13本目 キン
それは深夜、自宅で彼女と飲んでいたときの話である。
「スターウォーズって見たことある?」
「いや、ないけど。あれ結構長いから敬遠しちゃってて」
彼女は映画が好きで、ちょうどアラン・スミシーを知っているくらいのほどほど映画ファンといった感じ。僕は映画に明るくないので、話は聞いているだけだ。
「あれって公開順で言うと、4→5→6→1→2→3→7→8→9でナンバリングされてるから変な感じだよね」
「へー」
また一つ賢くなってしまった。知らぬ間に宇宙戦争はそんなややこしいことになっていたのか。
「アナキン・スカイウォーカーが出るのは知ってる」
「ああ、そうだね。4~6はルーク・スカイウォーカーが主人公で、1~3がタマキン、そんで7~9がレイ」
「ふむ」
と相槌を打ってから気づいた。
今、「タマキン」って言った?
「え?」
「何?どしたの」
「いや、さっきタマキンって...」
「そうだけど、1~3の主人公って言ったじゃん、タマキン・スカイウォーカー」
耳を疑うとは、まさにこの事。まさか女性から(というのも変だが)発されるとは夢にも思わない響きの四文字。
「あぁ...」とか言いながらとりあえず話を流した。
考えられる可能性はいくつかある。
・アナキンというのは僕の覚え間違いだった
・彼女がタマキンと覚え間違えている
・やっぱり僕の聞き間違いで、タマキンに聞こえただけ
聞き間違いが第一本線として、彼女の覚え間違いだったらかなり面白いエピソードだけど、あまり現実的とは思えない。
ないとは思うが、僕の覚え間違いという可能性もある。すぐ携帯で調べてみると、
検索|あなきん|
アナキン スカイウォーカー
アナキン 父親
アナキンスカイウォーカー 声優
サジェストはちゃんと表示されているし、念のため検索結果も見てみたがやはり合っているようで、ホッとした。
となると、やはり聞き間違えなのだろうか。もう一度確認をとってみるのが早いのだが、かといって「やっぱりタマキンって言った?」なんて聞きづらいよなぁ。ていうか、なんでこんなくだらないことばかり考えてるんだ僕は。
そんなことを思いながらぼんやりしていると、
「そうだ、今日からBSで『3週連続ホームアローン祭り』やるんだって。見る?」
「ああ、うん」
さすがの僕でもホームアローンくらいは観たことがあるし、面白い作品だと思う。少し古い映画なのだが、現代でも通用する素晴らしいコメディ映画である。
「そういえば昔、主役のマコーレー・タマキンくんって逮捕されたことあったよね、薬物で」
ドカーン!!!!
つづく?
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