第4話 強気の裏側

 私はずっと舐められたくない一心で生きてきた。


 幼いころは周りよりも体が小さくひ弱で、心配されたり馬鹿にされたりといった幼少期時代を過ごした。心配なんてしなくても生きていけるのに。好きで小さくなっているわけじゃないのに。


 中学生になって周りよりも成長するようになり、女子の中で2、3番目になっても、心配されたくない、馬鹿にされたくないという思いが変わることはなかった。否、変わってくれることはなかった。


ーーー


「はぁ~あっつ」


 今日はまだ4月だというのに日差しが強く日なたに出ると汗がにじんでくる。3月の終わりごろに満開を迎えた桜は既に葉が出始めていて、ある種の風情を感じさせる。


 野球部が練習をしている声が聞こえて、俺は何となくそちらのほうへ足を向ける。


 俺は野球が好きだった。小さいときに父親とキャッチボールをしたことがきっかけで野球を始めて、怪我に苦しみ、野球をやめた。それだけの話だ。だが野球を見ている瞬間がとても好きで、たまにこうしてグラウンドへ足を向けてしまう。


 その途中、水飲み場のところで氷沢の姿を見つけてしまい、少し気まづくなってしまう。ふむ、氷沢はテニス部なのか。まあ見に行きはしないけれども。


 カキン、と音がしてボールが外野まで飛んでいく。すぐに野手がボールをキャッチして、内野に返す。そんなところを遠くから見ていて、俺は不思議とまた野球をやりたい、という気持ちになっていた。単純に上手くなることを目指してずっと努力し続けていた自分が少し懐かしくなったからかもしれない。


「とりあえず今日はもう帰りますかねぇ」


 というが、空腹感が一気にやってきてやりきれなかったので、とりあえず何か食べて帰ろう。


 校門を出て右に曲がる。信号が赤だったので、そのまま右折し学校の外周を回るように歩く。途中にあるテニスコートに氷沢の姿が見えた。まあ、少し見ていくか。


「もう一本! お願いします!」


 どうやらスマッシュの練習をしているらしい。なかなかうまくコートに入らず、その度もう一本、もう一本と何回も取り組んでいる。


 昔の野球をやっていた時の俺に少し重なるところもあって少し懐かしくなるが、何事にも本気で取り組める氷沢の姿を見て俺は少しだけ後ろめたいような、俺も何かに取り組まないといけないような気がした。


☆☆☆


 帰りの電車に乗り、氷沢のことについていろいろと考えてみる。どうしてあそこまで頑張れるのか、どうして逃げたり、抜いたりせずに取り組めるのか。どうして、と思ったところでなんでこんなこと考えてるんだろ、と馬鹿馬鹿しく思う。


 ただ、どれだけ考えても答えを出せそうにない。俺はポケットから携帯を取り出し、音ゲーでもしようかなと思う。でもまた氷沢のことを思い出し、焦りと背徳感のようなものを感じる。どうしようか、と迷っているときに一通のメールが届いた。


「練習、見てたでしょ。ちょっと話したいことがあるんだけど」

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