第2話 空と愉快な仲間たち

 ガラガラッ。

 教室のドアを開けると愉快な仲間たちが出迎えてくれた。

「「「「「お疲れ〜」」」」」

 美少女とおまけのイケメンのお出迎えだ。

「やってみてどうだった? 挨拶」

 悠亜に聞かれた。

 返事なんてそんなの決まってるだろ?

「いや〜流石の俺でも緊張したわ〜」

 俺がわざとらしく言うと、

「お前緊張してたのかよ! 嘘だろ? 俺には不敵な笑みを浮かべた悪魔にしか見えなかったんだが」

と蓮に突っ込まれた。

 高野 蓮。高身長なイケメン。ちなみにモテはしない。

 理由は明白、暑苦しいからだ。


 高身長イケメンは埋まってろ。


「俺が悪魔ならとっくに世界は滅んでるぞ」

 俺の言葉に笑いのタネが咲いた。

「悪魔さん悪魔さんここに契約書があります。契約しませんか」

 そう言って春が一枚の紙をこちらに差し出した。

 どれどれ……って!?

「婚姻届じゃん!どさくさに紛れてそんなもん出すんじゃねえよ」

 俺の返事にぶー垂れてる彼女は、竹宮 春。

 小柄で小動物のようにかわいい黒髪の女の子で嫁候補だ。

 ただ場所も人目も憚らず抱きついたり、「愛してる」とか平然として言ってくるのがかわいいようで玉に瑕だ。

 「それだけ空のことが好きってことなんだよ?」

 そう笑いながら言うのは柊 悠亜。

 とても可愛くて学校一の人気者。

 これぞヒロインって感じの銀髪ロングの女の子だ。

 ちなみに嫁候補。

「好きって言ってもねえ。せめて時と場所を考えてくれ」

 ほんと考えてくれ。

「とか言ってー! 春ちゃんにドキッとしたくせにー」

 こづきながら言うのは瑞谷 未羽。

 スポーツ万能のかわいいと言うよりかっこいいが似合う金髪ポニーテールの嫁候補。

「そりゃ男の子なんだからドキッとはするって」

 超絶可愛い女の子に好きって言われドキッとしないに男がいたら紹介して欲しいぐらいだ。俺なんかいつもドキドキしっぱなしだぞ。

「ところで悪魔君。美少女とイチャイチャしすぎて周りからの視線がキツくなってる件についてどうするのかな」

 そう茶化してくるのは一条 海斗。

 黒髪の爽やかイケメン君で俺の一番信用できる友達だ。

「その件については放置ということで」

 めんどくさいのは放置が一番だ。

 まあ放置しすぎるのは良くないけどな。


 放置すれば大体の問題は解決する。一部例外はあり。

 ま、俺の持論だが。

 ちなみに放置で問題が大きくなることもあるので注意だぞ!

 

 大抵は解決しちゃうので俺には問題ナーシ。


「おいお前ら席につけよー」

 教室のドアを勢いよく開けて入ってくるのは担任の平澤 絵亜だ。

 平澤先生とはすでに何度か会っている。

 中学校の時にあることで知り合った。

 それから結構よくしてもらってる。

 たまにうざいが。

「あれっ? お前らは隣のクラスだろ? 何でまだいるんだ?」

 先生はこちらをみて聞いてきた。

 正確には俺の後ろにいる人物にだが。

「えーとですね、今日からこのクラスに変わったと言いますか…」

 蓮はそう弁明する。

「いやいや、元からこのクラスだったでしょ!」

 未羽はもはや元からいたことにするらしい。

 二人の言葉に先生は笑顔で近づく。

 「よしお前らそんなに生徒指導室に行きたいか。そうかそうか」

 そんな先生の言葉に二人はやべって顔をした。

「先生」

 蓮が言うと先生は「ん?」と笑顔で答えた。

 先生の笑顔で何かを察した二人は足に力を入れ地面を力強く蹴った。

「すいませんでした〜〜〜〜」

 そう言って二人は走って自分たちの教室に戻った。

 二人は隣の12組なのだ。

 しかし先生来ても教室にいるとかあいつらすごいな。いろんな意味で。

「全く、いくら黒咲のことが好きでもチャイムなったら戻れよなー」

 二人が出て言った後に先生はそういった。

「ちょっと先生、未羽が俺を好きって言うのはいいけど蓮はやめてください」

「まあまあ、男同士でも誰も責めないんだしいいじゃないか」

 俺のツッコミに先生はそう答えた。

「やめてください。俺はノーマルですよ」

「ん? 君はアブノーマル教団代表だったろ?」

「何ですかその教団……。てか俺代表になってるし……生徒を架空の教団に勝手に入れるのやめてもらっていいですかね」

「ノリ悪いなー君は」

「先生がおかしいんですよ」

 そう俺は呆れ顔で言った。

 それに対して先生は「そうか?」と笑っていた。

 ほんとこの人はいい歳して子供みたいだな。

 だから生徒に好かれやすいんだろうけど。

「とりあえずそんなことは置いといてHR始めるぞー」

「そんなことって……」

 俺はそう愚痴りながらも先生が促すようにHRを受けることにした。


「じゃあHR終わるぞー」

HRは終わり、授業の用意をしようとしてると平澤先生が話しかけてきた。

「ところで黒咲、ほんとのところどうなんだ?」

 そのことか。しつこいなあ。

「まあまあそんな嫌な顔せずに答えてくれよー」

 しょうがないなー。答えてやるかー。答えないといつまでも聞いてくるし。

「男は守備範囲外ですよ。これでいいですか?」

 俺がふてぶてしく答えると先生は新たな疑問をぶつけてきた。

「じゃあさ、あの女の子たちで誰が好きなんだ?」

 先生はニマニマした顔で聞いてきたがそのことに対してはすでに答えが出ているし答えてる。

「先生。俺はみんな好きだけど今は誰とも付き合わないよ。先生は中学の時に俺が三人を振ったの知ってるでしょ」

 俺は中学の時に三人…悠亜、春、未羽に告白された。嬉しかった。だけど俺は「気持ちは嬉しいし付き合いたい。でも今は無理なんだ。やることがある。ごめん」と三人に対して言っている。ちなみに先生と海斗、そして蓮はそれを覗き見していたので知っている。

「けどお前三人ともにまだ詰め寄られてるんだろ?」

 そうだ。三人は断ったはずなのに未だに好き、愛してるなど言ってくる。

 言われるのは気持ちいいからいいんだけど。

「あいつらも茨の道を選ぶよなー。こんなめんどくさい奴を好きになるなんて」

「それは本人が目の前にいない時に言ってもらえますかね」

「まあ今はってことはいつかあいつらと向き合う時が来るんだろ?」

 いや俺のツッコミは無視かよ。

「そうですね。今は無理ですがいずれ……ね。今抱えてる問題が解決すればですが」

 正直なところ俺が抱えてる問題はいつ解決するかはわからない……が問題が解決しなくてもあいつらとはいずれちゃんと向き合うべきだとは思っている。

 けど今じゃない。そう思う。

 まあ何となく思ってるだけなんだけどな。

「今じゃなくてもいい。今じゃなくてもいいからあいつらのことを大切に思っているならちゃんと向き合ってあげるんだ」

「わかってますよ」

 俺が言った言葉に先生は満足そうな顔で頷き「じゃ授業ちゃんと受けろよー」とだけ言って去っていった。

 ほんとあの人はよくわからん。

 けどいい人っていうのはよくわかる。

 何であの人独身なんだろうか。

 俺はその謎について無駄に考えた後、めんどくさいので考えることをやめて授業に集中することにした。


 そんでもって授業終了後、俺は海斗と部活へと向かった。

 最初のアピールチャンスだ。

 かっこよく決めないとな。

 俺が主人公になるために。

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