かわいい美少年にトラウマを植えつけられた

怖い美少年

第1話血だらけのうさぎ

「レイくん、遊ぼっ」

魔法少年が無邪気に笑った。 

水色の瞳がキラキラと輝く。

目の前にいる目付きの悪い少年はコクリと頷いた。


黒髪の目つきの悪い少年は、魔法少年の手を持った。

「じゃあ、行くよ」

魔法少年は言い、ビュン!と一瞬で空を飛んでいた。

魔法少年は子どもらしい無邪気な顔で、ぼくと一緒に嬉しそうに飛んでいる。

子どもの頃はこの少年とよく遊んでいた。

ぼくはとても仲の良い親友だと思っていた。


ある日ぼくは、魔法少年そっくりに化けた魔物を、本人と間違え遊んでいた。

それを見た本物の魔法少年は、真っ赤になって怒り魔物に呪文を唱えた。

目の前の魔法少年そっくりの魔物は苦しみ始める。

白目を向き煙が出てきた。

燃えていくような人の姿に、ぼくは衝撃を覚えた。

そしてシュウウと煙と共にウサギの姿に戻った。

焼けていくような姿と、白目を向いてピクピクと痙攣しているウサギの姿に、ぼくは絶句した。

魔法少年は過呼吸気味になっているぼくに気づいた。

そしてぼくにも魔法をかける。

目の前が鮮やかな濃い紫色のブルーベリー畑に切り替わった。

「何だ…?」

レイジロウは目つきの悪い目を細め、目を凝らす。

しばらくたった後、目の前がさっきの色とりどりの街の中に戻った。

「…?」

ぼくは自分の身に何が起こったのか解らず、呆然とした。

シュッと橙色の髪の魔法少年が現れる。

「よし、じゃあ遊ぼ」

魔法少年はいつものように無邪気に笑った。

水色の瞳が嬉しそうに、レイジロウを見る。

レイジロウは真っ青になって立ち竦んでいる。


ぼくは、この少年から離れたくても、足がすくんで動かなかった。

ウサギを想いポロポロと涙がこぼれた。

「どうして泣くの?泣かないで」

落ちる涙を魔法少年は優しく拭おうと、ぼくに手を伸ばす。

ビクッと身体が跳ねた。

「怖い…?おれ」 

魔法少年は少し不安がるように言った。

「ウ…ウサギは?」

ぼくは涙をこぼし、微かに震えながら聞いた。

少年は思案するような顔をし「逃したよ」と笑った。

嘘だ。直感がそう言った。

「ウサギはどこ…?」

酷く悲しんでいるぼくに対し、魔法少年は「ハア」とため息をついた。

そして人差し指をクイッと動かした。

すると血だらけのウサギが空中に現れる。

傷だらけにもなっており、ピクピクと痙攣をおこしていた。 

驚いて引きつっているぼくを見て、魔法少年は端正な顔を不思議そうに傾けた。

「この魔物はレイくんを、魔物の洞窟におびき寄せようとしたんだよ?」

いつもと話の調子が変わらない。

ぼくはゆっくりと首を動かし、真っ青な顔を魔法少年の方に向けた。 

魔法少年はいつものように微笑んでいる。

ぼくは、ここから一刻も早く離れたかった。


レイジロウは、空中に浮かんでいるウサギを抱き上げ走った。

「どこに行くの?」

後ろから魔法少年の中性的な声がする。

抱いたウサギはまだ温かい。血がドロリと流れてきた。

レイジロウは息切れしながらも必死で逃げている。

「どこに行くかって聞いてるんだけど」

瞬間移動した魔法少年が目の前に現れた。

レイジロウは「ひっ」と小さな悲鳴をあげた。

魔法少年は微笑んでいる。

だが声から怒っているのが伝わってきた。

レイジロウの背後にドカン!と音をたて、壁が現れた。

大きな音に驚く。

魔法少年は人差し指を壁の方を指していた。

シュウウと指から煙が出ている。

「おれから離れないでって言ったよね?」

魔法少年はニコッと笑う。

ぼくは逃げ道を探すため、辺りを見回した。

魔法少年はゆっくり一歩一歩と、ぼくに近づいて来る。

ぼくは後ずさり、背中にトンッと魔法少年が作り出した壁が当たった。

「レイくん、おれから離れたら危ないって言ったでしょ?」

壁に手を当て至近距離で、優しくゆっくりと諭される。

魔法少年の水色の大きな瞳が揺れた。

今にも泣き出しそうなレイジロウは、顔を青くしカタカタと震えていた。

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