので私は引きましょうかね」
『
そう言うと狐面周辺の空間が歪む。出てきた時と同じようにどっかに跳ぶ魔術なんだろうけどやらせる訳ない。
ーージュッ!
「おや?」
歪んだ空間に蠅が群がり少し魔力を喰らえたことで『
一瞬で喰らい尽くせたってことは少しの魔力で転移魔術が使えるってことか。
「魔力を蠅にするとは…汚いですね!」
「『
ーードガァンッ! ドドドッ!
「なんと!?」
「また厄介な」
狐面が嫌悪感を示しながら手を振るっていたので『
爆風で巻き上がった砂埃が散って姿が見えるようになっていたころには狐面の姿は無かった。
「…どうなってんだ?」
「ふふっ…驚いたかな」
「良ければそこの銀髪美人剣士さん、教えてくれると嬉しいんだけど」
「私の口を軽くしたければ楽しませてくれ」
「この世は戦いを楽しみたいイカれた奴ばっかかよ」
ーーシュシュッ!
「っ!?」
隻腕剣士の右手がブレたと思ったら、剣士の周囲半径1mに飛んでいた蠅が全部綺麗に塵にされた。
…まったく見えなかったし、飛んでいる蠅を正確に斬れるもんなのか? というか今のは斬ったのか?
「君は良い子に見えるね…さぁ楽しもう」
「1人刺しておいて楽しもうってどうなってんだよ!」
隻腕剣士が走ってくるけど、蠅が細切れにされまくっている。細剣を振るっているんだろうけど魔力も使用して無いし、まったく斬ってるのが見えないから近づけさせると俺も細切れにされるかもしれないから注意しないとな。
おっさんと戦った後だと迫ってくる速度は遅いけど、呪いの力なのか剣速と隙の無さが尋常じゃないな。
魔力がけっこう心配だけど使い惜しんでる場合じゃないし、相手の能力をどうにか把握したい。
「『
無数の蠅が集まって何個もの球を作る。
それが人の形を作りはじめて、蠅の羽が4枚生えていて蠅と人の合体した顔をした人のような蠅が大量に出来上がる。手と足は人間で、各々様々な武器を持っている。こいつらは魔力を喰らう分だけ強くなる騎士軍団だ。
少し驚いてくれたのか隻腕剣士の足が止まる。
「ふふっ…わざわざ技名を言わなきゃいけないのかな?」
「そういう仕様なんだよ」
「『
蠅騎士は飛ぶ奴や歩く奴で各々が隻腕剣士に近づいていく。
「もう少し可愛いのは作れないのかい?」
「蠅に可愛さ求めるなよ!」
ーーキンッ! シュババッ!
魔力をあまり喰らえてないとは言え、そんなに弱くはないはずなんだけど簡単に刻まれていく。
こっちに話しかける余裕もあるようで単純に化け物みたいな剣技だ。
「たくさん作れるようだけど、手品はこれでお終いかい?」
「アンタの剣技は手品じゃなさそうだな」
「ふふっ……これしか出来ないのが痛いところだけどね」
蠅騎士が武器を振るう間合いに入り前に斬り刻まれていく。体は大きくなったけれど遅くはない蠅騎士が手も足も出ていない、世界にはこんな剣士がいるんだな。
ジンとリーシャ、他の村人もけっこう離れてくれたようだし、こっからが本番だな。
「さぁ…君が叫んだように周囲は静かになったよ?」
「わざわざ待っててくれたなんて優しいんだな」
「君は気に入ったからね」
読めない人だけど舐められてるのは分かった。確かに俺は今のところ蠅に任せてしゃべっているだけだから舐められても仕方ないけど、一応魔力出して何体かの蠅は動かしてるんだけどな。
その余裕な面を歪ましてやらないとな!
『我本体を呼び出すつもりならやめておけ、この村が荒野に変わるぞ』
「うそだろ!」
魔力をためて『
かっこよく決める気だったのに! そこまでヤバい力だったなんて思わなかった。このままじゃいけないから『
蠅騎士は一斉に塵となって消えていき、隻腕剣士も唖然としている。
「何かしようとしていたみたいだけど、問題発生かな?」
見透かしたように微笑んでいる隻腕騎士、俺は腰につけている小さな袋から魔力を回復できる貴重な丸薬を全部取り出して食べる。
この行為も見逃してもらえるなんて舐められてるんだけど、魔力がないとどうにもならない。
「問題はあったけどアンタに勝つことを捨てたわけじゃない」
「その莫大な魔力で何をしてくれるのかな?」
体に刻まれている刻印から濃い紫色の魔力が溢れでてくる、さらに魔力を集中させる、ここ戦いですべての魔力を使い切る覚悟で!
「やるか! 『
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