おまけtake

おまけのボツ展開(ほぼプロット状態)




 魔法使いの少年エタル・ヴリザードは白い仔猫のシュレディを肩に乗せて、モンスター達と睨み合っていた。二本足で立つ熊のモンスターのコボルトと白い骸骨のスケルトン。そして金棒を持った紫色の肌のゴブリンが、草原の真ん中でエタルの行く手を阻んでいる。


転回サリス


 エタルが呪文を唱えて魔法陣を発生させると中から剣を引き抜いた。エタルは剣を持ったままモンスターたちを見ると、一瞬で距離を詰めてコボルトの構えていた短剣ダガーを弾いてスケルトンの長剣を吹き飛ばし、背後からゴブリンが振り下ろしてきた金棒を剣で受け止めた。

 エタルはそのままゴブリンの体を金棒ごと弾くと、即座に剣を横薙ぎに振り切って地面へと斬り伏せた。風になびく草原の草地にゴブリンが倒れ、すぐにスケルトンの骨が散らばるとコボルトの体も仰向けで倒れた。


 三体のモンスターを倒したエタルは魔法陣を展開させたまま剣だけを消す。草原に倒れたモンスター達の生存を確認すると、エタルはその場を立ち去った。


 草原の中を歩き小高い丘に登ると、遠い森の向こうに町並みが見えた。王国の西にあるオワリーの町並みだった。エタルはオワリーの町を目指して歩き始める。



 王国を出てから約一年。エタルはあのオワリーの町で研鑚を積んでいた。独学でこの世界の法則を学び、そして肩に乗っている仔猫に出会った。

 この仔猫はよく喋った。


拠点にしていたオワリーの町はモンスターに襲撃された。

フード付きの青いマントを羽織って自転する球体型の光学魔法陣を周囲に展開させた少年のエタルは、モンスターの群れの一体である緑色の巨体を誇るトロールと呼ばれるモンスターと対峙していた。

D2級の魔物モンスターであるトロールは、北に広がるサナンバ草原とその内部に存在するタマクラカン砂漠に生息している。

 エタルは解析用の魔法陣を、民家の二階ほどもあるトロールの姿に重ね合わせて様々な情報を魔法陣の画面上に表示させた。外見から推測される筋力と体躯から体力と攻撃力、耐久力を割り出し、効果のありそうな攻撃手段を模索していく。


「さっさと魔法でやっつけちゃえば?」


 肩に乗った白い仔猫のシュレディを無視してエタルはトロールの様子を伺う。

 仔猫の言う通り。肉弾戦を好むトロールに魔法攻撃は有効だが、巨人であるトロールの側も体力が尋常ではない。魔法でトロールを仕留めるには最低でも三名以上の魔力を必要とする。その為、トロールと対峙する場合は複数人パーティーで対応するのが基本とされていた。


転回サリス


 エタルは小型の光学魔法陣を手元に出現させると右手を入れて剣を引き抜く。どこの町でも売られている一般の鉄の剣だった。


「戦うの?」

「まず一発」


 エタルが剣を構えてトロールに向かって振り斬ると、棍棒を持ったトロールの分厚い胸部に衝撃を与えて膝をつかせた。エタルはさらに斬撃を放ち、剣戟の弾幕で巨体のトロールを町の外へと追いやっていくと、直ぐに町の端である森の入り口まで来た。

 エタルは最後に渾身の斬撃をぶつけると、トロールの胸部に激痛を与えて一目散に森へと逃がしてしまった。


「あ~あ、逃がしちゃった。また来るよアイツ」

「そしたらまた相手をするだけだ」


 構えていた鉄の剣を幻のように消して、マントを翻すと青いフードを被ったエタルは誰にも見られないようにその場を後にした。


「トロールを単独で撃退したなら次の地域フィールドに進めるね」

「次の地域は北のサナンバ草原とタマクラカン砂漠だ。今みたいなトロールと同じ力を持ったゾンビやゴーストやオークがごろごろと出現する」

「わぁ、すごいワクワクしてきたよ。ボク」

「戦うのはオレだぞ。なにを考えればそんなワクワクできるんだ」


 肩に乗る子猫に呆れながら、エタルは町の中で装備を整えようとした。装備を整えると言っても今のエタルに必要なものはほとんど無い。これから先で必要になる物は全て記録させた魔法陣から取り出せるので、町の店で何かを買う必要は特になかった。

 しばらく町の中をブラブラと歩いたエタルは何気なく町の外に出た。

町の外に出ると散歩の途中でコボルトとスケルトンとゴブリンに遭遇した。コボルトやスケルトンやゴブリンは全てD0~D1級のモンスターであり、この三体は一般的な小物のモンスターだった。ここから30キロ東にあるセカイラン王国から出てきた初心者ならば丁度いい実戦経験になる。

 エタルも随分、このモンスター達にはお世話になったが、今では戦闘をするのも面倒な低級のモンスターへと見方が変わり果てていた。


 エタルは既に出現させていた剣の一振りでゴブリンとコボルトを斬り捨て、スケルトンを粉砕させると剣を消した。ゴブリンとコボルトは倒れているが死んではいない。スケルトンもエタルの一撃によって白い人骨をバラバラにされて四方八方に飛び散ったがすぐにまた元の身体に戻って動き出すだろう。

 特に倒したモンスター達の安否を気遣う様子も無く、エタルは倒したモンスターたちを無視してただひたすらに草原を彷徨さまよい続けた。


「レベル上げをしてるつもりなの?」

「モンスターなんか倒したってレベルなんか上がらないだろ」


 残念なことにこの世界ではモンスターを倒したところで経験値も資金も手に入らない。身に着けていた装備品を剥ぐことはできるが、重いしカサ張るので身軽さを信条とするエタルはあまりした事がない。しかも、なけなしの装備品さえ着用していない動物系のモンスターであれば体の部位を切り取って売り買いするぐらいしかないのだが、実はそれもこの世界ではあまり意味の無いことだった。


「だいたいモンスターって死なないんだよね」

「それに持ってる武器も、そこらに落ちてる使い捨ての武器だしな」


 頻繁に出没するモンスターは真昼間から地上を彷徨っているために道端に落ちている刃こぼれした剣やへこんだ盾を持つ習性がある。その為、何体倒しても金銭を得られることは皆無といってよかった。


「モンスターを倒したら、お金でも入ってくればいいのに」

「それを言ったらキリがない」

「骨じゃ売れないしね」

「スケルトンの骨は殆ど磁石だからな」


スケルトンの骨は四方に散らばっても一定の時間が経てばまた一点に集まり元通りの身体に戻ってしまう。例え骨の一部を持ち帰ったとしても、その骨を追い掛けて残りの骨が弾丸のように飛んでくるので、アンデッドの対処方法は粉砕して逃げろが最善の手段だった。


「前に、町の人がスケルトンの骨を持ち帰ってスケルトンが飛んできたよね」

「笑ったよな。スケルトンの骨が飛んできて町のあちこちに弾痕をつけて大騒ぎになった」


 そしてカクカクと元に戻ったスケルトンは人間に追われてまた外へと逃げ帰っていったのだった。今もエタルの目の前で立ち塞がる新たに出現したスケルトンのように。


「またか」


 額に手を当てて落ち込むエタルが剣を振り抜くと、躊躇うことなくスケルトンを粉砕した。

 



Lv1.対コボルト戦 草原のレベル上げ




 刃のこぼれた剣とヘコんだ丸盾を両手に持った白い骨のスケルトンを粉砕して王国周辺の草原を歩くエタルが次に遭遇したのはコボルトだった。

 コボルト。人間より少しだけ背が低めの熊型のD0級のモンスターである。二足歩行で歩き袈裟懸けのボロ布を着て尚且つ熊のような手でありながら五本指であり道具まで使うことができるこのモンスターは今回、手に短剣ダガーを持っている。

 短剣を持った熊のモンスター。初めて出会うとそれなりに恐怖を感じるものだが今のエタルは簡単に剣で斬り伏せた。

 エタルがダガーを持ったコボルトとすれ違うとコボルトはすぐさま倒れ込んで倒された。しかし経験値や資金が手に入ることはない。

 エタルは軽くため息を吐きながら倒れたコボルトを置いて先を歩いた。特に目的地があるわけではない。どうせ日が暮れるまでに出発したオワリーの町に戻るのだ。

 学校を卒業したエタルは日がな一日、セカイラン王国の西にあるオワリーの町から草原を彷徨うか郊外の採掘場で鉱石を採掘するかの暇つぶしをしている。要するに弱い者いじめか石ころ集めかを選んで興じているのだ。その他にもやろうと思えば釣りでも菜園でも他の活動はできるのだが、今のエタルには全く興味が持てなかった。


「エタル。また来たよ」


 シュレディが言うと草原を歩いていたエタルの前にまたコボルトが現われた。今度現われたコボルトは砂色の毛並みで黄色の襤褸切れを袈裟懸けに着ている。手には剣ほどではないが刀身の長い短剣を持っていた。およそ剣の半分といったところだろうか。その長いダガーをエタルに向けて構えていた。


 エタルはそのコボルトの様子を見ると、しばらく考え込んだ。


 コボルトの対処は非常に簡単だ。先に攻撃するか、遅い攻撃を躱して攻撃するかの二択である。つまり攻撃すれば必ず勝てる弱小モンスターなのだが勝ったところで得られるモノは何も無い。本当に何も無いのである。倒した身体を見分した所で素材になるような体ではないし、手に持っている武器にしたところで町で売却しても5ルダにさえならない物が大半を占める。ごくまれにドワーフが造った貴重な業物を所持している場合もあるが、それはコボルトに限ったことではないし、武具造りを生業としているドワーフの殆どは武器を渡す相手を厳選している。主な対象相手を言えばD2級からの本格的な大型モンスターか、親しくなった高ランクの順位戦者ランカーぐらいだろう。ドワーフについてはまた実際に会った時に語るとして。

現在、目の前で相手にしているコボルトと呼ばれる小型のモンスターは、それだけ戦闘時間を非常に無駄だと感じてしまう魔物だった。

ちなみにこの世界では、人間や魔物や他の生物は食事をしない。眠れば体力は回復するし、傷も時間が経てば治癒が始まる。唯一この世界で何かを口に入れる機会があるとすれば飲み物ぐらいだろう。飲むことはあっても食べる事はない。その為、倒したコボルトの肉を食べてみようという発想も発生しない。物を食べなくとも生きていけれるこの世界ではコボルトぐらいのモンスターを倒したところで本当に価値は何もなかった。


「お前、そろそろ逃げないか?」


 エタルが怪訝そうに、長めの短剣を向けてくるコボルトに語り掛ける。残念ながら人間の言葉が通じるのはD2級から上のモンスターである。それより下のD0~1級のモンスターでは言葉で語り掛けても返ってくるのは棍棒か刃物を使った凶器の応酬である。現に今もエタルが語りかけた行動を攻撃と勘違いしたコボルトの反撃を受けて華麗に避けると、その流れで斬り伏せてしまった。


「時々、逃げないヤツがいるんだよな」


 モンスターは相手との実力差を感じ取ると瞬く間に逃走することがある。最近ではエタルもオワリーの町や王国周辺の草原を徘徊していてモンスターと遭遇する回数が目に見えて減っていた。要はモンスターの側も弱い者いじめが大好きなのだろう。生き物とは得てして自分の実力が通じる相手にしか勝負を挑めない臆病な存在だった。

 エタルとしてもそれを否定するつもりは毛頭ない。エタルもこうして実力不相応に低等級のモンスターが出現する地域を狙って散策している。それはもっぱら暇つぶしの為だったが、いざ低レベルのモンスターが現われるとやはり逃げてくれとも思うのだった。


「そんなにモンスターと会うのがイヤなら外を歩かなきゃいいのに」


 正論を言う子猫の言葉は敢えて無視することにした。この仔猫がついさっきまで北の新天地に目を輝かせていたことは忘れていない。エタルにはエタルのやり方がある。

このセカイラン王国周辺から先の領域に進むには、北に広がるサナンバ草原を越える必要がある。しかしサナンバ草原ではトロールなど単独では攻略するのが難しいD2級のモンスターが頻繁に出没するため、今のエタルのように気軽に外を出歩くことは不可能だった。


「また来たよ」


 肩に乗った白い仔猫の声を聞いて、エタルがまたコボルトかと思い視線を上げると草原の丘から近付いてきたのは斧と盾を持った白い骨のモンスターのスケルトンだった。




Lv3.対スケルトン戦



 スケルトン。白い骸骨がカクカクと動く挙動不安定な不死属性アンデッドのD1級モンスターである。

 白い頭蓋骨の顎関節がガクガクと動いて今にも声を発しそうだが、セカイラン王国周辺のモンスターは魔物の危険度を示す等級が最も低い為に会話をすることはやはりできなかった。


「ねぇ。今度はボクにも戦わせてよ」


 このスケルトンが現われる前に見ていたエタルと他のモンスターとの戦闘に感化されたのか、白猫のシュレディがエタルの肩から飛び降りると二本足で立って前足の拳を何度も素振りさせている。


「シュレディ。お前、戦えるのか?」

「え。当たり前だよ。ボクを誰だと思ってるの?」

「子猫にしか見えないんだが」


 エタルの訝しむ視線に見守られながらシュレディが手斧と盾を構えるスケルトンの前に立ち塞がると、前足の小さな拳を構えて背を丸めた。

 白い仔猫と白い骸骨による小人と巨人の無謀な戦い。小さい子猫の愛くるしい姿を見てもスケルトンは何も感じない。無機質に振り上げられた手斧が前足の拳を構える仔猫の右に左にと振り下ろされた。


「やっぱり危ないからお前はどいてろ」

「あっ」


 遥かな頭上から斧を振り下ろされて逃げるばかりの子猫の前に立ち、視線だけでスケルトンを粉砕する。


「いま何したの?」

「剣で吹き飛ばしただけだ」

「剣なんて持ってないじゃないか」


 青いマントの少年の手には既に何も握られて居はいなかった。

 レベル上げはレベル上げにはならない。

 草原を歩く12歳の少年のエタルにはそれが分かっている。場所はセカイラン王国周辺の草原地域一帯。


 拠点にしていたオワリーの町がモンスターに襲撃された。

 フード付きの青いマントを羽織って自転する球体型の光学魔法陣を周囲に展開させた少年のエタルは、モンスターの群れの一体である緑色の巨体を誇るトロールと呼ばれるモンスターと対峙していた。

 D2級の魔物モンスターであるトロールは、北に広がるサナンバ草原とその内部に存在するタマクラカン砂漠に生息している。

 エタルは解析用の魔法陣を、民家の二階ほどもあるトロールの姿に重ね合わせて様々な情報を魔法陣の画面上に表示させた。外見から推測される筋力と体躯から体力と攻撃力、耐久力を割り出し、効果のありそうな攻撃手段を模索していく。


「さっさと魔法でやっつけちゃえば?」


 肩に乗った白い仔猫のシュレディを無視してトロールの様子を伺う。

 仔猫の言う通り。肉弾戦を好むトロールに魔法攻撃は有効だが、巨人であるトロールの側も体力が尋常ではない。魔法でトロールを仕留めるには最低でも三名以上の魔力を必要とする。その為、トロールと対峙する場合は複数人パーティーで対応するのが基本とされていた。


転回サリス


 エタルは小型の光学魔法陣を手元に出現させると右手を入れて剣を引き抜く。どこの町でも売られている一般の鉄の剣だった。


「戦うの?」

「まず一発」


 エタルが剣を構えてトロールに向かって振り斬ると、棍棒を持ったトロールの分厚い胸部に衝撃を与えて膝をつかせた。エタルはさらに斬撃を放ち、剣戟の弾幕で巨体のトロールを町の外へと追いやっていくと、直ぐに町の端である森の入り口まで来た。

 エタルは最後に渾身の斬撃をぶつけると、トロールの胸部に激痛を与えて一目散に森へと逃がしてしまった。


「あ~あ、逃がしちゃった。また来るよアイツ」

「そしたらまた相手をするだけだ」


 構えていた鉄の剣を幻のように消して、マントを翻すと青いフードを被ったエタルは誰にも見られないようにその場を後にした。


「トロールを単独で撃退したなら次の地域フィールドに進めるね」

「次の地域は北のサナンバ草原とタマクラカン砂漠だ。今みたいなトロールやゾンビやゴーストやオークがごろごろと出現する」

「わぁ、すごいワクワクしてきたよ。ボク」

「戦うのはオレだぞ。なにを考えればそんなワクワクができるんだ」


 肩に乗る子猫に呆れながら、エタルは町の中で装備を整えようとした。装備を整えると言っても今のエタルに必要なものはほとんど無い。これから先で必要になる物は全て記録させた魔法陣から取り出せるので、町の店で何かを買う必要は特になかった。

 しばらく町の中をブラブラと歩いたエタルは何気なく町の外に出た。

町の外に出ると散歩の途中でコボルトとスケルトンとゴブリンに遭遇した。コボルトやスケルトンやゴブリンは全てD0~D1級のモンスターであり、この三体は一般的な小物のモンスターだった。ここから30キロ東にあるセカイラン王国から出てきた初心者ならば丁度いい実戦経験になる。

 エタルも随分、このモンスター達にはお世話になったが、今では戦闘をするのも面倒な低級のモンスターへと見方が変わり果てていた。


 エタルは既に出現させていた剣の一振りでゴブリンとコボルトを斬り捨て、スケルトンを粉砕させると剣を消した。ゴブリンとコボルトは倒れているが死んではいない。スケルトンもエタルの一撃によって白い人骨をバラバラにされて四方八方に飛び散ったがすぐにまた元の身体に戻って動き出すだろう。

 特に倒したモンスター達の安否を気遣う様子も無く、エタルは倒したモンスターたちを無視してただひたすらに草原を彷徨さまよい続けた。


「レベル上げをしてるつもりなの?」

「モンスターなんか倒したってレベルなんか上がらないだろ」


 残念なことにこの世界ではモンスターを倒したところで経験値も資金も手に入らない。身に着けていた装備品を剥ぐことはできるが、重いしカサ張るので身軽さを信条とするエタルはあまりした事がない。しかも、なけなしの装備品さえ着用していない動物系のモンスターであれば体の部位を切り取って売り買いするぐらいしかないのだが、実はそれもこの世界ではあまり意味の無いことだった。


「だいたいモンスターって死なないんだよね」

「それに持ってる武器も、そこらに落ちてる使い捨ての武器だしな」


 頻繁に出没するモンスターは真昼間から地上を彷徨っているために道端に落ちている刃こぼれした剣やへこんだ盾を持つ習性がある。その為、何体倒しても金銭を得られることは皆無といってよかった。


「モンスターを倒したら、お金でも入ってくればいいのに」

「それを言ったらキリがない」

「骨じゃ売れないしね」

「スケルトンの骨は殆ど磁石だからな」


スケルトンの骨は四方に散らばっても一定の時間が経てばまた一点に集まり元通りの身体に戻ってしまう。例え骨の一部を持ち帰ったとしても、その骨を追い掛けて残りの骨が弾丸のように飛んでくるので、アンデッドの対処方法は粉砕して逃げろが最善の手段だった。


「前に町の人がスケルトンの骨を持ち帰ってスケルトンが飛んできたよね」

「笑ったよな。スケルトンの骨が飛んできて町のあちこちに弾痕をつけて大騒ぎになった」


 そしてカクカクと元に戻ったスケルトンは人間に追われてまた外へと逃げ帰ったのだった。今もエタルの目の前で立ち塞がる新たに出現したスケルトンのように。


「またか」


 額に手を当てて落ち込むエタルが剣を振り抜くと、躊躇うことなくスケルトンを粉砕した。

 



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る