5本目 それ、何の経費?

「チェックアウトお願いします。それと、領収書貰えますか?」

 泊りの出張に出ていた男は、宿泊代を旅費交通費へと変換してからホテルを後にした。


「お会計お願いします。それと、領収書貰えますか?」

 出張から戻ったその日の夜、今度は会社の数人と飲むことになっていた男は、飲み代を交際費に変換してから店を出た。


 次の日の昼頃、頭痛とともに目を覚ました男の前には、知らない影が浮いていた。


「こんにちは。私は悪魔です。」

「......」

 昨夜の酒のせいか、それとも寝起きだからか、男が返事に遅れていると、自称悪魔が何やら勝手に話をし始めた。


「突然ですが、100万円で私と契約しませんか?私はなにぶん悪魔ですから、誰かへの嫌がらせが得意分野です。契約していただければ、あなたに不快な思いをさせる人にはすぐに報復して差し上げます。証拠に何かお見せしま――」


「いいでしょう」

 男は聞き終わる前にそう答えた。


「なんと、話が早いですね。確認ですが100万円ですよ?」


「ええ、100万円支払います。それと、領収書貰えますか?」

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