第25話 女中の娘と〝短刀〟

(本当に申し訳ない……だが、この任務はコトリちゃんにしか出来ない。

 頼む。すぐに戻ってきてくれ!!)


「……はーい」


 ガチャリ


 コトリ・チョウツガイは、力なく返事をした。そして〝駅馬えきば〟をガチャリと切った。


 急がなければ。悩んでいる暇などない。

 コトリ・チョウツガイは、手のひらで両の頬を「ばちん」と叩くと、気合をいれて全力でニコニコした。


「失礼します」


 コトリ・チョウツガイは、鯛の昆布締こぶじめをさかなにしずしずとお神酒みきを飲む、ムネハル・クリアリバーのもとに近寄ると、三つ指を立てて頭を下げた。


「〝短刀〟をきよめてまいります。少々、お貸し戴きたく……」


 ムネハル・クリアリバーは、思案した。

 鯛の昆布締こぶじめは残り三切れ。

 辞世の句は、その後にゆっくり考えよう。


「構わぬ。だが、辞世の句はやはり公方くぼう様よりたまわった〝短刀〟に見護られながら考えたい。この鯛を食べ終わる頃合いには、きよめの儀を終えてくれ」


「かしこまりまりました」


 コトリ・チョウツガイは、〝短刀〟をおずおずと掲げると、そのまま胸に抱いてしずしずと退場した。


 そして、ムネハル・クリアリバーから自分の姿が見えなくなるのを見計らい、大急ぎで、唐草模様からくさもようの風呂敷から、なんだかお洒落な青色の瓶に入ったドリンクを10本取り出した。お酢だった。


 コトリ・チョウツガイは、腰に手を当てると、むせることなく瞬く間に10本のお酢を飲み干した。


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 コトリ・チョウツガイは、木行もくぎょうポイントが10上がった。

 (現在、累計で木行もくぎょうポイント+10上昇)

 コトリ・チョウツガイは、木行もくぎょうポイントがMAXに到達した。

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 コトリ・チョウツガイは、右手に〝どうのつるぎ〟、左手に〝かわのたて〟、そして〝短刀〟を口にくわえると、木行もくぎょうポイントを10消費して、インスタントスキルを発動した。


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 〝経歴詐欺キャリアアップ〟発動。全ての武器熟練度をMAXに不正に書き換え。

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 コトリ・チョウツガイの〝どうのつるぎ〟〝かわのたて〟〝短刀〟は、七色に光り輝いた。いや、正式には10色だった。ハッキリした色合いの〝緑赤黄白青〟の5色と、淡い色合いの〝緑赤黄白青〟の10色だった。

 なんだか、ものすごいレアアイテムがくじ引きで当たったような、なんとも胡散うさん臭い光り方だった。


「ふんびでふは! いふぉがふぁ!!」

(準備出来た! いそがな!)


 コトリ・チョウツガイは、窓に向かってスタンバイをした。

 魔法使いのほうきのごとく、〝どうのつるぎ〟にまたがった。


 そして、〝かわのたて〟を天に掲げた。


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 推命アビリティ24。〝丁亥ひのとい〟詠唱。

 状態異常干支じょうたいいじょうえと。スキル効果を乗算に強制変換。

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 〝かわのたて〟スキル発動。〝干支七度巡るてんてんどんどんてんどんどん

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 とくに効果はなかった。

 とくに効果はなかった。

 とくに効果はなかった。

 とくに効果はなかった。

 とくに効果はなかった。

 とくに効果はなかった。

 とくに効果はなかった。


「がんふぁれふぁたし! やれふぁでひぃる!!」

(頑張れわたし! やでばできる!!)


 コトリ・チョウツガイは、またがった〝どうのつるぎ〟を「ぎゅ」と強く握り締めた。


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 推命アビリティ27。〝庚寅かのえとら〟発動。

 武器リーチ増加。

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 〝どうのつるぎ〟は、如意棒の如く「ギュイン」と伸びた。


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 〝どうのつるぎ〟のスキル、干支七度廻るてんてんどんどんてんどんどん発動。

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〝どうのつるぎ〟は「ギュイン」と伸びた。

〝どうのつるぎ〟は「ギュイン」と伸びた。

〝どうのつるぎ〟は「ギュイン」と伸びた。

〝どうのつるぎ〟は「ギュイン」と伸びた。

〝どうのつるぎ〟は「ギュイン」と伸びた。

〝どうのつるぎ〟は「ギュイン」と伸びた。

〝どうのつるぎ〟は「ギュイン」と伸びた。


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 〝丁亥ひのとい〟発動。加算を乗算に状態異常。

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〝どうのつるぎ〟は「ギュギュイン」と伸びた。

〝どうのつるぎ〟は「ギュギュギュイン」と伸びた。

〝どうのつるぎ〟は「ギュギュギュギュイン」と伸びた。

〝どうのつるぎ〟は「ギュギュギュギュギュイン」と伸びた。

〝どうのつるぎ〟は「ギュギュギュギュギュギュイン」と伸びた。

〝どうのつるぎ〟は「ギュギュギュギュギュギュギュイン」と伸びた。

〝どうのつるぎ〟は「ギュギュギュギュギュギュギュギュイン」と伸びた。

〝どうのつるぎ〟は「ギュギュギュギュギュギュギュギュギュイン」と伸びた。


 〝どうのつるぎ〟は、すざまじいスピードで伸びていき、またがっていたコトリ・チョウツガイは振り落とされた。

 コトリ・チョウツガイは、どうにかこうにか〝どうのつるぎ〟を握っていた。そして、「ぎゅ」と強く握り締めた。


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 推命アビリティ21。〝甲申きのえさる〟発動。

 かまいたち召喚。対象は、〝どうのつるぎ〟の根元からキッカリ1メートル。

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 かまいたちは、うなりをあげて〝どうのつるぎ〟にぶつかった。

 そして「パキリン」と弾かれた。


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 〝どうのつるぎ〟のスキル、干支七度廻るてんてんどんどんてんどんどん発動。

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 かまいたちは〝どうのつるぎ〟に「パキリン」と弾かれた。

 かまいたちは〝どうのつるぎ〟に「パキリン」と弾かれた。

 しかし、かまいたちは外れた。

 しかし、かまいたちは外れた。

 かまいたちは〝どうのつるぎ〟に「パキリン」と弾かれた。

 しかし、かまいたちは外れた。

 かまいたちは〝どうのつるぎ〟を「ぽきりん」と叩き切った!


 〝どうのつるぎ〟の伸びた部分は「フッ」と消えた。

 行き場を失った〝どうのつるぎ〟の伸長しんちょうエネルギーは位置エネルギーに変換され、コトリ・チョウツガイを遥か彼方に吹き飛ばした。


 コトリ・チョウツガイは、その衝撃に耐え切れず、口にくわえた〝短刀〟を離してしまった。

 〝短刀〟は「すぽりん」とすっ飛んでいった。そしてそのまま唸りを上げて飛んでいき、林立する常緑樹の木々の枝をスパスパと切り裂いていった。

 そしてそして葉の茂った常緑樹の枝は、もれなくコトリ・チョウツガイにぶつかった。


 葉の茂った枝の攻撃! コトリ・チョウツガイは16ダメージを受けた!

 葉の茂った枝の攻撃! コトリ・チョウツガイは8ダメージを受けた!

 葉の茂った枝の攻撃! コトリ・チョウツガイは4ダメージを受けた!

 葉の茂った枝の攻撃! コトリ・チョウツガイは2ダメージを受けた!

 葉の茂った枝の攻撃! コトリ・チョウツガイは1ダメージを受けた!

 葉の茂った枝の攻撃! しかしコトリ・チョウツガイはダメージを受けない!

 葉の茂った枝の攻撃! しかしコトリ・チョウツガイはダメージを受けない!

 葉の茂った枝の攻撃! しかしコトリ・チョウツガイはダメージを受けない!


 葉の茂った枝から、合計31ダメージを受けたコトリ・チョウツガイは、いい塩梅に減速していき、15と書かれたハッキリとした黄色と緑のツートンカラーのドアにぶつかった。


 戊寅つちのえとらのドアの攻撃! コトリ・チョウツガイは15ダメージを受けた!


 コトリ・チョウツガイは、ドアを突き破り、もんどりうって長い長い廊下に転がり込んだ。


 ブスリ!


 〝短刀〟は、コトリ・チョウツガイの顔先5ミリの所で、床にザックリと突き刺さった。


 危なかった。


 〝短刀〟の〝うんのよさ〟が低かったら、あやうくコトリ・チョウツガイの顔は真っ二つになるところだった。


 そして今日のコトリ・チョウツガイと〝どうのつるぎ〟の〝うんのよさ〟は至ってふつうだった。


 とても危なかった。


 推命アビリティ21。〝甲申きのえさる〟の80%の8回攻撃を、3回も外していた。本当にギリギリのスレスレだった。


「よくがんばった。コトリちゃん。えらいぞ」


 タクミ・ケブカワは、常緑樹の葉で傷だらけになったコトリ・チョウツガイの頭を「そっ」となでてねぎらった。目には光るものがあった。

 タクミ・ケブカワは、あくまで平静をよそおって、次なる任務の準備を指示した。


「これがタカカゲさんの〝だいじな手紙〟だ。あとこれを飲んで体力を回復してくれ。ツマミも用意した」


 和食料理人の調理白衣を着たタクミ・ケブカワは、〝だいじな手紙〟と、なんだかお洒落な青色の瓶に入ったドリンクを2本差し出した。お酢だった。


 そしてツマミは、タッパに入った佃煮だった。鯛のビール昆布こぶじ締めに使った昆布を刻んでごま油で炒った、昆布の佃煮だった。

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