それぞれの、言い分

ところで、病院は患者を収容する施設です。

それどころか医療を行う場所でもあります。

ですから、私は自分が患者だった時にどうやって病院で働くのかを考えてみてきました。

そして、考えてみると1人で病院で働く事と看護師として働いているということは、同じ事のようで実は全く違っていたのです。

なぜ看護師という仕事がこんなに大変で不平不満が多いと言われているかと言うと、それは主に医療現場が関係しているということが考えられます。

ですから、看護師として働いているのであれば、給料は有名国立病院よりも多少安くてもそこそこ良い給料が入ってくれば、患者さんからすれば満足のいく条件で働くことが出来るということになります。

それに対し、私は派遣先ではなく、私の所属する医療系大学病院でも、給与は病院よりも多少安くても良い給料が入ってくれば、満足度も高くなると考えています。

私は、私の所属する医療系大学病院のナースの給料について考えてみました。

恩義を感じているから、このような事を言っているのだとは少し考えたことはあったのですが、昇給の必要性は考えたことがありませんでした。 でも、この病院の給料が高いという話は聞いたことがありませんでした。もちろん、私の所属する大学病院に看護師がいてボーナスも出て、更に1か月に40〜50万円のボーナスを支給し、退職者の負担も減らせるという点を病院側は気にしているようでしたし、私は自分の所属する大学の看護系大学病院の看護学生の給料が高いという事も、考える事がありません


◇ ◇ ◇


検査の順番待ちで自宅待機していた患者が急変した。

病院に搬送されてくるとベッドの上で顔が震えた。

心臓が止まった。その瞬間はもう手遅れだった。

もう一人、運び込まれてきた。今度はあろうことか医者だ。第一線で活躍するという事はそれだけ感染リスクがあがる。何ということだ。

全身が焼けるような熱をだしている。

「大丈夫かい?」

「大丈夫。あんたこそ、心配だ」

俺は医者に言われると顔を赤らめた。気遣って貰うほど余裕がないのだろう。

穴があったら入りたい気分だ。心臓がバクバクしている。全身の血液が止まることを恐れている。血栓ができやすい感染症だ。

だが俺の中で何かが切れた。顔が真っ赤になった。

おちつけ。

「もし自分が医師なら何をする。何を求めてここに来る」

俺は言い返していた。

「はい。救急車の出動要請がありました。治療に全力を尽くします。しかし私はそういう体制にあるとは思わない」

俺は医者の言った事に首を傾げた。

「何を言うか。ベッドを少しでも空けようと一丸になっている。医者も患者もだ」

医師は、スタッフを一瞥するなり「これでは患者様はどうなるかわかりません」と指摘した。

「俺たちはないないづくしをかき集めて立ち向かっている」

すると医者はパルスオキシメーターを見やった。アラームが鳴っている。そして人工呼吸器もなく喘いでいる患者達。

「これは人間では無いです」

医師は、俺の心をへし折るようなことを言った。

「人間だ。だからこそ苦しい時は協力だ。もっと困った人たちがいる」

「何、このドクター。」医師は答えた。

「このドクター。人殺しだ!」

俺は驚いた。

「僕は死ぬのは怖くない、人殺しも怖くないんですけどね。でもねあなたは今の自分が生きる事に必死になっています。」

医者が、俺を睨みつけている。

「そんなに人を恨んでるのか」

俺は思わず言った。

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