第14話カオルの魔力

「おれの家、おいで」

この怒っているカオル相手に、ぼくは断るという選択肢はなかった。


カオルの家は一軒家の白い家だ。

静かで冷たい印象を受けた。

それはカオルのたまに見せる冷たい表情と似ていた。

部屋に通され淡い水色のソファーが置いてある。

ドアが閉まるとカオルに後ろから抱きつかれた。

「好きだよ」

うっとりするような優しい声だ。

いつもならぼくも嬉しく、カオルの気持ちに答えただろう。

だがこの時は少しばかりカオルが怖かった。

抱きつかれて、かれこれ30分が経った。

「あの…カオル」

カオルは何も言わない。

長い沈黙の後、ゆっくり口を開いた。

「…すごく、嫌なんだよ」

カオルの声は小さくて聞こにくく、ぼくは耳をすませた。

「レイくんがおれ以外に触れるの…」

リキュールのことを思い出したのか、怒っているのが声から伝わる。

カオルの抱き締める腕が強くなった。

ぼくは肩にあるカオルの髪の毛をなでた。

グリグリとカオルの頭が動いた。

「だけど…許してあげる。

おれしか好きじゃないって言ってくれたの嬉しかったから。

おれと間違えて抱きついたんじゃなかったら、絶対許さなかったけど」

強い怒気を含んでいた。

カオルから強い魔力を感じる。

キラキラした光が二人を囲む。

自分と正反対の力に、ぼくは「うっ」と苦しくなった。

「レイくん」 

カオルは優しくゆっくりと話す。

カオルが放つ魔力が上がっていった。

されるがままのレイジロウに、カオルは受け入れてくれていると勘違いした。

気持ちが高ぶったのか光魔力が更に強くなっていく。

「大好き」

カオルは嬉しそうに、レイジロウの肩に頬ずりをしている。

ぼくは苦しくてそれどころじゃなかった。

光魔法が強くなり、ぼくは苦手な光に溺れるようにカオルの胸に沈んでいく。

息苦しくてピリピリする感じで、麻酔をかけられたように身体が言うことを聞かない。

「…カ、オル」パクパクと魚のように必死で言った。

「レイくん…?」

カオルは訝しげな顔で、レイジロウの顔を覗き込む。

レイジロウのおかしい様子に気づいたカオルは、バッと身体を大袈裟なほど離した。

「う……あ」

ぼくは足の力が抜け、バタッと膝から崩れ落ちた。

「ゲホッ ゴホッ」

ぼくは咽て喉を抑える。

涙目でカオルを睨めつけるように見た。

カオルは顔面蒼白になっていた。

「ごめん」

ぼくはゆっくり身体を立て直した。

まだ痺れが身体に残っていた。

カオルをまた強く睨みつける。

「ごめん…」青くなったユウは何度も同じことを繰り返し言った。

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