第3話 ~なんで付き合うことにしたのか気になるんです!~

「桜木が木内さんに告白して……付き合うことになったんだって……」


**


 昨日の衝撃的な話のせいで全然眠れなかった。これからっていうときに桜木に先を越されて出鼻をくじかれた気分だった。テンションが下がっている中、廊下で茜とばったり会ってしまい、思わず逃げ出したくなった。

「おおお……おはよう!」

上手く言葉が出なかったけど、辛うじて挨拶できた。

「おはようカケル」

茜に変わった様子はなかった。本当に彼氏ができたのかも気になる。訊こうとした矢先、「おはよう茜!」と背後から桜木の声が聞こえた。

「おはよう桜木くん」

 奴に笑顔を向けて返事をするのを見て胸が痛くなった。

「今日の放課後空いてる?」

「うん」

「じゃあ決まり!楽しみだなぁ~~」

 2人のやり取りを見て本当に付き合っているんだという現実を突きつけられた。これ以上見ているのが辛くて「じゃあまた教室でな!」と逃げるように向かった。

 校内では桜木と茜が付き合っているという話題で持ち切りだった。落ち込みながら教室に入ると、如月が「よっ!カケル」と声をかけてきた。なんでそんなに元気なんだよ。少しでもいいから分けてほしいわ。

「おいおい、この世の終わりみたいな顔してんじゃねえよ。こういうときこそ前向きにならないとダメだろ」

「分かってるけどさ。2人が仲良くしているところを見ると、やっぱり胸のあたりが苦しくなるよ」

「分かってるとは思うけど今日からあの作戦実行だからな。腐ってないでちゃんとやるんだぞ。いいな」

「ああ……」



※※



「梶原!?お前一体どうしたんだ?熱でもあるんじゃ……」

 授業中寝ずに受けていたら、先生をはじめクラス中のみんなが俺のことを見ている。なんか照れる。

「2学期だから心を入れ替えて勉学に励もうかと思って」

「できれば1学期から頑張ってほしかったな~~」

 先生がニヤニヤしながら言う。そして隣の席の茜も感心していた。

「やるじゃんカケル!!」

 茜に褒めてもらえると俄然やる気が出る。彼氏ができる前からもっと頑張れば良かった。それより今、自然と話を訊けるチャンスじゃないか!!

「なぁ……」

 切り出そうとした瞬間、茜の友人たちが押し寄せてきた。

「な、なに!?」

 本人もかなりびっくりしている。

「茜!!あんた彼氏つくらないって言ったくせに!!一体どういうことか説明してもらうわよ!!」

「いずれ話すつもりだったんだけど……タイミングが合わなくて」

「木内さん!!なんであんなイケメン野郎と付き合う気にしたんだよ!?」

 みんな寄ってたかって彼女に質問を浴びせていた。本人も質問攻めにあってかなり困っていた。仕方ないな……。

「そういえば茜、先生がお前のこと呼んでたぞ。俺も用があるから一緒に行こう!」

 彼女の手をひいて一緒に教室から脱出することに成功した。

「ありがとね。助かったよ!」

「やっぱりみんなも気になっているんだ」

「そうみたいだね……」

 声のトーンがかなり低い。付き合っていても必ずしも幸せとは限らないのかな。今度こそ訊けると思ったとき、「茜!!」と叫びながらバタバタと大きな足音が聞こえてきた。

「桜木くん!?」

「お前が質問攻めに合ってると聞いて捜してたんだ!!大丈夫だったか!?」

「うん大丈夫。心配してくれてありがとう」

 桜木は安堵の表情を浮かべていた。それから俺の手が茜の手を掴んでいるところを見て、「いつまで掴んでんだよ!!」と怒り強引に引き離す。

「桜木くん。あのねカケルはあたしのことを助けてくれたんだよ」

 ヤツは苦笑いで俺に礼を言う。

「ありがとな。を助けてくれて。あとは俺に任せて先に戻っていいよ」

 イヤミな言い方で追い払おうとする。イラッとしたので戻ろうとすると、後ろから声が聴こえてきた。

「そういえばお前、茜にたくさん告ってフラれていたヤツだよな?残念だったね~想いが届かなくて!!もうお前の想いは一生届かないままだな!!ご愁傷様~~」

 笑いながらバカにされた。なんで絡んだことのないヤツにバカにされなきゃならないんだ。あまりにも悔しくて走って教室へ戻った。



※※



 数分後、茜が戻ってきて「さっきはごめんね。桜木くんが酷いこと言って……」と謝られた。正直まだヤツに対する怒りが消えたわけではないが、茜にそれをぶつけるわけにもいかない。

「あのさ……なんでアイツなんかと付き合っているんだ?一体どこが良かったわけ?」

 気付いたら口に出していた。すると暗い表情で「そんなのカケルには関係ないでしょ!」と吐き捨てた。ダメだ……このままだと売り言葉に買い言葉になってしまう!!

 これ以上の追及は良くないと思い、訊かないことにした。


 

続く。









 










 




 


 



 


 


 










 

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