第3話 新しい家族

「えっ?」


 お久しぶりです⋯⋯お兄さん?


「バカ兄貴この娘知ってんの? まさか痴漢や覗きをして示談に来たとか言わないでよね」

「んなわけないだろ!」


 この愚妹は日頃から俺のことどう見ているかがよくわかった。


 それにしてもこの娘⋯⋯どこかで見たことがある気が⋯⋯。

 クリーム色の長い髪を左右に結んで、ぱっちりとした大きい目で肌は色白で⋯⋯あっ! わかった!


「アイリちゃん?」

「は、はい。そうです」


 マジか! 5年ぶりくらいにあったけどメチャクチャ可愛くなっているぞ。しかも背が低いのに胸の大きさが半端ない。ロリ巨乳ってやつだ。


「えっ? 何? 兄貴やっぱりこの娘知ってるの?」

「バカ! お前も会ったことあるだろ? 親戚のアイリちゃんだ」


 俺が答えを出すとアイリちゃんは微笑みながら頷いた。


「はい⋯⋯アイリです」


 アストルムはこの大陸の西側にあり、アイリちゃんが住んでいるカーデスの街は南東に位置する。昔は年に1回くらい会っていたが最近はご無沙汰だった。


「うっそ! これがアイアイ⁉️ 私とよくボール遊びをした?」

「はい、そのアイアイです」

「バカ兄貴に森で変な実を食べされられてお腹を壊し、草むらでうんちをしてた?」

「は⋯⋯はい」

「そしてその腹いせなのかおままごとの泥団子料理をバカ兄貴に食べさせて病院送りにした?」

「違います! あの時はお兄さんに私の料理を食べてもらいたかっただけです! セレナさん意地悪な思い出を言わないで下さい!」


 ああ⋯⋯確かにそんなことがあったな。あの時はマジで死ぬかと思った。

 それにしても俺の中の思い出では、アイリちゃんは泣いてばかりいたな。あれ? 今になって考えるとアイリちゃんを泣かせた原因ってほぼ俺にあるような気がしてきた。

 もしかして俺って昔はけっこうひどい奴だったとか。


「それにしても昔と全然違うねえ、アイアイめっちゃ成長したじゃん」

「そんなことないですよ⋯⋯身長だって小さい方ですし」

「いや身長じゃなくて胸が」

「む、胸ですかぁ!」


 セレナのいう通り昔は貧乳だった。それがたった5年でここまで育つとは⋯⋯どんな魔法やスキルを使ったんだ。


「バカ兄貴は巨乳が好きだからアイアイ気をつけなよ」


 確かにこれは目を奪われるほどの大きさだ。


 セレナの言葉を聞いて俺は思わずアイリちゃんの胸を見てしまう。


「お兄さん⋯⋯エッチです」


 くっ! 胸を隠し、恥じらいながらエッチと言われる。この光景に俺は萌えてしまう。


「はいはい。あんた達バカなこと言ってないで」


 突然玄関から俺やセレナの母親が現れ声をかけてきた。


「えっ? 何? ママはアイアイが来ること知ってた?」

「そりゃ知ってたわよ! マリーから聞いてたからね」


 叔母さんから? マリーさんは母さんの妹だ。俺達にはアイリちゃんが来ることを知らせずサプライズ的なことをしたかったのだろうか。


「とりあえずリビングに行くわよ」


 俺達は母さんの指示に従って、リビングへと向かいソファーに腰を掛ける。


「トウヤ、セレナ⋯⋯あなた達に重要なお話があります」

「えっ? 何々? おこづかい上げてくれるの?」


 母さんが真剣な表情をしているのに、セレナがアホなことを言い出す。

 仮にも身内として今のセレナの言葉をアイリちゃんに聞かれて俺は恥ずかしくなる。

 それは母さんも同じだったようで自分の頭を押さえていた。


「そんなわけないでしょ! あんた学園でも不真面目に過ごしているって聞いてるんだからね! むしろこづかい減らしたくなったわ」

「なんでよ! セレナ真面目に生きてるよ!」


 お前の真面目は世間にとって不真面目だと突っ込みたかったが、アイリちゃんもいるし、母さんの話もあるので俺は黙って見ている。


「バカな話しは置いといて⋯⋯今日からアイリちゃんはうちで預かることになったから」

「マジで! 嘘⁉️ 超うれしいんだけど。何ならこのバカ兄貴と交換でもいいよ」

「何言ってるんだお前は⋯⋯交換ならアイリちゃんとセレナだろ。俺も兄をバカ呼ばわりするお前より、可愛くて素直なアイリちゃんの方がいいわ!」


 それに胸も大きいしな。


「お兄さん⋯⋯可愛いなんてそんな⋯⋯」


 アイリちゃんは顔を真っ赤にして、両手を顔に当てて照れている。


 うん、可愛いな。このトレードは何としても実現しよう。


「はいはいあなた達ケンカしないで。今カーデスの方面は魔物が多いみたいでね。マリーが心配になってアイリちゃんをうちに預けることにしたんだ」


 確かに最近魔物が活発に動いているとの噂は聞いてたけど本当だったんだ。


「マリーも旦那も領主に仕えている身だから、何かあった時に簡単に抜けだすことができないからね。あんた達アイリちゃんがうちに来ることに反対しないだろ」

「私は賛成~」

「俺も賛成だ」

「お兄さん⋯⋯セレナさん⋯⋯」


 アイリちゃんは俺とセレナに賛成意見を聞いて安心してのか、ほっとため息をつく。


「ただしセレナ!」

「何? ママ」

「アイリちゃんはあんたと違って真面目なんだからバカを移さないように」

「バ、バカってママひどいよぅ」


 くっくっく⋯⋯セレナの奴母さんに言われてやんの。人をバカ兄貴呼ばわりするからだ。


「そしてトウヤ!」

「えっ? 俺?」

「あんたはアイリちゃんに手を出すんじゃないよ! もしそんなことになったらマリーになんて言えば⋯⋯」

「いやいや母さん⋯⋯さすがに親戚には手を出さないよ」

「けど年の半分は彼女がほしいって言ってるだろ。こんな可愛い娘を目の前にしてあんたが正気でいられるかどうか」

「そこは母さんの息子を信用しろ」

「でもあんたが妹物のエッチな本を持ってること母さん知ってるんだからね」


 マジか! 最も言ってほしくないタイミングで暴露しやがった!


「お、お兄さん⋯⋯」


 アイリちゃんも目を細めて疑わしき視線を俺の方に向けている。


「えっ? バカ兄貴って私狙いだったの? 超キモいんですけど」

「寝言は寝て言え! 誰がお前ごときを狙うか!」


 この愚妹はありえないことを言って来やがった。お前に欲情するなんて死んでもありえねえ。


「はいはい、だからケンカはやめなさい。とりあえずあんたのことは信じてあげるから私がマリーに土下座するよなことはさせないでよ」

「わかってるよ」


 と言いつつアイリちゃんはメチャクチャ可愛くなってるから、もし迫られる状況とかになったら断る自信がない。


「おば様、お兄さん、セレナさん⋯⋯これからお世話になります」


 こうして突然の出来事だったが、我が家に新たな家族が誕生することになった。

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