第12話 魔王と〝どうのつるぎ〟と額縁つきのドア。
唐草模様の風呂敷を腰に巻いたタツミ・イヌウシが、首を大きく
「でもってイツキさん、〝どうのつるぎ〟は、なにを持ち帰ればええです?」
(うーん、難しいけど、
それになんといっても防御力無視なのが大きい。魔力がなくても8回重ねれば充分に実践レベルに落とし込める。
他はちょっと、コトリちゃんの戦闘スタイルに向いていない。コトリちゃんのスタイルは〝
「はーい」
コトリ・チョウツガイは、〝かわのたて〟越しのイツキ・ケブカワの、ちょっとなにいってるか、わからない解説を、これっぽっちも理解しないまま、ニコニコと元気よく返事をした。
そして、おもむろに、胃袋のところで真っ二つになった目覚めた魔王の下半身に、〝どうのつるぎ〟をかかげた。
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スキル、
目覚めた魔王の
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エラーが発生しました。エラーコードE12C。
「しもた、こっちやったか」
コトリ・チョウツガイは二択の選択ミスを行った。危なかった。戦闘中なら死亡確定だ。
コトリ・チョウツガイは、ニコニコしながら今度は、胃袋のところで真っ二つになった目覚めた魔王の上半身に、〝どうのつるぎ〟をかかげた。
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スキル、
目覚めた魔王の
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「息を引き取った魔王さん、ありがとうございます!」
コトリ・チョウツガイは、〝どうのつるぎ〟を腰にぶら下げたフックにひっかけて、両手を合わせてお祈りした。東洋的な仏教思想のお祈りだった。
「これでよし。それじゃあ次は、勇者テンセンさんと、エルフの魔術師ホクトさんを生き還えらせましょう。60分越えんうちに」
(了解。先生にそっち行ってもらう。もう〝ドアの前〟でスタンバイしてもらっている。
そっちに行ってもらって、
この世界は、優れた蘇生技術が進んでいる。
しかし、世の中便利なことだらけではない。
死後60秒以内なら、60%未満の欠損があっても完全再生可能。
だが、60秒以上経過すると、欠損箇所は再生できない。
そして、60分移以上過すると、蘇生率は100%から40%に低下する。
さらに、以降、60分経過する毎に、蘇生率に40%の乗算が行われる。
世の中は、明確なルールが存在する。そんなに便利に都合よくは行かないのだ。
死人がホイホイと簡単に生き還る世界があるなら、そもそも、この世界に魔王は生まれていない。
コトリ・チョウツガイは、そんな都合の良くないこの世界に、とても都合の良くない人物が訪ねてくることに難色を示した。
「え? 先生ですか? イツキさんではなく?」
(ゴメン、僕は今、株主総会中なんだ。これから登壇しないといけないから、そろそろ〝
「ちょ! ちょっとまってください!」
ガチャリ! ツーツーツー……
引き止めるコトリ・チョウツガイを華麗にスルーして〝
同時に、コトリ・チョウツガイの目の前におもむろにドアが現れた。
ドアは、ハッキリとした緑とグレーのツートンからのドアだった。そして額縁が備え付けられてあった。額縁の中に数字の〝21〟が書かれてあった。
ガチャリ!
「おつかれ。おつかれ。おつかれ」
ドアノブが、反時計回りにひねられた。
ドアから現れたのは、一人の女だった。
女は、涼やかなの目の絶世の美人だった。グレーのストライプのスーツに身を包み、腰まであろうかと言う黒い長髪をひっつめにして、銀の細フレームのメガネをかけていた。
「先生、おつかれさまです!」
コトリ・チョウツガイは、ニコニコと笑いながら〝先生〟と呼ばれた女をねぎらった。
女の名前は、キコ・アンラクアン。コトリ・チョウツガイが勤務する、公益ギルドのアイテム鑑定所の鑑定士だった。ついでに所長でもある。
公益ギルドのアイテム鑑定所の鑑定士、兼、所長、兼、先生のキコ・アンラクアンは、カツカツと革靴を鳴らして、エルフの魔術師、ホクト・ノールポイントのもとで立ち止まった。
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魔術師、ホクト・ノールポイントは、パチリと目をさました。
公益ギルドのアイテム鑑定所の鑑定士、兼、所長、兼、先生のキコ・アンラクアンは、腰をかがめて、ホクト・ノールポイントの顔を見た。
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キコ・アンラクアンの瞳、具体的には角膜に直接、エルフの魔道士ホクト・ノースポイントの情報が映し出された。
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名前:ホクト・ノースポイント
人種:エルフ
職業:魔道士
スキル:
冒険者レベル48
HP:1669
攻撃 :47
防御 :17
素早さ:35
魔力 :59
習得
状態異常:なし
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キコ・アンラクアンは瞳、具体的には角膜に直接、エルフの魔道士ホクト・ノースポイントの情報を確認して珍妙につぶやいた。
「大丈夫だ、問題ない。状態異常はない。ない。ない。
そして良いスキル。良い
エルフの魔道士ホクト・ノースポイントは、キコ・アンラクアンの珍妙な口調に首を大きく
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