第2話 周回遅れのグランド走の様に

 ぼくは長距離走が苦手だった。

 喘息持ちだったぼくには1,500メートル走は地獄の様な行事だった。

 200メートルのグランドを7周半。

 呼吸器系の弱いぼくは2周を過ぎた辺りから息が出来なくなる。倒れそうになりながらも走り続けるしかなかった。

『このまま倒れる事が出来たらどんなに楽だろう』

 文字通り息も絶えだえになりながら走ってるぼくの横を一周回ってきた者達が通り過ぎる。

「大丈夫か?がんばれよ」

 彼らは普通に話しかけてきた。


 ぼくが死ぬ想いで駆けている横を、彼らは事もなげに、当たり前の様に駆けていく。


 人生って不公平だよな。

 普通に生きてくだけ、求められてる最低限の事をこなそうとするだけで全力を尽くさなきゃいけない人がいる。

 努力が足りない?

 お前の3倍やる事やってる?

 そうなんだろうね。

 やる事やってないのに出来ないなんて、ただの愚痴なんだろうね。

 でも『やってない』と『出来ない』の差ってなんなんだろうね。


 今日も周りの人が当たり前にやってる事を必死の想いでやっている。


 周回遅れのまま同じ場所を走ってるグランド走のように。


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