第25話 控訴手続き
「もうこれで、我々は終わりですか?」
「裁判は終わったんで」
神野とK弁護人の裁判中最後の会話である。
控訴の相談まで乗ってくれるのかと思いきや…である。
本裁判所の1階で控訴手続きの書類が入手できる事を神野は知っていた。神野は怒りを抑えながら、階下へ降りた。事務所で必要書類を受け取り、書き方の説明を受けた。
翌朝、控訴書類及び弁護人依頼書を投函した後、しばらく頭を冷やして考えてみようとした。が、考えるとどうしても怒りがこみ上げてきて冷静にはなれない。それでも1週間もすると少しずつ落ち着いてきた。
主犯は誰か?
神野は当初、Kスポーツジムの店長ではないかと思っていた。
チェックイン後の外出
消費税二重取りへのクレームおよび拒否
度重なる会費値上げへのクレーム
プールや浴場に汚物が浮遊してたことの対応に対するクレーム
自分と一部のアルバイターとの私的会話
このあたりが不快感を持たれていたのではないか? 彼が店長の権限を笠に、野々宮奈穂を利用したのではないか?
大友裕子自身が主犯とは考えにくかった。
彼女に恨まれる理由としたら?
ロッカーのドアーの開け閉めが荒っぽいのを注意した。
マットの汗拭き用タオルの管理の杜撰さを注意した。
知的面の疑いを考慮しても、いくら何でもこんな事で…。
野々宮奈穂はどうか?
落ち着いて考えてみる…。
奈穂と自分との過去の会話を思いだしてみる…。
(まさか! いや、しかし…?)
神野には、3年前の更衣室を出た直後の奈穂とのやりとりが鮮明に思い出された。
(この子が主犯か! 軽い冗談で間接的に貧乳指摘した事への復讐か。冗談なのに…逆恨みとは言わないが、度が過ぎる)
Kスポーツジムからの依頼ではなく、奈穂自身の復讐なのか!
奈穂にとって、田舎娘を利用するのは容易な事だ。幸い、Kスポーツジムは神野をクレーマーとみなし、警戒している。店長などを手玉に取るのは朝飯前だろう。
N警察署管内の交番巡査程度は更に楽な相手だ。
1か月半が過ぎた。
落ち着いてきたところで、神野は野々宮奈穂を偽証罪で告訴する事にした。そんなある日、印鑑を持って自転車で駅に向かう。電車に乗る前に目的地である兵庫県警にその旨確認の電話をいれる。担当部署によれば、先にN警察署に行って決められたレイアウトに従って偽証内容を記入してから来てくださいとのこと。
再び自転車で、今度はにっくきN警察署に向かう。2人の男性署員が対応してくれたが結局、控訴が決まっているなら担当弁護人に相談して法廷でしっかり言ってもらえば良いのではないかという事になった。
神野も又、高等裁判所で勝訴してから、気が治まらなければ告訴すれば良いと考えたのである。
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