第11話 今度こそ普通の第1村人発見


ツカサとヒメナは食べるだけ食べ、動きやすそうな服と、それぞれ気に入った色のフード付きマントを羽織り外に繋がっているであろう扉の前に立っていた。


ツカサは返り血を予想しての黒、ヒメナも同じく返り血を予想しての赤を選んだ。


「じゃあ開けるぞ?」

一応確認のため手を繋いで横に立っているヒメナに声をかける。


「うん、いいよ。もし死んだら恨むけど」

返事は笑顔で返って来た。


そしてお互い頷き、鍵を回すと何も描かれていなかったはずな魔法陣が扉に浮かび上がり、2人の視界は眩い光で染まった。



――――――――――――――――――――


気づくと2人は森の中にいた。

「なんだあの魔法、複雑すぎて全く分からんかったぞ」

ツカサは早々に文句を言う。


「たぶん空間系の何かだとは思うけど…神代魔女さん本当に何者なんだろ」

ヒメナはぶつけたお尻をさすりながら、そう言った。


実は眩い光が収まったと思ったら、上空5メートルほどだったので2人ともダメージを受けてたりする。



「うわ、早速出たよ」

そう言うツカサの前に現れたのはツカサと目線が同じのオオカミのような魔物。


ツカサは慣れた手つきで150センチほどの長さの刀を氷で作り上げる。

ツカサが武器を所持していなかったのはする必要がないという単純な理由なのだ。



ツカサが刀を構えると同時にオオカミの魔物もツカサに向かって鋭い爪を向け飛び出して来た。

「ほっ」とツカサは体を横にずらして避けると、オオカミの腹を切り裂く。


「キャンッ」とオオカミは思わず、体を仰け反らせるが移動した先にはヒメナが回り込んでおり、繊細な樹の操作で魔臓だけを取り出した。

図書館生活は無駄ではなかったようだ。


ブシャァと音を立てながら半分に分けられた魔臓。


その半分はツカサに渡される。

「はい、食べてみるでしょ?せっかく人辞めたんだし」

ツカサが前にポロっと言ったことを覚えているヒメナ。


ツカサは一瞬躊躇ったものの、勢いよくかぶりつくと一言。

「美味いっ」

ここでツカサの好物の1つに魔臓が加わった。


「でしょでしょ!、いやー分かってくれるとは流石ツカサ」

なぜかヒメナも嬉しそうである。


そこでガサガサと音がしたかと思うとと全方位からさっき殺したオオカミの魔物が現れる。

しかし残念ながら2人にとってこの状況は、ただの食事でしかない。


「いち、にい、さん、し、ごー、ろく。1人3つでいいよね?」

一応の確認をするヒメナ。

何を数えているかというともちろん魔臓の数である。

「りょーかい」

ツカサはそれだけ返事をすると、自分の取り分であるオオカミに斬りかかった。



――――――――――――――――――――


ツカサとヒメナは川に来ていた。


何をしているかというと洗濯である。

オオカミを殺した時点で、マントはもちろん髪や髪にも返り血を浴びその後も手当たり次第に殺し回ったので、流石に洗おうということになったのだ。


「それにしてもあの亀は2度と会いたくないな」

深いため息を吐きながらツカサはそう言う。


「確かに、硬いし不味いしいいとか無しだったしね」

うんうん、と頷くヒメナ。



こんな調子で2人の狩猟生活が続くこと5日。


2人がいつも通り変わりない森を進んでいると、突然あれほど感じていた魔素の流れが一気に弱まった。

それはツカサもヒメナもすぐに気づき、思わず立ち止まる。


ツカサはすぐに周囲を見渡し始める。


「なんかあった?」

とヒメナ

「あ、あったわ」

とツカサ


ツカサは右のに見える1つ奥の木の枝から何かを取って来た。

それは青く光る鉱石をランタンのようなものに入れたものだった。

「なにこれ?…結界の支点みたいなものかな?」

そのヒメナの言葉を聞いて、ツカサはニヤリとする。

「てことはやった人に会えるわけだな」

あー長かったわ〜、とツカサ



ランタンをみつけてから、ツカサはいつもより足早に森を進んでいった。


足早に歩き出して数分、ツカサの死角から矢が飛んできた。

ツカサはほんの少し頭をずらし、矢を避ける。

どこからかチッと舌打ちが聞こえたからと思うと、木の影に隠れていたのか重量感あふれる剣を振りかぶった男が突っ込んできた。


ツカサは思わず笑みがこぼれる。

「この卑怯な手、盗賊か?まさか狩人?なぁヒメナこの人殺しても…」

いい?と聞こうと思い、剣を交えながらも振り向くと、ヒメナは後ろから襲いかかってきたのか者を対処したのか既に死体を1つに作っていた。


ツカサはヒメナがやったならいいかと思い、サクッと首をはねた。

「ばけ、もんがっ…」

そう言い残し、男は死んだ。

どうやら矢を打った人は逃げ出してしまったようで、見失った。


いくら異世界とはいえ物語のように何十メートルも離れたところまで気配が分かるわけもないし、ましてや何もないところに物を収納することも出来ないのだ。


2人は2つの死体をほったらかしにして、さらに進む。


今の2人はせっかくついてるし、と言うことでフードを被ることにしている。

これはさっき襲ってきた人が3人中2人がフードを被っていて、それを見た2人が長いものに巻かれた結果である。




さらに進むこと十数分、ついに森の終わりが見えた。


そしてついにしっかりと日光が当たる土地へと足を踏み入れると、

その先には


青空とだだっ広い草原





そして武器を構えた30人近い人が横に並んでツカサとヒメナをにらめつけていた。





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