1章5話『進路申請書提出』
カイエン「今日集まってもらったのはほかでもない。」
カイエンによる緊急集会で、魔法学校の運営規則の変化が告げられた。
話の骨子は、日常的に、学生が結界の見回りをすることになったということ。また、来年度から、魔獣との戦闘に関する授業が緊急で必修になったということ。
しかし、
緊急集会が始まる前に、カナリ直々に進路申請書提出の催促があった。
襲撃のせいですっかり忘れていたが、おかげで、朝の集会の時間はことごとく進路について悩むための時間となった。
そもそも、なぜこれほど決まらなかったのだろう?
進路希望は何ですかと言われたところで、頭の中を掻きまわしても、これといって希望とよべるものは見つからなかった。
決めたことはあった。それは、不安定な世界を魔法使いとして生きていくことだ。だだし、これは望みとは言えない。
なぜなら、仕方なく決めただけだから。極めて消極的な決定だからだ。
つまり、欠如しているのは、そうでないもの。なにかしたいと思ったなどといったこと。積極的なにか。これを望みと呼ぼう。
この定義に従えば、昨日の午後までの
けれども、昨日の襲撃を経た今は違う。
昨日の襲撃で、学生の一割が命を落としたし、一割は行方不明。今後発見されても、生きてではないだろうし、未だ目を覚まさない学生は二割以上だ。この数字が襲撃の恐ろしさを物語っている。
これからわかることは、結界で守られている中であっても、それが壊れ、大量の魔獣が魔法学校に侵入すれば、大惨事になること。
おそらく、外の世界も同じかそれ以上だろう。
さらに、魔獣オタクのあずさによれば、昨日大量に侵入してきたあの大蛇は最も弱い部類らしい。
あれが最弱の魔獣なら、魔獣とはいったい何者なのだろうか。そんなものを相手に毎日を過ごさないといけないとすれば、命がいくつあっても足りないだろう。
まだ、戦えなくとも、逃げ隠れしながら生きている方がよさそうだ。
実際、昨日の襲撃を俺は生き抜いた。アミテロス島に引きこもっている分には、安全なんじゃないのか?
よし。これで魔物部に入学しない理由ができた。
でもそれだけじゃない。
黒ローブに追詰められたとき、“死にたくない”と思った。それは、生きたいということだ。
なぜかは理解できなかったが、それは本能的な欲求以上のものだった。
確かに俺は、生きたい。生きていたい。
では、理学部と魔物部どちらがその意味で安全かと言えば、理学部という結論になった。
やはり理学部だろうか。
しかしそれだけでもなかった。
あの黒ローブの正体が多少なりとも気になるのなら、それも望みだ。
そして、文字通りの生命の危機が去った後は、
間違いなく俺は、黒ローブの正体を確かめたいんだ。
気付けば既に、生きていたいことと、黒ローブの正体を確かめたいことの、二つの望みをもっていた。
さて、どちらを優先しよう。
生きていても、何も知らないままというのは御免だ。黒ローブの正体を確かめたい。
じゃあ逆に、黒ローブの正体がわかれば、生きいなくとも構わないということだろうか?
それはだめだ。その後も、生きていたい。
このとき、
俺が望むべきは、黒ローブの正体を確かめた魔法使いとして生きていくことだ。少なくとも、正体を確かめるまでは生きていることは必要だし、矛盾はないはずだ。
屁理屈だろうか?いや、違う。このぐらいの欲は張ってやる。
なら、ラルタロス魔法学校後部魔物部に進学し、魔物との戦闘を生き延びて、あの黒ローブの正体を確かめた魔法使いとして俺は生きていく。
黒ローブの目的が
けれども、望んだきっかけが意図的に作られたものだと知っていてもなお、その正体を知りたかったのだ。
それに、黒ローブには別の期待もあった。
「君は僕を知らないというのかい。」や「君は、恩知らずなうえに忘れっぽいということか。あきれたもんだ。」と黒ローブは言った。
黒ローブはどうやら
思い当たるのは、
俺自身の過去。それはあきらめながらも、今までずっと知りたかったことだ。黒ローブを捕まえればわかるかもしれない。
約15分後、緊急集会は終わった。
それから、朝食を取り、結界を塞ぎに行った5人はカイエン和尚と面談になった。
もし、黒ローブがつかまってしまえば、黒ローブの正体を聞くことができる可能性は低くなるだろう。
自ら真実を話すかといえば、この可能性も低そうだ。言ったとしても、機密事項はとなってその内容を知ることはできないだろう。
それどころか、本当に顔が似ているとなれば、
あの黒ローブは捕まってはいけない。だから、黒ローブの情報は誰にも言うべきじゃない。
知る限りの情報を伝えないことは魔法学校への反逆行為なのではないのか。
構わない。俺は俺の望むことをするまでさ。
面談の最中、中でも黒ローブと戦闘した
しかし、
カイエンとの面接が終わると午前の作業が始まるが、その前に
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