第63話 重さと魔力の関係
次に軽いのは……っと。
私は中断していた重さの順序付けを最後までやって、二番目に軽い魔導具を選び出した。
壊れてしまった魔導具程ではないけど、これも十分軽い。
コップの中の魔導具を入れ替える。
魔導具は問題なく起動して、コップの水は綺麗になった。
一回じゃ駄目か。
一度魔導具を取り出して重さを確かめる。
うん、まだ少し重い。
コップの水を入れ替えて、もう一回、水を浄化する。
今度は取り出した魔導具は少しだけ軽くなっている……ような気がする。
何度かそれを繰り返し、途中から水を入れ替えるのが面倒になって、家じゅうの容器をかき集めて床に並べて続けた結果、最初のと同じと思えるくらい軽くなった。
次の一回で魔力が切れる。
そう思って水の中に落とした魔導具は――また割れてしまった。
「なんでー」
私は悔しくて床をどんどんと
仕方なく三番目をテーブルの上から取り上げる。
コップサイズの水の量でやると何回もやらないといけないのが大変なので、思い切ってタライの水に入れてしまう。
流しに置いたままやれば水
王宮ではぽいぽい放り込んでいたから許容範囲なはず。あっちはもっと容量の大きいタイプだったけど。
「ま、魔力切れ……」
がくり、と肩を落とす。水が多すぎたようだ。
ぎりぎりまで魔力を減らさないと比較ができない。
次に行こう、とそれを水の中から拾い上げて、四番目を手に取り――。
あれ?
今取り出したばかりの三番目と、四番目を比べる。
魔力切れだとしたら、最初や二番目のと同じくらい軽くなっているはずだけど。
「そんなに軽くない?」
軽くなっていることは確かなんだけど、そこまで軽くなっているかというと、そうでもない気がする。
壊れてしまった二つとも比べてみたけど、壊れると軽いという感覚はなくなってしまうらしく、重いとか軽いとかが比較できなかった。
魔力不足が重さに関わっているのなら、
私は魔石を取ってきて、三番目を充填してみた。
重くなった。用意した二十個の中で一番重い。
ふむ。やっぱり魔力なのか。
ならなんで、軽くならなかったんだろう?
私はまたタライの中にぽちゃんとそれを落とした。
魔力満タンの魔導具は水を浄化しきった。
容量的にはまだまだ余裕なはずだ。そうそうなくなるものじゃない。
水を何度か入れ替えて、魔導具の魔力を削っていく。
こんなにたくさんの水を一度に何回も浄化したことがないから、加減がわからない。
魔導具は少しずつ軽くなっていき、私は重さを確かめながら浄化を繰り返した。
もう一回くらいいけるんじゃないかな、と思ってタライの中に入れたとき――。
「また切れた……!!」
その一回が余計だったようで、魔導具の魔力が尽きた。
チキンレースに負けた。
魔導具は魔力切れと言うに
次こそは、と再度やり直すために魔力を充填し直す。
すると、魔石一個分の魔力をちゃんと充填したはずなのに、今度は重さが変わらない。今にも魔力切れを起こしそうな軽さのままだ。
「なんで?」
重さは魔力量じゃないの? ならなんで使ったら軽くなったり、充填したら重くなったりするの?
念のためもう一回魔力を充填してみることにした。
「入った……?」
浄化の魔導具の魔力量は魔石一個分より少ない。だからさっき充填したときにも、魔力はあふれて空気中に溶けてしまっているはず。
満タンの魔導具に魔力が入るわけがない。だから何の反応もしないはずだった。
なのに、魔力は魔石から抜けた。魔導具に入ったということだ。
しかも――。
「重い、よね?」
ついさっきよりも明らかに重い。
さっきは重くならなかったのに?
充填が足りなかっただけ? だけど、一個で足りるはずだよね。
いったい何が起こってるの??
疑問符が頭の中を支配する。
もう一回同じ事をやってみようと、タライの水を何度も浄化する。
きれいになった水を流しに捨てちゃうのはもったいないけど、かといって溜めておく場所はない。
一度やったから、何回くらいやれば魔力が尽きるかはわかっている。
同じ
だけど、回数をこなしていっても、なかなか軽くなっていかない。
さっきはこの回数で魔力が尽きた、という所まできても、重いままだった。
もう面倒だから入れちゃおうかな。
これで魔力切れになれば、私の感覚は当てにならないということになる。
「えいっ」
何度もやって疲れてきていた私は、半分
結果は――魔力切れだった。
「あー……」
がっくりと肩を落とす。
重さは魔力には関係ないらしい。
気のせい……ってことはないと思うんだよなぁ。
じゃあ、この感覚は何なんだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます