第62話 重さの検証
リーシェさんへのお
その辺をふらふらしていてうっかりルカに
とはいえ。
「暇だ……」
だらりと椅子に座って天井を見上げる。板の節目はもう数えすぎて、目をつぶっても位置がわかる。
外に出れば、知らない場所を探索したり、商品を眺めて情報収集したり、色々やることがある。
けど、家の中でとなると、やることがない。
洗濯と掃除は午前中にやった。ゴミの分別回収は来週だし、トイレ掃除は毎日やってる。
慣れてしまうと、こっちの不便さが加わっても、そんなに家事に時間を費やすことはない。子育てがあったら全然違うんだろうけど。
「そういえば……」
私はふと自分の両手の手の平を見つめた。
にぎにぎと手を握ったり開いたりする。
腕の筋肉痛がすっかりなくなっていた。
いつ治ったんだろう?
ポーションの効果だってことは明白なんだけど、バタバタしてたから、いつ痛みがなくなったのか気がつかなかった。
ゲームのイメージだと、飲んだ瞬間に治りそうだけど、飲んでから吸収するまでには時間がかかるよね?
でも魔法みたいなものだから、消化吸収なんてプロセスはないのかな?
なら、「飲んだ」って判定されるのはいつなんだろう。口に入れたとき? 胃に到達したとき? その時吐き出したら効果はある? 誰かと半分こしたら効果は薄まる? それとも半分作用したところで止まる? それはなんで?
そんなどうでもいいことをしばらく考えた後、不思議アイテムの原理なんて考えるだけ無駄だっていう結論に達して、私は考えるのを
こういう、答えのない問いに仮説を立てて延々考えるのは割と好きだけど、一人でやっててもつまんない。
前に
それはそうなんだけどそうじゃない。
答えが欲しいんじゃないんだ。仮定と推測を積み上げていく過程が楽しいだけ。例え的外れだとしても別にいい。
窓から差し込む日光が床に作る四角形はくっきりとしていて、夜ご飯の時間までにはまだまだ時間がある事を示していた。
「そうだ。アレしよう、アレ」
休日に雨でも降ってやることがなかったらやろう、と思っていたことを思い出した。
棚の上に置いてある麻袋を取って来る。
中には浄化の魔導具が二十個入っている。先週、魔導具屋さんでまとめ買いしておいた物だ。
買う時、サービスでやってもらえる魔力の
店員さんに変な顔をされたけど、友達と賭けをするとか言って適当に誤魔化したら、「ああ、最近
私は魔導具が転がり落ちないように注意して、袋の中身をテーブルの上に広げた。
充填をしていないから、残っている魔力はバラバラで、中には魔力切れ
前から時々感じている「何となく軽いような気がする」っていうやつを、ちゃんと確かめてみようというわけだ。
魔導具屋さんは、個々の魔導具の重さはどれも同じだって言っていた。
だから、重さが違う感じがするのは、私の感覚的なもののようだ。
浄化の魔導具を一つ一つ手に取って、重さを比べてみる。
うーん。
こっちの方が軽い……気がする?
やっぱり何となくの違いしかわからない。
元々がそんなに大きい物じゃないから重さもそれ程じゃなくて、
それでも、雰囲気で重さの順に並べていく。
「あ……」
半分過ぎた当たりで、私の手が止まった。
これは軽い。明らかに他と違う。
別の浄化の魔導具と一緒に左右の手に置いて比べてみる。
うん。軽い。
「軽い」という表現は正確じゃない。重さは同じなんだけど、なんか「軽い」。
中身が穴あきチーズみたいにスカスカになってるようなイメージが浮かぶ。
でも、実際にスカスカになってるんじゃなくて、たぶん中はみっちりとちゃんと詰まっているから質量は同じなんだけど、重さが軽く感じるからそういう想像になっちゃうっていうか。
リーシェさんに説明するのが大変そうだ。
でもまずは、この「軽い」っていう感覚が、何を示しているのかを確かめないと。
今までの経験からすると、
私はコップに水を
その中に、この軽く感じる浄化の魔導具を入れる。
予想通りであれば、魔力切れになるはず。
ぽちゃんと落ちた浄化の魔導具の模様が青白く光っ――。
パキッ
「壊れちゃった」
残念。魔力切れの前に、
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