第7話 魔王と看板娘

 目覚めた魔王は、コトリ・チョウツガイと対峙した。


 目覚めた魔王は、このターン、とても控えめな推命アビリティをあと6つ使用できた。そのうち5つのとても控えめな推命アビリティを使用した。


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 推命アビリティ32。〝乙未きのとひつじ〟発動。

 最大HPの49分の1を回復。

 HPが81,586回復。


 推命アビリティ32。〝乙未きのとひつじ〟発動。

 最大HPの49分の1を回復。

 HPが81,586回復。


 推命アビリティ32。〝乙未きのとひつじ〟発動。

 HPが81,586回復。


 推命アビリティ32。〝乙未きのとひつじ〟発動。

 HPが81,586回復。


 推命アビリティ32。〝乙未きのとひつじ〟発動。

 HPが81,586回復。

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 現在の目覚めた魔王のHPは、105,986回復。そして今なお、1秒につきHPが244ずつ回復し続けている。


 残りひとつのとても控えめな推命アビリティは、コトリ・チョウツガイに使用した。


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 推命アビリティ60。〝癸亥みずのとい〟発動。

 人物観察プロファイリング:鑑定方法、相術そうじゅつ

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 目覚めた魔王の瞳、具体的には角膜に直接、コトリ・チョウツガイの情報が映し出された。


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名前:コトリ・チョウツガイ

人種:該当データなし

職業:公益ギルト受付嬢

スキル:酸性耐性おす、めっちゃスキ


冒険者レベル1

HP:59

攻撃 :6

防御 :3

素早さ:8

魔力 :7



習得推命アビリティ:60〝癸亥みずのとい

状態異常:木行もくぎょうポイント+10



 謎だった。明らかに戦闘に不向きだった。

 そして、目覚めた魔王は後悔した。鑑定方法を誤った。〝占術せんじゅつ〟もしくは〝卜術ぼくじゅつ〟を使うべきたった。

 

 戦闘に不向き……つまりは何かをいる。常識的な戦闘方法で戦うタイプではないのだ。おそらくは装備している〝どうのつるぎ〟と〝かわのたて〟に秘密がある。そして、最も警戒しなければならなかったのは〝人種:該当データなし〟すなわちコトリ・チョウツガイは、本来この世界にではないのだ。


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 目覚めた魔王は、推命アビリティ60。〝癸亥みずのとい〟を解除した。

 文字情報の羅列に覆われた視界が晴れた。

 目覚めた魔王と対峙している、コトリ・チョウツガイは泣いていた。


「うぅ、あんまりやぁ……」


 瞳を真っ赤にして、涙をドバドバと流していた。


 目覚めた魔王は理解した。そうか、この娘も本業は〝占い師〟か。

 私はこの娘に〝占術せんじゅつ〟で過去を暴かれたのか。


 私が控えめな性格の少女だった過去を、顔を踏んづけられ、ひたいに生えたツノを奪われて絶命した過去を、そして翌月に控えていた婚礼のちぎりの為にひたすらに守り続けていた貞操を奪われた過去を暴かれたのか。


 コトリ・チョウツガイは、目をゴシゴシといた。

 そして、スッキリしたニコニコした笑顔で言った。


「一回死んだらええです」


 意味がわからなかった。ちょっと、なにいってるかわからなかった。


「絶対、死んだ方がええです。こんなおもんない異世界におってもしょーもないです。

 せやからとっとと死にましょ? ね?」


 コトリ・チョウツガイは、ニコニコしながら木行もくぎょうポイントを10消費して、インスタントスキルを発動した。


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 〝経歴詐欺キャリアアップ〟発動。全ての武器熟練度をMAXに不正に書き換え。

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 コトリ・チョウツガイの〝どうのつるぎ〟と〝かわのたて〟が、七色に光り輝いた。いや、正式には10色だった。ハッキリした色合いの〝緑赤黄白青〟の5色と、淡い色合いの〝緑赤黄白青〟の10色だった。

 なんだか、ものすごいレアアイテムがくじ引きで当たったような、なんとも胡散うさん臭い光り方だった。


 コトリ・チョウツガイは、ニコニコしながら言った。


「さあ、死んでください。でもって、すっきりしましょ🎵」

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