[ひとりごと 第一話 初心忘るべからず]

 今日の空は重たくて重たくて。雨粒達は今にも落下しそうなのに、落とされまいと雲に必死にしがみついているようです。

 私はそんな空を見上げながら、落ちてしまえば楽になるよと雨粒達に言いました。いいえ、それは私自身へのひとりごと。


 書く事が少し出来なくなって二ヶ月が経ちました。読む事も出来なくなって一ヵ月が経ちました。ポツリポツリと雨音が聞こえた時「あっ、落ちてきたんだね」

 私はひとりごとを呟いていました。雲から離れた気分はどう? 楽になれた? 私もまた少しでも踏み出したいな。少しだけ覗いてみようかな? そんな気持ちが芽生えているのを感じました。


 久々にスマートフォンの電源を入れました。ホーム画面の右下にある水色のアイコン、久々に見ると何だか愛しいな。このカギカッコは「書く」と「読む」を表しているのかしら? 対になって嬉しそう。今までそんな風に見えた事はなかったのに。勝手に親指が吸い寄せられて、勝手に画面が変わっていきます。

 新着小説の一番新しい物が画面に出てきました。

 作者さんは「藍染あいぞめ りょう」さんというお名前。(※勿論この小説上で私が付けたお名前で、「カクヨム」上の実際のお名前ではありません)

 まだカクヨムに投稿し始めて一ヶ月位の方の新しい小説で、それが第一話でした。


「交換小説」という物を書いていこうとしているようです。

 何だか楽しそう。私の心が少しだけ色づいた気がしました。ピンク色とかそんな鮮やかな色ではないのだけれど、これまでのモノトーンの世界にほんの少し麦の穂のような色を感じました。

 交換小説にはならないけれど、私は涼さんの投稿を読みながら、涼さんに語りかける気持ちで、私の「ひとりごと」という物語を勝手に作ってみる事にしたのです。


 涼さんのお話を読んで、私が「カクヨム」に投稿し始めた時の事を思い出しました。私も同じような事考えていたなって、何だか笑えました。かれこれ十年位前になるのかしら。「初心忘るべからず」ですね。

 実は最近、書くことに少し行き詰まっていて、書く事が怖くなっていたんです。そんな気持ちを吹き飛ばしてくれるような新しい刺激が欲しいなって思っていたんです。ちょっと自分の頭の外に出てみないと新しい物は書けないなって。だって自分の頭にある事ってほぼほぼ書き尽くしてしまったっていうか、つまんないんだよね。同じ事を書いてる。新鮮さがない。読者がハッとするような斬新な物が書けない。

 なんか、破茶滅茶にしてみたいなって。誰か私の小説をぶち壊して下さい! ってそう思っていた時に、たまたま涼さんの投稿に出会ったんです。私の小説に私以外の人の発想を取り入れてみたい。そして初心に戻ってまた書いてみたいなって。


 涼さんは「カクヨム」で素敵な小説家を見つけられたんですね。これを書いているのが私じゃなくて、「そよかぜ かおり」さんだったらどんなに良かっただろうにって思います。ごめんなさいね、私で。ま、涼さんが私の「ひとりごと」を読んでるはずはないと思うので、私は密かに貴方の投稿を見ながら、勝手に「ひとりごと」を書かせて頂きます。

 自分の小説じゃない所に入り込む事で何か新しい物が見えてくるかな? って考えたんです。

 迷惑ですか? 少しでもイヤな気分にさせちゃっていたらごめんなさい。もしも、もしも涼さんがこの投稿を目にして、不愉快な思いをしていたら遠慮なく言って下さいね。私の「ひとりごと」はすぐに削除しますから。


 涼さんの「香さん視点」で書かれる第二話を楽しみにしています。





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