図書館
少年は丁度20の青年となった。
現在、有名大学を首席で合格し、そのまま学力順位をキープしている。
青年は今、古い論文を探すために地下の書庫に来ている。
地下では沢山の重要書物が腐らないよう厳重に整備されており、ボタンを押せば、本棚が動く仕組みになっている。
青年はボタンを押し、自分が取りに行きたい本棚への道を開く。
何冊も何冊も並ぶ本の中から厳選して、今読みたいものだけを取り出す。
本棚の間から抜け出ると、またボタンを押して、本棚をもとに戻す。
使った本棚はきちんと元に戻す。
これは大学一年生の際、ここの管理者から言われたことだった。
彼は手に持つ書物を満足げに地下室を後にした。
地下の書庫に来る人はほとんどおらず、とても静かだ。
地上に上がり、自習用に設けられた椅子に腰掛け、本を開く。
何人かが地下へ出入りするのを目の端で捉えた。
しばらく集中していると、図書館だというのにざわついていることに少し違和感を覚えた。
何名かの教授が図書館へ入ってくる。
なんだなんだと様子を伺う。
「すみませんが、生徒さんは図書館から出ていただけますか?」
図書館の事務の方にそう声をかけられた。
青年は渋々、本を持って、図書館の外へ出た。
また、事が収まったら図書館へ入るつもりであったので出入り口で収まるのを待っていた。
青年としては再来年の卒業論文のためにも多くの論文に目を通しておきたかった。
まだまだ読まなければならない書物はたくさんある。
書物を読んではどんな研究をしようかと考えるのがとても楽しかった。
「急に追い出して…何事だよ…」
次々と図書館から出てくる人が文句を垂れる。
図書館には思いのほか人がいたようだった。
多くの人がこの図書館内での騒動を噂していた。
「不審者でもいたんじゃない?」
「でも、先生たちは地下へ行ったよ」
「何か盗まれたとか?」
「館内なら見てもオッケーでしょ??」
色んな話を耳にする。
実際、青年の手元には地下の書物があるが館内で読んでいたため、盗みにはならない。
急に追い出されない限り、彼も受付で借りる手続きをするつもりであった。
「なんかーどれもちがうっぽいよ」
最後に出てきた子がこんなことを言い始めた。
「なんかー…地下の本棚で人が挟まってたっぽい…せんせー言ってたじゃん。挟まったら死ぬって…」
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