第4話


 しかし、最大の問題は勇者そのものである。


 既に期限まで数日。国王は極秘会議を開くことにした。参加者は、国王、大神官、宰相の3人のみである。大神官は、楽観主義過ぎて、あてにならないので、実質、国王と宰相2人の会議にすぎない。


「それで、何か良い案はないかな?宰相、お主が最後の頼みだ」


「陛下、私には聞かれぬのですか!」


「どうせ、神が導くと言うのだろ、大神官」


「え!?陛下、なぜ分かりましたか?」


 やはり、大神官は駄目だ。事後処理で更迭しようか……。


「それでしたら、一策あります」


 宰相が言う。


「して、宰相、どういう案じゃ?」


「『望む、勇者』と言う国中の布告を出すのです」


「それで、望む勇者が得られると言うのか?して、そのために用意するモノは何か?国の秘宝か?『抜けない剣』とか『壊れずの鎧』とか……」


 ――宝物庫に置いたままでは使い道が無いゆえ、それらの秘宝を差し出すには問題無いが、果たして布告で集めた勇者にそれが使えるのだろうか……それ以前に秘宝目当ての偽勇者が現れないだろうか……。いろいろ不安がよぎる。


「ええ、用意するものは、『きのぼう』と『ぬののふく』だけで十分です」


「それで、勇者が現れると言うのか?宰相」


「神に導かれて現れるでしょう――」


「お前には聞いて居らぬ、大神官」


「ええ、そのような装備で冒険に出るような奇特なモノに勇者の才があると思われます。無謀な装備で国を救おうと言うイかれた考えでも無ければ魔王に勝てる訳がないと思いますが――陛下」


「それも一理あるな」


 大体、設定に無理がある。それに一縷の望みをかけることにした。


 ――数日後、予定通りに魔王が現れ、王女を掠っていった。王城は半壊した。まぁ、あらかじめ知っていたので、祭礼と言う名目で城内の人員を外に出していたので、人的被害は無かったのであるが――。復興にどれだけ金がかかるのやら、今から頭が痛い。


 その後は、宰相の用意した通り、勇者募集の布告を出す。正直ブラック過ぎる条件を忌避して、凄腕冒険者は、軒並み断ってきた。まぁ、凄腕傍系血族が勇者になる可能性は、過去一例しかないので断られても問題無い。むしろ断ってこないと困った。


 数日後、田舎の少年が、この条件で魔王を倒すと登城してきた。「この、世間知らずめ」と衛兵が追い返そうとしていたのを、宰相がめざとく見つけ、国王に謁見させたのだ。


「では、そちが、我が王女を助けると言うのか?」


「はい」


 これで決まりだ。何が起ころうと知ったことではない。投げた賽を戻す訳にはいかないし、我が国は、これにかけるしかないのだ――。


 ――その後、どうなるかは神のみぞ知るのだ。


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勇者と魔王のゲーム みし @mi-si

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