第3話 可愛い美少年に囚われる


魔法少年の笑みに、ぼくは意味が解らず、ゾッとした。

恐怖で身体に鳥肌がたった。

「治してあげたよ」

魔法少年は嬉しそうに言う。

悪いことを考えたような、笑みだった。

レイジロウは警戒した表情をしている。

「だからおれから逃げないでくれるよね」

魔法少年は楽しそうに笑った。


ウサギに似た魔物が逃げたのを確認し、レイジロウは魔法少年がいない方向に走った。

だがガバッ!と、後ろから一瞬で抱きつかれた。

「はぁ、レイくんは可愛いね」

魔法少年はうっとりしたように呟く。

長い腕がレイジロウの身体に巻き付いてくる。

「怖かったんだね」

頭をよしよしとなでられた。

「離せ」

レイジロウは嫌そうな声を出した。

「ヤダ」  

中性的な透明感のある声が響く。

キラキラとした大きな水色の瞳の少年が、レイジロウの足元にある水たまりに映った。

レイジロウ目が合い、魔法少年は嬉しそうに笑う。

レイジロウに抱き付く少年は、見た目だけだと中性的な、ただのかわいい子どもだ。

あんな残酷なことをするようには、まったく見えなかった。


レイジロウを抱き締める腕が強くなる。

魔法少年はレイジロウに抱き付き、ホッとし落ち着いた様子だった。

「何であんなことしたんだ…?」

ぼくは恐る恐る聞いた。

「レイくんが連れ去られるかもしれなかった。

もしかしたら殺されたかもしれない…」

ぼくは一瞬恐怖でおののく。

魔法少年の水色の瞳がぱっちり開いた。

言いながらギュウと抱き付く腕が強くなった。

「そういう魔物を殺すのは当然でしょ?」 

大きな水色の瞳が後ろから覗き込んだ。

後ろを少し振り向き魔法少年の顔を見た。

優しく微笑む少年に、ぼくは頷けずにいた。

そして、さっきの恐ろしい魔法少年の姿に、今までみたいに遊べないとわかっていた。

ぼくは魔法少年に抱きしめられているからか、恐怖を感じ取ったからか分からない。

ぼくの心臓は飛び出そうなほど波打っている。

「嬉しいなあ。もうおれから逃げないんだよね」

甘ったるい優しい声。

魔法少年は抱きつきながら、とても嬉しそうに笑っている。

ウサギを痛みつけたことと、ニコニコと無邪気に笑う少年に、大きなギャップを感じた。そして強い恐怖を感じた。

…幼い頃の、軽くトラウマになった昔の話だ。

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