第3話
それから僕と彼女は一緒に行動するようになった。
僕と彼女は、街から外出する日を綿密に検討した。
ミサイルが発射された過去2回の日を調べてみた。
4年前の3月7日。
2年前の11月12日。
この2回だった。
3月7日は向こうから。11月12日はこちらからだった。
だがどちらかはあまり問題じゃない。
結局、すぐに相手から反撃のミサイルが飛んでくるからだ。
4年前は経済、2年前は資源の問題で争っていた。
興味深いデータを見つけた。
隣国に対する不満が世論調査で80%を超えてから、ミサイルは発射された。
彼女はこの数字をミサイルが発射される根拠とした。
現在、領土問題が持ち上がっていた。
昨日の世論調査で不満は80%を超えた。
「今週がチャンスね」
教室で彼女が言った。
この一週間のうちに、ミサイルが撃たれることに賭けた。
今日は月曜日だった。
何曜日にするか。それが問題だった。
彼女は僕に、何曜日にするか聞いてきた。
「……水曜日かな」
「本当に?本当に水曜日でいいの?」
「う、うん」
あいまいな返事しかできない。
だって確証なんかあるわけないんだから。
「変えても全然いいんだよ」
「ううん。それでいく」
それで僕たちは、先生に『外出届け』を出した。
街から離れる場合に必要な手続きだった。
ターゲットタウンの住民が街を出るには教師や役所等、公的な人間に申請しなければならない。
僕も彼女も初めてだったので簡単に許可はでた。
翌朝。
僕らは隣町の駅前で待ち合わせた。
彼女は青いカーディガンに、白いスカートをはいていた。
出かけたのは、ミサイルの範囲から外れた隣街だ。
僕らは自分達の街が見渡せる丘の上にあるマンションの一室を借りた。
1LDKで冷蔵庫やエアコン洗濯機などは完備されていた。
部屋に入った僕らは、初め無言だった。
だがすぐに僕達は自然とベッドの上で抱き合った。
お互いすごく興奮した。
その後はずっとTVを見た。
朝のニュースやワイドショーは、人気タレントの不倫報道ばかり追っていた。
午前中はこうして過ごした。
お腹が空くとデリバリーのピザを頼んだ。
2人で一枚のサラミのピザをむしゃむしゃと食べた。
これまでミサイルが飛んできたのは午後だった。
それまでに飛んでこなければ、今日はハズレ―かもしれない。
午後はずっと窓の外を見て過ごした。
「う~ん。もうないかな……」
諦めかけたその時だった。
「あれっ!見てっ!」
彼女が叫んだ。
彼女の指が僕らの住む街を指していた。
空が。
空が光っていた。
そして次の瞬間、炎が僕らの街を包んだ。
「ミサイルです!たった今、ミサイルが撃たれました!」
TV画面の中はパニックになっていた。
それ以上ニュースを見る必要はなかった。
「あはっ。あはははは」
やった。やったぞ。
僕らは賭けに勝ったんだ。
僕らは窓から、僕らの街を見ていた。
燃える。燃える。燃える。
遠くから見ていると、まるで映画のワンシーンのようだった。
僕らは手つないだ。
やがて彼女が言った。
「ねえ。お腹空いた」
「そうだね。僕もだよ」
「ハンバーガー食べにいこ」
「いいよ。行こう」
「うん」
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