第4話 ~あのコの過去が知りたいんです!!~

 放課後、HRが終わると桜木が茜を迎えに教室にズカズカと入ってきた。桜木の登場で女子たちも「目の保養!!」と興奮している。茜は帰り支度を済ませてヤツと教室から出た。

「いいわね~~美男美女のカップル。とってもお似合いだよね!!」

 女子ってなんで人の恋愛で盛り上がれるんだろうか。とりあえずこの空間にいたくないから、鞄を手にして教室から出た。

 こんな状態で茜の恋愛事情を探れる気分にはならず、まっすぐ帰ろうとしたとき2人を玄関で見かけた。2人が出たのを確認してから俺も出よう。見つからないように隙間から様子を伺う。なんだか張り込みする刑事になった気分。しばらく覗いていると、会話が聞こえてきた。

「さっきのヤツさぁ、まだお前のこと好きだよな。そうじゃなかったら助けたりしないもんな」

「うんそうだね……」

「もうアイツと喋るの禁止な」

「なんで?」

「これ以上気をもたせるのは酷じゃないか。それにを忘れたわけじゃないよな。

 茜の顔が青くなり、カバンを持つ手が小刻みに震えていた。今すぐ出て行って助けたかったが、さっきのことがあってすっかり怖気づいてしまった。彼女が黙って頷くと「じゃあ今日も俺の家に行こうか」と強引に手を掴んで学校を後にした。付き合っている割には楽しそうな雰囲気じゃなかった。ていうか、茜が不登校!?意外な真実が浮上した。この先はしっかり調べてからでないとヤツから引き離すことができない。早く如月と連絡をとらなければ!!急いでスマホを取り出して電話をかけた。

「よぉ、カケル!どうしたんだ?」

「悪いんだけど、今すぐ話したいことがあってさ。どこにいる!?」

「いつものファーストフード。ちょうど彼女から話を聴こうとしてたんだ~~」

「分かった!すぐ向かう」

通話を切ってダッシュで如月たちのいるカフェへ向かう。



※※



 店で無事に彼らと合流できた。息を切らしている俺に如月が「一体どうしたんだ?」と訊いた。

「これ飲んで落ち着いて」

 如月の彼女の宇津木梨花うつきりかさんが水を汲んできてくれた。梨花さんは可愛い上に気が利くとても良い子だ。

「ありがとう」

 水を飲み干した後、さっき見た出来事を2人に話した。話し終わると梨花さんの表情が曇り手が小刻みに震えていた。

「梨花どうした?」

「実は大介くんには言えなかったんだけど……私も中学時代、アイツに告られたことがあったの……」

「えっ!?」

 如月は驚いて言葉が出てこない様子。

「アイツ顔が良いでしょ?昔から顔が良い子ばかり狙っては手を出していたの。それ以外は眼中にないって感じ。しかも付き合っている彼女も山ほどいてさ。私もその中の1人にされそうだったんだ。返事に迫られて困っていたとき、茜ちゃんが助けてくれたんだ」

「茜が!?」

「うん。茜ちゃんかっこよかったんだよ!『誰があんたみたいなチャラい男と付き合ったりするか!!』って。そうしたら桜木のヤツ怯んでさ!スカッとしたわよ。それ以来、告られたりすることはなかったよ」

「そんなことがあったなんて!!」

 如月が珍しく怒っている。そうだよな、自分の彼女があんなヤツに迫られていたと知らされたら。

「それで私はもう迫られることはなくなったけど、その代わり茜ちゃんが……」

「茜がどうしたんだ!?」

「気が強い茜ちゃんのことを気に入ったらしく、しつこく迫るようになったの。告ってはフラれて、それでも言い寄ってきてて……。普通ならもう諦めるでしょ?でもアイツは違った。振り向いてくれないと分かった途端、嫌がらせを始めたの」

「嫌がらせって……一体何をしたんだ!?」

「SNSで茜ちゃんのあることないことを拡散していたの。『〇〇中学の木内茜は男遊びばかりしている、いやらしい女』とか。最初はこんなのデマだし気にすることじゃないって。それで全く動じない様子を見たアイツが、怒って毎日無言電話をかけたり、本人のいる目の前で平気で悪口を言ったり……。屈したら負けだからって、ギリギリまで頑張ってた。ところがある日、精神的に参った茜ちゃんはとうとう学校に来なくなってしまったんだ……」


 また学校に来られなくしてやろうか?


 この言葉の意味がようやく分かった。茜は自分の意志でなく、強制的に付き合わされているんだ!!アイツの狙いはやはり中学時代の復讐か。それと茜が今まで告白を断ってきた理由もなんとなく分かった気がする。俺もアイツと同じことをしていたと考えるだけで、無性に自分を殴りたくなる。そういえば、不登校からどうやって立ち直ったんだろうか。そのことを梨花さんに訊こうとしたとき、怒りの絶頂に達した如月が「もう我慢ならねえ!」と叫んだ。

「梨花と木内さんを傷つけた桜木のヤツを本当に許せない!!なんとかして2人を別れさえないと!!それから二度と近づかないように懲らしめてやらなきゃ、俺の気持ちが収まらねぇ!!」

「いつにも増して如月の気合いすげぇな。めちゃくちゃ頼もしくみえる」

「でしょ~~さすが私の彼氏❤︎」

「よーし、木内さん奪還と桜木ボコボコ作戦を考えるぞ!!」

 3人で茜を奪還する作戦を考えた。好きなコがこれ以上傷つくのは見たくない!!待ってろよ茜。ヤツの手から解放するからな!!



続く。





 


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