第6話 王国騎士団第6師団・団長
宿から外に出るとすぐに騎士団が集まっている場所も分かるし、リーシャの声も聞こえてきたので、ジンと一緒にその集団に近づいていく。
「何度も言いますが盗みを行っていません! 彼らはそのようなことを行う輩ではありません!」
「ほう…なかなか勇気のある男たちだな」
「やはり貴様か…」
リーシャに近づいていくと、昨日叩きのめした黒髪男と2m30㎝ほどありそうな高さに王国特有の白・金・青で構成されたご立派な鎧とマント、それに右肩だけワニの装飾がしてある武装で見事なスキンヘッドと髭が目立つおっさんがいた。鎧着てても分かる体のゴツさが威圧感を出している。
「俺たちが金銭盗んだって疑われているって聞いて無実を証明しに来た」
「嘘をつけ! とある村人から情報提供があり、その情報は紛れもなく貴様らなんだ」
「はぁ…ずっと部屋にいたって宿の人にでも聞いてもらえば分かる話だろ」
「一般人を騙せるような力を持っているだろう?」
「昨日と同じで何言っても同じなんだろ? この流れやったぜ」
昨日叩きのめして1日で復帰してくるタフネスは認めるけど頭のほうはまったく進歩してないようで自分の都合のいい正義しか信じられない残念な奴だ。
「ほう…彼がカズトが手も足も出なかった呪い持ちか」
「そいつがつっかかってきたんだよ」
「くっ!」
「貴様らがやっていない明確な証拠があるのか?」
「明確な証拠って言われても、宿でのんびりしていたしな」
「ガイゼル団長信じてください! 私たちは決してそのようなことはしません!」
リーシャが頑張って言ってくれているが、この感じは明確な何かが出るまで晴れることはないだろう。目撃情報らしきものが向こうが握っているらしいし面倒なことだ。
「俺たちの荷物を調べれば済む話だろ?」
「物を飛ばせる魔術が使用できそうな者がいた場合、黒と判断するぞ?」
ロロが見つかったら終わりと言うことか…。
「さっさと罪を認めたほうが速いぞ、呪い持ち」
「…変わらないのね、カズト」
「君こそ、いくら父の仇とは言え同行する相手を間違っているぞ?」
「自分の目で見て信じた人たちよ、上辺しか見えない貴方に言われる筋合いはないわ」
「まるで罪を犯すのは全部呪い持ちみたいな言い方だな…別に普通の人間だって罪を犯すだろ?」
「率や凶悪さで言えば貴様らの非にならん!」
「そんな程度の理由で全部悪って決めつけやがって…」
ジンは腕を組んで黙っているがイライラしてるのがなんとなく伝わってくる。
「それとエルフリッドが言っていた盗人と母の件だが、連れて行くことは出来ぬ。1人事例を出すとすべてを承認しなくてはならなくなる」
「では見殺しにしろと!?」
「この村で協力できんのか? 住人はそれなりに居るはずだ」
「そんなことが出来るほど余裕は民に無いと承知のはずです!」
「王都へ行く何かしらの馬車に乗せてもらい、そこから相談員に手続きすればいいだろう? 金銭は王都で借りればよい」
「唯一の家族は盗みの罪があり、本人は認知機能の低下でそんなことは出来ません」
「我らが何から何までやる便利屋と勘違いするなよ」
「くっ…」
ーープチンッ
きっぱり言われて詰まってしまうリーシャ。
なんか1つ吹っ切れた気がする。
結局こうなんだよ、黒髪剣士の上司はどんなもんか楽しみだったが考え方の本質は同じだ。
法の傘下にいるものにしか手を差し伸べようとせず、今回みたいなケースは見向きもしない、本当に腐ってやがるよ。
「結局…騎士団って大層な名前の集団だけど、中身は偽善の下吠える犬っころかよ」
「ほう…面白いことを言うな」
「とりあえず自分たちが決めた法からはみ出しでもしてたら裁く、そいつにどんな理由があろうと関係なし、過去のイメージや大衆の民の声を聞きいれるけど、俺たちみたいな奴の声なんて聞こうとしねぇ…腐ってるよお前ら」
「貴様…今度こそ斬り刻む」
「気に入らない奴は実力行使…まるで知能の無い魔物だな」
俺の発言にジンも乗ってくる。ガイゼルって呼ばれてたおっさんは不気味に微笑んでいる。
「それで…それを俺たちに言って何になる?」
「なんだ…吠え返してくれると思ったんだけどな」
「君風に返すなら……何言っても同じだろ?」
「あぁ、口だけの正義なんて何の役にも立たないからな」
ーーバチッバチバチ!
俺が魔力を集中させていると、おっさんの体からも黒髪剣士と同じような魔力が溢れてくる。師弟なのか分からんけど雷魔力コンビってやつか。
「貴様やはり正体を現したな!」
「同じ武器を持つ者同士だ! 君は俺とやろう!」
ジンが黒髪剣士に刀を向けて宣言してくれる。絶対最初っからこのつもりで着いてきてるのがバレバレだ。
「カズト、それと他の騎士たちも離れていたほうがいいだろう」
「こんな場所じゃ村で暮らしてるみんなの迷惑だ」
「ほう…世間から見たら悪党である君たちが民の心配とは面白い!」
「俺たちには俺たちなりの美学ってのがあるんだよ」
ーーバッ!!
とりあえず溜めた魔力を使って黒髪剣士と戦った場所に向かって跳ぶ。
軽く振り向くと着いてきてくれるようでおっさんも同じように跳んできてくれていた。
◇
ーーザッ!
「ふぅ…ここらへんなら大丈夫か」
ーーガシャァァンッ!
さすがに重い鎧だけあって凄まじい着地音と衝撃を巻き散らかしながら、俺と少し離れたところに着地するおっさん。
「なかなか骨のある若者で嬉しいぞ、俺は王国騎士団第6師団 団長のガイゼル・ウッゴールと言う者だ」
「呪い持ちで旅してるフォルカってもんだ」
ーーバチバチツ!
すでに黒髪剣士の倍くらいの雷魔力が体を走り纏っている。
おっさんの顔は嬉しいのかとっても良い笑顔を浮かべている。
ーーズゴンッ!
大きな衝撃音とともにおっさんの姿が消えた。
「『
黒髪剣士と同じように体を軽くまわるように『
「『
おっさんが何時呼び出したか分からんデカい三日月みたいな石の片手斧で薙ぎ払ってくるのがスローモーションで見えた。
あの黒髪剣士と比べものにならねぇーぐらいに速いっ!
ーーガシャァァァンッ!
「ぐぉっ!!?」
ーーズゴォォンッ!!
凄まじい威力に『
『
「ずいぶん便利な武器を出せる呪いだな!」
余裕そうに斧を肩で担ぎながら大笑いしているおっさん。
くそ! 一撃重いのにとんでもなく速いってどうなってんだよ!
「痛ってぇ…な」
「蛇腹剣と戦うのは数回しか経験が無いが、あそこまで反応が速かったのは初めてだ」
「そいつはどうも」
ーーギャリギャリギャリッ!
『
その様子を見ておっさんは笑っていた。
「その蛇頭、まるで生き物だな!」
ーーズゴォォンッ!
「蛇腹剣の性質を理解していればなんということはない! だが私の速さに追いつこうとするとは素晴らしい!」
「本当に鎧着てんのかよ!」
俺も止まっていると的になるので走りながら『
あの巨体と重鎧でどんだ速さしてんだよ! あの斧からもとんでもない雷魔力が放出されてるのが分かる。
走りながら観察しているとおっさんの姿が消えた。
「真っ直ぐ走っているだけでは的だぞ!」
「くっ!!」
ーーズゴォォォンッ!
フォルカはガイゼルの一撃で何本もの木をなぎ倒しながら吹っ飛んでいった。
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