第20話
信盛には頭の痛い問題がまだあった。信長様は、頭がすごくよく合理的に物事を考え完璧に計算して行動を実行する。しかしそれに合わせて行動する部下は、厳しいノルマに疲れてしまう。 信盛に畿内の武将を与力として受けたのは、そういう事情があるのを分かっていたからだ。
信盛は、戦う前に畿内の武士を織田流に教育する命令も与えられていると考えていた。信盛は、畿内の武将と仲良くするため茶の湯を始めた。畿内では茶会は、武士の教養や親睦を深めるために流行っており上様もたいそうお気に入りで、有名な茶器を揃えて 喜んでいた。 信盛と 信栄は、暇さえあれば配下の武将を茶会に招き、織田家への警戒心を解こうとした。
佐久間信盛は、織田家 宿老として重要な外交交渉を任されることも多かった。彼の交渉相手は、松平家や三好家など大大名などが交渉相手で、三好家と織田家を一時は和睦させるなど数々の功績もあった。
このような実績のある信盛が、茶会で心穏やかにもてなす様子に畿内の武将は徐々に心を開いていった。
信盛は、畿内の武将たちをまとめ上げて、織田家家臣としての自覚と覚悟を植え付けさせていくことに成功していった。
しかし松永久秀は違っていた。彼は織田信長を京へ招き入れた張本人であり、その責任を十二分に感じていた。先の天下人であった旧主三好長慶は情が厚く、人の心がよく分かり諸将の立場や人格を尊重して天下人となった。
しかし信長様は、逆に人を従わせて天下人になろうとしている。久秀は自分が招いた人物が自分の想像した人とは全く違い、想定した思惑と違う結果に後悔していた。このままでは、亡くなった長慶さまや日本人に顔向けできない。 おめおめと生き恥をさらすには、誇りが許さなかった。すでに久秀は、名城多聞山城や名器の茶入九十九髪を奪われ 、かつての力は失われていたが立たずにはいられなかった。
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