第7話 初めてのまともな(?)出会い
「いっつぅー」
ツカサは頭をさすりながら起き上がる。
小説なら気絶し、ここはどこだ?となるところだが案外人間は簡単に気絶しないのだ。
ツカサはキョロキョロと周りを見渡すが、分かったのは自分の真上にある穴からここは落ちてきたことと周りがゴツゴツした岩であることだけ。
周りの岩肌から少し顔を出している光る不思議鉱石のおかげでその数少ない情報を得らことができたので、ツカサは心の中で不思議鉱石を今日のMVPに認定した。
そんなくだらないことを考えていたとき、強烈な悪寒を感じ壁の端に目を向ける。
そこには植物のようなものが塊になっている。
恐る恐るツカサは近づいてみることにした。
つま先だけでそろりそろりと近づき後4歩ほどで触れることができる距離まで近づいたとき、植物の一本がツカサに向けて襲いかかる。
身構えていたツカサは至近距離からの攻撃であったもののなんとか避けることに成功。
ツカサは間合いを取るため数歩下がり剣を構える。
しかしツカサが次に見たのは植物を操る魔物などではなく、うぅ〜〜んと伸びをする少女の姿だった。
立ち上がった少女はボサボサの黒い髪を腰ほどまで伸ばしていて、顔も大半が隠れていたが髪の毛の隙間から黄金に輝く瞳が覗いていた。
「まさか私の新しく考えた自動防衛を交わす人がいるとは……というか久しぶりに話すなぁ」
ツカサは更に攻撃が飛んでくるのでは無いかと警戒していたが、なんとも力の抜ける言葉で一気に毒気を抜かれてしまった。
「お前は何者なんだ?やばそうな雰囲気しかしないんだが」
とりあえずツカサは一番大事なことから聞いていく。
「そうだなぁ、ここに封印されてる、人に近い何かかな」
少女はそう答えた。
ツカサは再び次の質問をしようとした瞬間、ツカサから見て左側から地響きにような足音が聞こえ始めた。
そこでようやくツカサは気づく。
ここは部屋などではなく大きな空洞の壁に空いたただの凹みだと言うことに。
ツカサが地響きの正体を確認しようと暗闇と睨めっこをすること10秒、地響きの正体である象に似た魔物が現れた。
象の魔物は本来の象に棘をたくさん生やした感じだったが暗闇から姿を見せた瞬間、少女によって秒殺された。
全然封印されてなくない?と言いたくなるツカサだったがぐっと堪えた。
象の魔物を仕留めた少女は内心驚いているツカサに軽く話しかける。
「これ一緒に食べる?」
――――――――――――――――――――
ツカサは会ったばかりの人外少女と一緒に食事をした。
ツカサは魔物の肉を食べたせいで全身痛みに襲われるわマズイわで散々な食事だったが。
ツカサが食事をしながら少女から聞き出した情報はいくつかある。
・名前はヒメナ、家名的なやつはないらしい。
ツカサはなんとなく日本人でもいそうな名前だと思った
・記憶が薄れてしっかりとは覚えていないものの、森で寝ていたら知らぬ間に捕まってて抵抗したらここに放り込まれたらしい。
・年齢、極秘 見た目は15.16ほど
・樹を生み出し、操作することができるが、大規模な魔法を直接行使することは出来ない。
日光があったら樹を通して使えるらしい。
反対にツカサも自分の名前や出来ることを教えた。
「で、そんだけの力がありながらなんでここから出ないんだ?」
ツカサは最も謎に思っていたことを聞く。
んー、とヒメナは少し悩むそぶりをしてから話し始める。
「まず今現状の私の力ではここは出られないのよ。単純に力不足ってわけなの。」
ツカサの思考はあれほどの力を持つ者がいう力不足という言葉がこれほどしっくりこないものかと脱線していた。
そんな中ヒメナの話は進んでいく。
「それにもう1つ理由があって、それはここの過ごしやすさかな」
ヒメナはその後この場所がいかに過ごしやすいかを熱く語ってくれた。
まぁ要するにヒメナは植物を操るに当たって大量の魔力を必要としている。
そのための糧となる魔物が大量にいるのがこの場所ということらしい。
そして少し前までは上へ繋がる唯一の一本道の前でひたすら狩りをしていたらしいが、最近省エネで生きる方法を見いだしここで半分以上何もせずに過ごしているだとか。
「まぁここの過ごしやすさは分かった。でも力不足っていうのはどういうことなんだ?」
ツカサは聞いて違和感しかなかった部分を再び質問する。
その質問にヒメナは少し恥ずかしそうに答える。
「実は上につながる一本道の途中に炎を纏った魔物が結構いて…植物じゃどうにもならないのよ。」
大規模な魔法も使えないため植物で戦うしかないヒメナはどうやら詰んでいるらしい、ツカサはしっかりそう認識した。
「せっかく魔物に殺されてない人に会えたのに、やっぱりここを出るのはまだまだ先になるかな」
ツカサは暗にツカサを役立たずとディスっているヒメナの言葉を受け、やや心にダメージを負った。
しかし直ぐに名案を思いつく。
「なぁヒメナ。俺が光魔法で出す光を集めたら大規模魔法を発動できないか?」
そう、自分で攻撃しなくてもサポートすればいいじゃない大作戦だ。
ヒメナはそんな名案がと言わんばかりに目を見開き、
「それは全然思いつかなかったわね、早速やってみましょ」
実験が始まった。
――――――――――――――――――――
ツカサの名案による実験は大成功となった。
思わずハイタッチしてしまったほどだ。
しかししっかり問題点も存在する。
それは大規模魔法を使うために必要なエネルギーをためようとするととてつもない程の時間をかけて光を植物に当て続けならはいけないことだ。
そしてその日からツカサとヒメナの地下暮らしが始まったのだった。
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