第7話 貪り尽くす蠅の王
ガイゼルの武器、『
フォルカは痛む全身に喝を入れて考える。
「デカくて速い…さすがお偉いさんって感じだな」
今もゆっくりと歩きながらこちらに向かってきているのが分かる。向こうからしたら珍しくはあるけど大したことないって思われてるんだろうな。
もしかしたら同じ痛みを他の連中が食らうかもしれないし、罪の無い魔族や呪い持ちに振るわれることがあるかもしれない。
こんなのエルやフィオナがもらったら一撃でバラバラだな…。
「やっぱ…腐ってるわ」
強大な力を持ちながら、定められた正義しか吠えられず、困ってる人を救おうともしないやり方を見過ごせるはずがない。
あいつは盗人だし、なんとなくだけど騎士団の金銭を盗んで俺たちの情報出したのも、あの盗人なんだろう。きっとその金で王都に行き自由になりたいんだと思う。
でも男はいつか自分の犯した罪のつけを払うことにきっとなる。どれだけ頑張ってきた過去があっても、母のために苦労した人生があっても、このままじゃ結局は地獄が待っている。
それでも生きるためにやらざる負えない状況になってしまっている社会という現状に嫌気がさす。
「そんなの許されていいのかよ」
「それが行いと言うものだ」
気付けば踏み込んでこれそうな距離に来ていたおっさんが返答してくる。分かっててそれでも変える気はないってことだろ。
「行いが悪かったら救われないのか? どんだけ純粋な願いも報われないってのかよ」
「そういった行いの者が減るように法と
「法の傘下にいない者は見殺しにしといてデカい口叩くなよ」
「すべての人を救えると?」
「人だけじゃねぇ…ただ生きたいと願うやつ全員救う覚悟もってからデカい口叩きやがれ」
「面白いな! ならば見せてもらおうか、カズトから能力は聞いてしまっていてなフェアじゃないから教えておこう! 俺は『
「俺が吸えるの知ってたから魔術は打たないのか」
「その右手で吸収できると報告受けてしまってな」
正直、俺が使えるどの呪罪でもキツイな。
『
大見えきったはいいけど、どうしたもんか。
「なんだ? 君自身も何もないのにデカい口叩くタイプなのか?」
「…確かにな」
「ん?」
「それなりの覚悟はあったけど…実力無きゃただの大口叩くだけの野郎に俺もなってしまう」
「…たくさん話をして時間稼ぎか?」
「今の俺に必要なのは……徹底的に叩きのめす覚悟か」
身体から魔力が溢れだす。
どっかで期待していた。自分自身で世界をどう変えるのかの方法にも悩んでいたから王国騎士団っていう大きな組織に同じ考えをもってる奴がいたらいいなとか思ってたけど、まったくそんな事なかったな。
「覚悟を決めれば突然強くなのか?」
「それが呪いってっもんさ」
目の前にいる奴を…まずは倒す。
自分の信念を通すなら力が必要な時代ってことだ。口だけじゃどうしようもならないってのは話しててよくわかったからな。
「ありがとな『
とりあえず『
呪罪本体に許可されたわけじゃないけど、さっきこいつらにキレたときに何かスイッチが入っていける気がする。
「面白くなってきたな!」
「『
ーーゴウッッッ!!!
巨大で強大な橙色の魔力が俺を中心に渦巻く。
勢いで言ってみたけど行けるもんだな。しかも相性悪いって言われてる『
『我の力で目障りな者を全て喰らってみせよ』
「あぁ…分からせてやるさ」
『容赦などするな、喰らい尽くすのだ』
「
ーーーズガァァァンッ!!
その真名を呼んだ瞬間、さらに爆発的な魔力の渦と衝撃波が辺りを吹き飛ばした。
◇
フォルカから放たれた尋常ではない魔力の爆発を持前の雷速で避けたガイゼル、森の一部を完全に吹き飛ばした威力を見て、素直に驚きもあったが突然魔力の質がまったく変わったことにも驚いていた。
「……なんという魔力量」
瞬間的にあの爆発力に加えて、今の魔力放出が攻撃とは思えない点。
ガイゼルはフォルカが会話を続けるうちに冷たく暗い魔力の質に変わっていっていることには気付いていたが、あんなことにはなるとは想像出来なかったようだ。
「これほどの猛者だったとはな」
カズトを難なく退けた報告を本人から受けて相性の問題だったと判断したガイゼルだったが間違っていたこと心の中で謝罪した。
そして近くづいてくるだけで圧迫感のある存在感、先ほどまでは少し様子見のような雰囲気を纏っていたが、今は遠くからでも感じる明確な殺気。
「世間に放つ訳にはいかんな」
ガイゼルは自身の『
ガイゼルを纏う魔力へ小さい蠅が寄り始めていた。
◇
「『
フォルカは自分の周囲を飛んでいるうちの一匹の蠅にむけて話しかける。
『話す暇があるのなら、さっさと喰らいに行かぬか』
「それもそうか」
正直一匹のデカい蠅になるもんだと予想してたから正直以外だったけど、技の使い方なんかは自然と頭の中に流れてきたから助かる。
今の小蠅軍団の状態を『
それと『
おっさんの魔力があるところまで歩いてきた。
そこには雷魔力を体外に放出して、無数の小蠅も焼き殺しているおっさんの姿があった。何匹かの小蠅は俺の下に来て魔力を渡しに来てくれた、これも『
ーーバチバチバチバチッ!
「厄介だが!」
おっさんの姿が掻き消える。
きっと斧で叩き込んで来るんだろう。
「『
俺の視界に現れたのは纏っていた魔力をすべて吸われたおっさんの姿だった。
ーーガシャンッ!
「なに!?」
ーーバチバチッ!
纏っている莫大な雷魔力を吸い尽くし、おっさんが降り下ろしてきた斧を右手一本で受け止めている。
俺の腕はおっさんが使っている雷魔力を纏っている。
『
速かろうが量が多かろうが関係ない、無数に生まれる蠅が一斉に啜り尽くし、一瞬で俺に還元する力だ。
そして吸収した魔力を吸収した分使えるのも特徴だ。今の俺はおっさんが使っている雷魔力を、おっさんと同じように体に纏わせて使っている。
「また使えばいいだけのこと!」
ーーバチバチバチッ! ジュッ!
「なっ!?」
「吹っ飛びやがれ!」
驚いて隙まみれのおっさんに右脚で渾身の蹴りを食らわしてやる。
ーーズガァァァァンッ!!
先ほどまでは吹き飛ばされていた俺のようにぶっ飛んでいく。
いい感じに鎧の一部を粉砕できたので良かったけど、この吸収した雷魔力はどうなってんだ? 普通じゃない密度だし蹴っただけで全部消費してしまった。
『
「終わらせてやる」
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