第35話 続・上級者とテクニカルキャラ

「お空に飛んでってください!」


 〝コトリ〟は、必殺技の「風呂敷おマッシュ」を〝あさ子〟にぶちかました。


 だが、〝あさ子〟を操るイツキ・ケブカワは冷静だった。

 冷静に「↓+B」を押して、「風呂敷おマッシュ」をうけながすと、そのままカウンターの正拳突きを繰り出した。


(ざんねーん♪)

「まじですか!? 目ざとすぎません?」


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 〝コトリ〟の光学迷彩の効果が解けた。

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 カウンターをくらってよろけた〝コトリ〟に、〝あさ子〟は、素早くステップを踏んで近寄ると、そのまま強烈なアッパーカットを喰らわせて、すぐさま(右向きなので)「←↓↙︎+A」と入力しアッパーカットの動作をキャンセルして強烈な必殺アッパー「バリツキャノン」をおみまいした。


 そしてそしてすぐさま(右向きなので)「←↓↙︎←↓↙︎+AB」と入力して「バリツキャノン」をキャンセルしてさらに強力に強烈な超必殺アッパー「アルティメットバリツキャノン」をおみまいした。


 〝コトリ〟は、ステージの外にすっ飛んだ。しかし、すぐさま風呂敷を「バサっ」と広げてステージに復帰した。

 現在の〝コトリ〟ダメージは58%。まだ「キラーン」と吹き飛ばすには至らなかった。


 〝コトリ〟は、ステージに降り立つや否や、ポケットに風呂敷を突っ込んだ。そして、ビシィとゆび指して、


「わたしたちの戦いはこれからや!」

 てんてん!


と、打ち切りフラグのような挑発をした。

そして同時に〝かわのたて〟から、なんだか残念な効果音がてんてんと流れた。


(確かに。僕たちの戦いはこれからだw)


 イツキ・ケブカワノートPCの前でにやけると、まるで挑発に乗るかのように〝あさ子〟をダッシュさせて間合いを詰めてきた。


 〝コトリ〟は、そんな〝あさ子〟を牽制するべくお酢を飲んだ。そして瓶を放り投げた。流れるように美しく一切の無駄がなかった。


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 蓄積ダメージが3%回復した。

 木行ポイントが1上がった。

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 必殺技「酸性耐性おす、めっちゃスキ」。


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 蓄積ダメージが3%回復した。

 木行ポイントが1上がった。

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 必殺技「酸性耐性おす、めっちゃスキ」。


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 蓄積ダメージが3%回復した。

 木行ポイントが1上がった。

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 必殺技「酸性耐性おす、めっちゃスキ」。


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 蓄積ダメージが3%回復した。

 木行ポイントが1上がった。

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 必殺技「酸性耐性おす、めっちゃスキ」。


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 蓄積ダメージが3%回復した。

 木行ポイントが1上がった。

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 コトリ・チョウツガイは、心の中で素早く「↑+B」と入力した。


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 木行もくぎょうポイントを5ポイント消費。

 メイド服のスキル、職務経歴詐欺キャリアシート発動。

 最も直近に使用した推命アビリティを不正使用。

 推命アビリティ23。〝甲申きのえさる〟使用可能。

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 メイド服のスキル、職務経歴詐欺キャリアシートで、使用可能アビリティを、推命アビリティ8。〝辛未かのとひつじ〟から、さらにひとつ前に使用していた、推命アビリティ23。〝甲申きのえさる〟に置き換えた。


 職務経歴詐欺キャリアシートは、一度使うとその推命アビリティは条件から除外される。

 つまり、コトリ・チョウツガイが使用できる推命アビリティは、ビッチュウ=タカマツ城から脱出する際に使用した〝どうのつるぎ〟を「パキリン」と叩き折った、優れたホーミング性能と防御無視の性質を持ち合わせる、推命アビリティ23。〝甲申きのえさる〟になっていた。


 〝コトリ〟は、「Bボタン」でお酢を飲んだ。そして同時にかまいたちが唸りを上げて飛び出した。

 お酢の瓶のアイテム攻撃と、防御不能のかまいたちの同時攻撃だ。


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 蓄積ダメージが3%回復した。

 木行ポイントが1上がった。

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 〝かわのたて〟から、憎たらしいイツキ・ケブカワの声が聞こえてきた。


(ふーん、固定砲台スタイル? でも、そんな単発飛び道具ふたつじゃ意味ないよw)


 〝あさ子〟は、お酢のビンがぶつかる直前に小さくジャンプして「ひょい」っとお酢の瓶をキャッチすると、そのまま瓶をぶん投げて、かまいたちと相殺した。見事な上級テクニックだった。


 〝コトリ〟は「Bボタン」でお酢を飲んだ。そして同時にかまいたちが唸りを上げて飛び出した。


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 蓄積ダメージが3%回復した。

 木行ポイントが1上がった。

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 〝コトリ〟は「Bボタン」でお酢を飲んだ。そして同時にかまいたちが唸りを上げて飛び出した。


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 蓄積ダメージが3%回復した。

 木行ポイントが1上がった。

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 〝コトリ〟は「Bボタン」でお酢を飲んだ。そして同時にかまいたちが唸りを上げて飛び出した。


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 蓄積ダメージが3%回復した。

 木行ポイントが1上がった。

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 〝コトリ〟は「Bボタン」でお酢を飲んだ。そして同時にかまいたちが唸りを上げて飛び出した。


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 蓄積ダメージが3%回復した。

 木行ポイントが1上がった。

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 〝あさ子〟は、飛んでくるお酢の瓶を、都度ジャンプキャッチすると、かまいたちを相殺し続けた。


(いくらやっても無駄だよ。時間の無駄。

 そろそろ時間切れだ。先生に推命アビリティの5。〝戊辰つちのえたつ〟で、作ってもらったステージも小さくなってきてる。決着をつけよう)


 そう言うと、〝あさ子〟は一気に間合いを詰めてきた。


 今や! 


 コトリ・チョウツガイは、心の中で「Bボタン」を押した。

 〝コトリ〟は、お酢を飲むのをキャンセルし、ものすごい勢いでお酢の瓶をぶん投げた。


(え?)


 イツキ・ケブカワが操る〝あさ子〟は意表をつかれ、うっかり、中身の入ったお酢の瓶をガードした。そしてガードの膠着こうちゃくのタイミングに、ガード不能のかまいたちが突き刺さった。


「よっしゃ! 計算通り」


 コトリ・チョウツガイは、このチャンスを見逃さなかった。

 〝コトリ〟は、一目散にダッシュして、ステージに備え付けられていた、フタがついた謎めいた木箱をエナメルの靴で蹴っ飛ばした。


 中から、胡散うさん臭くキンキラキンに輝くゴールデンハンマーが現れた。


(え? マジで!?)


 イツキ・ケブカワは、本気で狼狽ろうばいした。

 あれに当たったらイチコロだ。ガード不能攻撃だ。


(まさか!? 八卦はっけ??)


 イツキ・ケブカワは、〝コトリ〟が挑発を行ったステージの端っこを見た。

 サイコロがてんてんと転がっていた。


 八面体の赤い字の刻まれたサイコロと、八面体の黒い字が刻まれたサイコロと、至って普通の六面体のサイコロだった。

 八卦はっけ……つまり風水を観るサイコロだった。


 コトリ・チョウツガイは、挑発にみせかけて占いをしていたのだ。

 アイテムボックスに何があるか、務めて冷静に占っていたのだ。


 〝コトリ〟はゴールデンハンマーを手に取った。


 〝かわのたて〟から、とてもチープな音源の、とてつもなく能天気な曲が流れてきた。しかしそれはとても恐ろしい軍艦マーチだった。


「わたしの勝ちです!」


 〝コトリ〟は、能天気な軍艦マーチのリズムに合わせて、気が狂った様にゴールデンハンマーを振り回した。

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