第3話 委員会と部活
委員会。
「まずは委員長を決めます。やりたい人、いますかー?」
こういうのは長丁場、とりあえず静寂が続くと相場が決まっている。
俺はヒラでいいやー、とりあえず誰か委員長に立候補してくれー、と思って見ていると。
「じゃあ私、委員長やります」
氷沢が立候補した。うーわ、余計に役職着きたくねえ。
「どうしたの、透也くん?なんかすっごい嫌そうな顔してるよ」
思わず顔に出てしまったようだ。とりあえずごまかしておこう。
「まあいろいろあって...ここじゃあれだからまたおいおいね」
夏澄は頬を膨らませて不満を態度に出すが、俺は知らないふりをしておく。
「はいじゃあ副委員長!やりたい人いますか?」
いつの間に司会が変わっていたらしい。氷沢の嫌に響く声が場の空気をガラッと変える。俺はいつの間にか、氷沢に対する嫌味を言う気にはならなくなっていた。
「副委員長やる人、いませんかー?」
ただ、人に働きかけるだけの力は無いようだった。
「どうする?私、早く部活行きたいんだよね~」
「そうだなー、誰か出てくれないかなあ」
みんな早く帰りたい、部活に行きたいというオーラがにじみ出てきている。
「ぅーーーーーーーーー」
唸る。俺も早く終わらせたい。だけどみんなやらない。なら俺が、と言いたいが委員長はあいつ。ううーーーー。
「じゃあ、私が副委員長やるから、透也書記やってよね」
「分かった」
即答。次の瞬間夏澄が立候補する。あたり一帯に安堵の空気が広がる。
「じゃあ次、書記を…」
☆☆☆
「なんで書記にならなかったのよ!」
「だって一年しかなれないっていうから…」
「そんなこと無視しなさいよ! 私なり損じゃないの!」
俺は約束をしたが、普通に書記にはならずヒラになった。まあだから、今怒られているんだが。
「もう、しょうがないんだから」
とりあえず許してくれたようだ。ありがとう。
「っと、こんなことしてる場合じゃねえ! 部活行かねえと!」
「頑張ってね~!」
夏澄は確かバレー部。バレー部は休みだそうだ。羨ましい。
☆☆☆
俺がチャラい格好をしていた理由。俺が、軽音楽部だったからだ。
「再来週ライブあるから! それまでに各バンドオリ曲を完成させておくように」
オリ曲…。とりあえず適当にギターを弾いてみる。こうすると歌詞やメロディーを思い浮かぶことがある。いつもは浮かぶ歌詞ですら、今日はなぜかちっとも思い浮かんでこなかった。最悪の出会い。そして再会。委員会の孤独。なぜか俺は、氷沢のことを考えてしまっていた。
(あいつは…孤独なのかな…)
いつも女子と戯れている姿。連帯して男子を追い詰める暴君の姿。でも俺は、その中に"孤独"が見え隠れしているような気がしてならなかった。
「今度は…友好的に声かけてみようかな…」
嫌がられると分かってても。心を開いてくれないと分かっていても。それでも、なんかそうしないといけないように思えた。
結局その日は歌詞を書けなかった。
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