おまけのボツ展開2(これもプロット状態です)



Lv1.対コボルト戦 草原のレベル上げ




 刃のこぼれた剣とヘコんだ丸盾を両手に持った白い骨のスケルトンを粉砕して王国周辺の草原を歩くエタルが次に遭遇したのはコボルトだった。

 コボルト。人間より少しだけ背が低めの熊型のD0級のモンスターである。二足歩行で歩き袈裟懸けのボロ布を着て尚且つ熊のような手でありながら五本指であり道具まで使うことができるこのモンスターは今回、手に短剣ダガーを持っている。

 短剣を持った熊のモンスター。初めて出会うとそれなりに恐怖を感じるものだが今のエタルは簡単に剣で斬り伏せた。

 エタルがダガーを持ったコボルトとすれ違うとコボルトはすぐさま倒れ込んで倒された。しかし経験値や資金が手に入ることはない。

 エタルは軽くため息を吐きながら倒れたコボルトを置いて先を歩いた。特に目的地があるわけではない。どうせ日が暮れるまでに出発したオワリーの町に戻るのだ。

 学校を卒業したエタルは日がな一日、セカイラン王国の西にあるオワリーの町で草原を彷徨うか郊外の採掘場で鉱石を採掘するかの暇つぶしをしている。要するに弱い者いじめか石ころ集めに興じているのだ。その他にもやろうと思えば釣りでも菜園でも他のことはできるのだが、今のエタルには全く興味は持てなかった。


「エタル。また来たよ」


 シュレディが言うと草原を歩いていたエタルの前にまたコボルトが現われた。今度現われたコボルトは砂色の毛並みで黄色の襤褸切れを袈裟懸けに着ている。手には剣ほどではないが刀身の長い短剣を持っていた。およそ剣の半分といったところだろうか。その長いダガーを持ってエタルに向けて構えていた。


 エタルはそのコボルトの様子を見ると、しばらく考え込んだ。


 コボルトの対処は比較的簡単だ。先に攻撃するか、遅い攻撃を躱して攻撃するかの二択である。つまり攻撃すれば必ず勝てるモンスターなのだが勝ったところで得られるモノは何も無い。本当に何も無いのである。倒した身体を見分した所で素材になるような体ではないし、手に持っている武器にしたところで町で売却しても5ルダにさえならない物が大半。ごくまれにドワーフが造った貴重な業物を所持している場合もあるが、それはコボルトに限ったことではないし、殆どのドワーフは武器を渡す相手を厳選している。主な対象相手を言えばD2級からの本格的な大型モンスターか、親しくなった高ランクの順位戦者ランカーぐらいだろう。ドワーフについてはまた実際に会った時に語るとして。

現在、目の前で相手にしているコボルトというモンスターは、それだけ非常に戦闘時間を無駄に感じてしまう魔物だった。

ちなみにこの世界では、人間や魔物に他の生物も食事をする事はない。寝れば体力は回復するし、傷も時間が経てば回復する。唯一この世界で何かを口に入れる時があるとすれば飲み物ぐらいだろう。飲むことはあっても食べる事はない。その為、倒したコボルトの肉を食べてみようという発想も発生しない。物を食べなくとも生きていけれるこの世界ではコボルトぐらいのモンスターを倒したところで本当に価値は何もないのだった。


「お前、逃げない?」


 エタルが怪訝そうに、長めの短剣を向けてくるコボルトに語り掛ける。残念ながら人間の言葉が通じるのは主にD2級のモンスターからである。それより下のD1級からD0級のモンスターには言葉で語り掛けても返ってくるのは棍棒か刃物による凶器の応酬である。現に今もエタルが語り掛けてしまったので攻撃と勘違いしたコボルトの反撃を避けた瞬間に斬り伏せてしまった。


「時々、逃げないヤツがいるんだよな」


 モンスターは相手との実力差に極端な開きがあると確認すると逃走することが多くなる。最近ではエタルもオワリーの町や王国周辺の草原を徘徊していてモンスターと遭遇する確率がめっきりと減ってしまった。要はモンスターの側も弱い者いじめが大好きなのだろう。生き物とは得てして自分の実力が通じる相手にしか勝負を挑めない臆病な存在だった。


 エタルとしてもそれを否定するつもりは毛頭ない。エタルもこうして実力不相応に低等級のモンスターが出現する地域を狙って散策している。それはもっぱら暇つぶしの為だったが、いざ低レベルのモンスターが現われるとやはり逃げてくれとも思うのだった。


「そんなにモンスターと会うことがイヤなら外を歩かなきゃいいのに」


 正論を言う子猫の言葉は敢えて無視しておくことにした。

 エタルにはエタルのやり方というものがある





 レベル上げはレベル上げにはならない。

 草原を歩く12歳の少年のエタルにはそれが分かっている。場所はセカイラン王国周辺の草原地域一帯。



拠点にしているオワリーの町がモンスターたちの襲撃を受けた。


滞在していたオワリーの町でトロールの襲撃を受けた。

通りの真ん中に現われた巨体のトロールが振りかぶった棍棒による攻撃を剣で受けて、魔法使いの格好をした少年のエタルは大きく弾き飛ばされると地面に着地をして魔法陣を展開させる。


転回サリス


 自転する球体型の魔法陣を周囲に展開しながら剣をトロールに向ける。

 D2級の魔物。身の丈が民家の二階ほどはある巨躯で

 このモンスターを倒せば次のD2級のモンスターがひしめく地域エリアに足を進める事ができる。



 魔法はこの世界ではそれほど大きな力を持たない。



 王国から西に30キロ離れた所にあるオワリーの町を目指していた少年のエタルは広がる草原の丘の斜面で鉄製の棍棒を持つゴブリンと出会った。


転回サリス


 呪文を唱えて発動させた光学の魔法陣に手を入れると、その中からどこの店でも売られている鉄の剣を引き抜いて、紫色の体をしたゴブリンから目を離さずに剣の切っ先を奥に向けながら構えた。するとエタルと同時に身構えたゴブリンもいつでも攻撃に対処できるように姿勢を低くして様子を伺っている。


「エタル。あのゴブリンが持ってる棍棒」

「ああ。ドワーフ製だな」


 肩に乗った白い仔猫のシュレディの言葉にエタルは頷く。

 ドワーフ。森や洞窟の奥深くで鍛冶を営んでいる事が多い屈強な暗がりの住人だ。そのドワーフが造る武器や防具は使い勝手が良く、人間社会の間でも高値で取引されている。


「ゴブリンにも持たせてるのか。まったく」


 この世界のゴブリンは、片手用の金棒と丸い盾を持ち金属製の胸当てをして、その下に擦り切れた布の服を着ている成人並みの肉体を持った小物のモンスターだが言葉は喋れず、単独で行動する事を好む非常に対処のしやすいモンスターでもある。ここから20キロほど離れた王国から旅立ったばかりの初心者ならば経験値を積むにはうってつけの相手だろう。

 そう思ったエタルは、怯むゴブリンの様子に気付くと素早く距離を詰めて剣を振り下ろすと、防御してきた盾ごとゴブリンを斬り捨てて簡単に地面に倒れ込こませた。


「仕留めたの?」

「寝てるだけだろ」


 草原の中で一瞬にして倒してしまったゴブリンを一瞥して魔法使いの格好をしたエタルは急いで先を歩きだす。

エタルの剣は、敵を斬っても痛みは発生させるが殺しはしない独特の剣だった。その為、今倒れ込んだゴブリンもしばらくすれば目を覚まして次に遭遇した人間の目の前に立ち塞がると今の事も忘れて戦闘を始めるに違いない。


「モンスターを殺しても金が手に入るわけじゃないからな」


 肩に乗る白い仔猫に言い聞かせてエタルは背後で倒れているゴブリンに目を向ける。モンスターは有害だが倒したところで地球のRPGのように金を落としてくれるわけではない。身に着けていた装備品を剥ぐことはできるが、重いしカサ張るので身軽さを信条とするエタルはあまりした事がない。しかも、それさえ無い動物のモンスターの場合であれば体の部位を切り取って売り買いするぐらいしかないのだが、実はそれもこの世界ではあまり意味の無いことだった。


「だいたいモンスターって死なないんだよね」


 肩に乗っているシュレディが、今度は白い骨に剣と盾を両手に持ったスケルトンが立ち塞がったのを見て呆れている。


「だから、こうやってイチイチ倒すんだろ」


 魔法使いの格好をしたエタルが手に構えた剣を横へ振り斬って、白い人骨に毛皮の腰巻が巻かれただけのスケルトンを粉砕すると、関節の外れた人骨を四方八方に飛び散らせてしまう。


「このスケルトンの剣や盾はドワーフ製じゃないね」

「そこらに落ちてる使い捨ての剣だろうな」


 アンデッドのスケルトンは昼間から辺りを彷徨っているために道端に落ちている刃こぼれした武器やへこんだ盾を持つ習性がある。その為、何体倒しても金銭を得られることは皆無といってよかった。


「またお金が貰えなかった」

「野生動物を倒して金が貰えるか? それと同じだろ」

「骨じゃ売れないしね」

「スケルトンの骨は殆ど磁石だからな」


スケルトンの骨は散らばっても時間が経てばまた一点に集まり始めて、元通りの身体に戻ってしまう。例え骨の一部を持ち帰ったとしても、その骨を追い掛けて残りの骨が弾丸のように飛んでくるので、アンデッドの対処方法は粉砕して逃げろが最善の手段だった。


「ところでボクたちが目指している町はまだなの?」


 肩に乗るシュレディが言うとエタルは草原の彼方に見える森を指差した。


「あの森を抜けた先にある」

「モンスター多そう」


 子猫のシュレディがガックリと顔を落とし込んだので、エタルも乾いた笑いで反応してしまった。エタルが今朝出発した王国、セカイラン王国の周辺で出没するモンスターは概ね先程のゴブリン、スケルトンに加えて、袈裟懸けの布を着た熊のような人型のモンスターであるコボルトの三体しか出現しない。それはあの深そうな森でも例外ではない。ただし、森の中では出現する種類こそ大きな差は見られないが、それでも一度に遭遇する数では大きな違いが出てくる事だけは確かだった。


「あ、コボルト」


 言っているそばから三種類のモンスターの最後の一体であるコボルトが現われた。ボロボロの布を袈裟懸けに着て、手には短剣を持っている熊の姿をした五本指を持つ二足歩行のモンスターだ。

 エタルはそのコボルトをあっさりと距離を詰めて斬り捨てると簡単に地面に倒れ込ませた。


「これで全種類、制覇だね」




自分の持つ剣を消した。

自転する光学の魔法陣から取り出した武器はエタルが必要ないと感じたらすぐに消し去ることのできる即席の装備だった。



草原の先に見える森を目指した。あの森の向こうにいま目指しているオワリーの町はある。





 王国から西に30キロ離れたオワリーの町の郊外にある採掘場の一角で鉄のツルハシを振るうエタルは、飛び散った青い鉱石のカケラがコロコロと転がるのも構わずに採掘を続けた。


「これでどれくらいするの?」


 足元から見上げてくる子猫を無視してエタルはツルハシを振り続ける。


「ねぇ。これでどれくらいになるのって聞いてるんだけど」

「300」


 300というのは300ルダという意味だ。組まれた足場に転がった青い鉱石を全て売却して、やっと手に入ると思われるおおよその日銭の金額。

汚れてもいいほつれた魔術師の服を着たまま鉄のツルハシを振るうエタルは、ここで毎日毎日、鉱石を掘っていた。赤、青、黄という用途によって三種類に分けられるありふれた鉱石を排出するこの採掘場は、戦闘を生業としないエタルにとっては唯一の仕事場だった。


「これだけ掘って、たったの300」


 ツルハシを断層に向けて振るうエタルの足元でため息を吐く白い子猫のシュレディは積み上がっていく青い鉱石のカケラに小さい鼻を近づけると、クンクンと臭いを嗅いで顔を顰めた。


アイテム掘りスコッパーなんて今どき流行らないよ」


 子猫の言葉をエタルは聞かないようにした。その代わりに黙々と黒い先端と木の柄で拵えられたツルハシを振るって鉱石を掘り続ける。


「青い鉱石が道具アイテム用で。黄色い鉱石が魔法マジック用で。赤い鉱石が装具用に使われるんだっけ」


 手持無沙汰なのか白ネコのシュレディが、エタルの脇で寝転ぶと背を丸めて自分の長い尻尾とじゃれ合い出した。


「そんなところで遊んでると鉱石に当たるぞ」

「その確率は十分の一。イテッ」


 言ったそばから被弾している。エタルが巻き散らしている鉱石の一つカケラがシュレディの小さな額に当たると子猫もバタバタと大袈裟に悶絶を始めたので、少年もツルハシを振るのをやめて高い足場から左手に覗くオワリーの街を見下ろした。


「鉱石を掘ってれば額は少なくてもお金は確実に貯まる。それのどこがいけないんだ」


 地面に突いたツルハシを杖代わりにして顎を乗せながら、汗を流しているエタルは手前の森から地平線まで続くオワリーの町並みを眺める。


「堅実なことはいいことだと思うけど、やっぱり夢見がちな子供のすることじゃないよね」


 子猫の言うことがイチイチ癪に障る。


「じゃあ、どうすればいいんだ」

「冒険でしょ」


 子猫の言葉にエタルは舌打ちをする。


「冒険ってなにをするんだよ」

「冒険は冒険でしょ。仲間を集めたり、モンスターと戦ったり、貴重なアイテムを集めたり、知らない場所を探検したり、依頼を受けて誰かを助けたり、そういうのって憧れないの?」

「勧誘、暴力、窃盗、不法侵入に不当請求。全部犯罪だな」

「……なんでそこまで悪い方向で考えるワケ?」

「冒険って言うのはすべて悪事だ」

「エタル。そんなこと言ってると何も出来ないよ」

「だから、こうやって大人しく採掘してるだろう」


 地道に断層から石屑を掘って生計をやりくりする毎日。


「力は持ってるのに使わないなんて勿体ないじゃないか」

「力を振るったら壊れる物まで出てきて目立つだろうが」


 エタルはそれが怖かった。

 力を振るえば嫌でも注目は集まる。注目が集まれば知名度も高くなる。しかしそれは同時にそれだけの自由度もなくなるという事だった。好きな時に採掘をし、好きな時に採取をして、好きな時に釣りや買い物をしながら自由気ままに生きていく。今のエタルはこの好き勝手にできる生活が非常に気に入っていた。


「でも、そういうワケにも行かなくなったかなぁ」


 切り立った崖に沿って組まれた高い足場からエタルと共に町並みを眺めていたシュレディが目を鋭くさせて遠くを見ている。


「爆発するよ」


 言葉通り、町の地平線の彼方で爆発を思わせる黒い煙が上がった。


「なんだ? 転回サリス


 エタルが魔法陣を展開させて画面を町並みに重ねて表示させる。光学の魔法陣の中では町の詳細な映像の上から光学の罫線が重なって数値を表示させていた。


「数は九つ? モンスターの襲撃か」


 モンスターによる襲撃。それ自体は特に珍しいことではないが、問題は同時に侵入してきた魔物の数だった。通常、モンスターの襲撃は一度につき一体が殆どである。そらが今回は九体同時。これはどう考えても群れで襲撃していることが明白だった。


「マズいよ。数がさらに増えた。合計12」


 遠くを見つめているシュレディの声でエタルは更に驚く。

 一度に襲撃してきたモンスターの数が瞬く間に12に達した。これは完全に計画的な襲撃である。しかもどこかの大規模な騎士団でも壊滅させようとする強い意思を感じさせるほどの。


「どうするの? エタル」

「とにかく襲撃を止める。街を襲撃してくるってことはここのモンスターじゃない。ここより遥か北にある地域エリアから来たD2級のモンスターだ。しかもそれが12体」


 このまま放置すれば、その中の一体が遅くともあと数分以内に町の中心部へと到達し暴れ回る。


「足の速いヤツを止める。急ぐぞ」


 転回サリスと再び唱えて、球体型の魔法陣を周囲へ展開させる。定規の目盛りのような光学の罫線が幾重にも展開して周囲に数々の数値を表示させる。

 前面をレンズのように丸めて回転している魔法陣が出現すると熱を帯びだした。熱を帯びて風を巻き起こし、裾の綻びたエタルの魔術師用のマントをはためかせて出力を上昇させていく。


機動魔法陣アジストソーサー、出力40%。回転係数六千。敵間距離1.4。シュレディ」

「いつでもいいよ。エタル」


 エタルの足から腰へと駆けのぼって肩にしがみついた白い子猫のシュレディが爪を立てて頷く。


「しっかり捕まってろ。戦闘は6秒後だ」


 1.4キロメートルの距離をわずか6秒で瞬時に詰めて接敵する。


発進トベ


 エタルの言葉で、採掘場の足場から放たれた閃光が、町の中心部へと高速で侵攻している最も速い影を捉えた。




Lv1.対トロール戦



 採掘場の木組みの足場から一直線にオワリ―の町を突き抜けると、最も侵入速度が早い一体に目星をつけて、小型の魔法陣から鉄の剣を取り出すとすかさず振り抜いて激しい衝突音と衝撃と共に巨大な影を弾き飛ばすと、自分も大きく吹き飛ばされながら辛くも侵攻は止めさせる事ができた。


 柄を握る手元に今も残っている衝撃。湧き立つ白い煙と衝突の余韻が波紋となって静かに伝わる空間の中で、肩に白猫のシュレディを乗せたエタルは地面に着地して正面へと弾き飛ばした相手の姿を確認しようとしている。


 エタルの見つめる視線の先。その先で白い煙が晴れだした中から巨大な影がその姿を現した。


「ト、トロール」


 剣を握るエタルの顔が険しくなる。

 晴れていく煙の中から立ち上がったモンスターはトロールだった。緑色をした屈強な肉体カラダ。血管が浮き出ている全力の筋骨。身に着けている毛皮の腰巻以外は全て丸裸という肉弾系の人型モンスターは、ゆらりと立つ姿勢から既に人の域を逸脱しており美しく背を反った肉体は鍛えた究極美を際限なく解き放っていた。


「……なんだ。アイツだと思ったら違うのか」


 図太い棍棒を持ち、ユラリと達人のように一歩を確かに踏み抜いて近づく禿げ頭のトロールが小さい子供のエタルを見て言う。

 緑色の顔から放たれる鋭い視線が、威圧感を放って鈍重な棍棒を肩に担いで地面を振動させた。


「エタル。こいつ」

「ああ。わかってる」


 巨大モンスターであるトロールと対峙して無傷で済む人間は既にこの町には滞在していない。そんな事ができる人間であれば次の町を目指し、より力のあるモンスターを求めて旅に出るのが通例だった。

 それほど誰もが恐れおののく、民家の二階ほどにも届く七メートル超の巨大な体躯が、一メートルと少ししかない子供の身長のエタルを見下ろしている。

 担いだ棍棒をいつでも振り下ろせる体勢でエタルに一歩ずつ近づき、振り下ろす隙を伺っている。


転回サリス

「魔法陣だと?」


 エタルが剣の刀身に発生させた多重の小型魔法陣を見て、緑色の巨躯カラダのトロールが声を出して驚く。


「魔法使いか。それでこのオレの体をあれだけ遠くに吹き飛ばしたのかっ?」


 目の前の少年に興味が湧いたトロールが腕の筋肉に力を込めた。

これで通常攻撃。


 子供だろうが立ちはだかったのならモンスターは襲いにかかる。




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