第2話可愛い美少年にトラウマを植え付けられた

怖い…!

心臓がバクバクと音をたてる。

身体から冷や汗が吹き出していた。

「そんなに怖がらないでよ」

魔法少年は困ったように笑った。

そしてそっと手を伸ばし、レイジロウの頬に触れようとする。

「触るな…!」

目に涙を溜めながらも、レイジロウはギリッと魔法少年を強く睨みつけていた。

魔法少年は少し驚いた顔をし、触れようとした手は止まった。

だが橙色の髪の少年は笑い、そっとレイジロウの頬をなでる。

レイジロウは少年を怖がり、これ以上強く言えないみたいだ。

怯えながらも頬をなでられている手を受け入れている。

魔法少年の表情は、驚いた顔からとても余裕そうな顔へと変わった。

「やめろ…」

泣きながら怒っている表情のレイジロウに、魔法少年は優しそうな顔で微笑む。

そして思案しているような顔で、レイジロウの顔を覗き込んだ。

橙色の前髪からサファイアのような美しい瞳が覗く。

その瞳がレイジロウを捕える。

魔法少年はレイジロウを、怖がらせないように優しく微笑んだ。

「魔物を懲らしめただけで、何でそんな怖がるのかな?」

魔法少年は本当に分かっていないようだった。

黒髪の少年は声を振り絞り、ガタガタと震えながら、

「ウサギを治して…!」

と震えた声で強く言った。

魔法少年は意味が分からないと言った顔をした。

だが震えて怒っているレイジロウを見て、魔法少年は、

「…分かったよ」

と渋々言った。

ギュッと持っていたウサギは苦しそうにピクピクと動く。

「泣かないで」

魔法少年は心配そうに眉を下げ、落ち着かせるような声を出した。

そしてレイジロウの頬に伝う涙をそっと拭った。

「このウサギは、レイくんを自分の縄張りに連れて行こうとしたんだよ?」

不思議そうな顔で確認のように問う。

「もしかしたらこの魔物に殺されるかもしれなかった…」

ぼくは一瞬恐怖でおののく。

だが見た目は小動物にしか見えないウサギに、血だらけの状態でほっとける訳なかった。

「何でもいいから直せ!」

泣き叫ぶレイジロウに、

「レイくんが言うんだったら…」

と魔法少年は再び落ち着かせるように言った。

そして細く白い人差し指を、血だらけのウサギに向かって振る。

キラキラとした魔法がウサギを囲んでいく。

浮いたウサギはみるみる内に傷が治っていった。

レイジロウの腕にいたはずのウサギは、ピョンと立ちなおった。

良かったと安堵するレイに対し、橙色の髪の魔法少年はニコニコと笑った。

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