[香 第二話 領域]

 そよそよと、今日は少し緑がかった風を感じます。

 驚きました。私が「そよかぜ かおり」だっただなんて。

 ありがとう。

 素直にとても嬉しいです。私の作品を、涼さんのように楽しみに読んで下さる人がいるという事は本当に励みになります。

 ただ、一つだけ悲しくなった事があります。「香さんの作品を読んでしまったら、僕の作品なんて捨ててしまいたくなった」って書いてありました。どうかそんな風に思わないで下さい。小説は人と優劣を競う物ではないと思うのです。一人一人の味があります。どうか自分自身を、自分の作品を大切にして下さい。


 カクヨムの数多い作品の中で、偶然にも涼さんの投稿に出会えた事は奇跡に近いのかもしれませんが、その投稿に対して私自身がアクションを起こすなんて、自分でも不思議に思っています。

 なぜって? それは理屈ではありません。かれて反応してしまったという事でしょう。


 今一度、少しだけ確認しておきたい事があるのです。涼さんがそれを承知して下さるなら、この交換小説を続けましょう。ここでもし、私と食い違いがあるとしたら、ここでおしまいにしましょう。

 ここまで読んで下さった読者にお詫びの言葉を入れて完結にしましょう。


 これは「交換小説」で「交換日記」ではありません。公開しているという事は、読んで下さっている方がいるかもしれないという事です。書く事は莫大な時間をそこに費やします。それと同じように、読む方も、それを読む事に大切な時間を費やしているのです。だから、がっかりさせたくないんです。「あー、時間の無駄だった」って思わせたくないのです。自分の書いた物をそれを読んで下さる方がどうとらえるかは分かりません。どう捉えるかは読んで下さる方の自由です。ある方にとっては面白く感じられないかもしれない。それは仕方のない事だと思います。

 でも、私は自分の作品には責任を持ちたいと思っています。いい加減な作品は作りたくない。一作一作に魂を込める事が私のポリシーです。


 私は「カクヨム」に投稿し始める前、別の投稿サイトを利用していました。そこには未だに完結出来ていない放ったらかしになっている作品があります。行き詰まって逃げているの。この続きをこれから書けるかどうかも分からない。でも、書くつもりがないわけでもないので削除もしていない。もう五年以上も前の投稿だから、読む人もいないと思うけれど、責任を持てていない作品に対して私はとても心苦しく思っているの。そんな繰り返しはしたくない。


 それから。繰り返しになってしまいますが、これは「交換小説」で「交換日記」ではありません。小説は既に始まっています。私は「そよかぜ かおり」で、私自身ではありません。既に小説として書いています。涼さんがおっしゃる通り、小説は自由です。ノンフィクションを綴っているのではありません。これから、香は私の意思に反して自由に動き発言していく事になるでしょう。それは涼さんとの関わりの中から生まれる物です。

 私はそこに期待しているの。私、第一話で書いたわね。「誰か私の小説をぶち壊して下さい!」って。


 涼さんの中で、まだこの小説で何を書くか決まってないみたいですね。どこに向かっていくのか分からない小説も魅力的ではあるけれど、大切な事は決めておかないと、やはり無責任な小説になってしまうと思うのです。特に今回は一人で作っていく小説じゃないので、決めておかなけばならない事がいくつかあると思います。


 私の考えを少しだけ書かせて下さいね。

 まず、涼さんも書いていたように「小説は自由だ」という事は大切にしたいと思います。

「小説」ってなんだろ? こうあるべきとかいう正解は無いと思うの。人それぞれであっていいと思う。

 涼さんは何を求めてこの小説を書こうとしているの?

 書いていたわね。

「何かを伝えたくて、誰かの力になりたくて、小説を書き始めた」って。この小説もそうなの?


 読んで下さる人を想定して、楽しんで頂けるように書く? それとも自分が書きたい事を書く? 万人向けに書く? それとも特定の人に向けて書く?

 この「交換小説」を公開する意味はあると思う?


 私も自由に楽しく書きたい。堅苦しい事抜きに。偉そうな事言ってごめんなさいね。ただ、最低限共通の意識は持っていたいから。そのあたりをしっかり考えて、次回は少しずつ「藍染あいぞめりょう」を動かしていってくれたらなって思います。

 二人で書いていく事はとても難しい事だと思いますが、私はそれに挑戦したいなと思っています。自由に書いていく中でお互いの領域は守りましょうね。何というか。私は自然界に生きる物達の関係が大好きなのです。彼らは自然にお互いの領域を侵す事なく上手く助け合い調和して、一つの生命体のように生きている。そんな生き方に私は憧れています。


 慌ててやる物じゃないから、ゆっくりでいいから。私もじっくりいきたいと思っています。

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