第4話 私は組織を認識した

 外来治療を継続していく中で、私は私の恐怖心は罪業 -それは永劫に続く恐るべき罪業ー の現れにすぎないと気がつきました。私は初め、この恐怖心は他人への恨み妬み -人間への敵意ー のためだと思っていました。私はあの非現実的世界の中の恐怖を知らない人々を文字通り憎んでいました。夢の中や、白昼の空想の中でも、私は人類をいかにして滅ぼすかを空想することもありました。ある機械を使用し、あらゆる人間の脳みそを取り出し、ぐちゃぐちゃにして元に戻すという、さらに残酷な空想もしていました。これは私の人間への復讐でした。しかし、この復讐心は空想の中だけではおさまらず、ついには現実の対象に対してさえ、衝動が湧き上がるほどになってしまい、私は罰せられる必要があると考えました。この残酷でサディスティックな衝動は、充分罪に相応しいと私は考えました。私は罪悪感を感じさせるために、一生救われることのない刑罰の中の刑罰を空想し、その結果として、私は永遠にあの「赤い国」から逃れられないことを決心しました。ただ、なぜ私があの「赤い国」に入り込んでしまい、永遠に逃れることができないのかが、その理由が知りたいとも思ってもいました。




 ある日のこと、私は私の悩みの見知ぬ創造者、未知への迫害者へ、「いつかは知れることだろうが、私がいつどのような悪事を行ったのか教えてほしい」という手紙を書きました。しかし、この手紙をどこへ送ればよいのかわからず、破り捨てました。




 その少し後で、私を迫害する迫害者というのは、あの能面のお坊さんたちにほかならぬこと、すなわちそれが私を処罰しようとしている「組織」であることを発見しました。それは、私の周りを取り巻いている、ある巨大な「組織」であると考えていました。そのうち、命令を発したり、罰したり、罪を宣告したりする人々がその「組織」の最高位を占めていました。しかし、彼ら自身も私と同様に罪人でした。なぜなら人々はすべての他人に対して責任があり、行動の1つ1つが他人に反響するからです。すべての人間は恐ろしい依存関係の中に罪に対する天罰として結び付けられていました。すべての人は、その「組織」の一部分でした。しかし、私だけが彼ら -能面のお坊さんー が「組織」の一部分であると気づいていたのです。


 能面のお坊さんは、私と同じようにあの「漆黒の太陽」の人工的な冷たい光に「照明された」人々でした。そしてそれを意識することは、名誉であり、同時に不幸であると思いました。私以外の人は、「組織」に気づいていないために、罪悪感を感じず生きることができると思い、彼らを羨み、より憎みました。

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少女の体験記 @non-yuru-nurse

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