第4話 内務大臣
とある中東の国の内務大臣が胸をなでおろしていた。
まさか日本のエージェントがここまでやるとは思わなかった。調査に来ているのは
察知してはいた。そのための仕込みは万全だったのでむしろ調査をしてもらいたかった、まさか小学校時代の担任ではなく隣のクラスの教師にまでリサーチをかけるとは、はじめはやり過ぎだと言われた。いくらなんでもそこまで調査はないだろうと言われた、でもここまで来たらとことんやってやる。半分は意地で仕込んだ、ところが、そこまでリサーチされたのだ。
阿部まりえのことを知ったのは、秘密警察が全世界を対象とした語彙検索にヒットしとときだ、阿部まりえのはじめのsnsから二時間後のことだった。
この国は瀕死の状態である、内戦、貧困、食糧不足、過度の失業率。それでいて軍事政権は何もしようとしない。阿部まりえのSNSを見た時これだと思った、すぐさま政府に掛け合った。この理論があれば国は救わらないかも知れないが、国民は救われる、まあ案の定政府内では黙殺された。そこで内務省として日本政府にコンタクトを取った、ところが反応が芳しくない
これは、隠そうとしているなとおもったので、強行突破を試みた。それがエージェントを送り込むということだった。
エージェントの人選以外は本当にスムーズに行った。そもそも秘密警察はこういうことに慣れている、そしてその秘密警察を管轄しているのは内務省であり、その大臣が自分だ。
まず一人の娘を作り上げることから始まった。一人の娘の人生を全て作るのだ、そしてその裏ずけとなる、人間関係も同時に作り上げる、実家には両親が居て兄弟もいる、学校時代の友達も作り、あたかも本当にいるのではと錯覚するくらい作り込んだ、小学校時代の担任ではなく、学年全部の先生も仕込んだ。これがそこまでしなくともと言われたが、結果、よかったのだ。
「まりえプラン」は確かに危険だった、地位や、利権に浸かっている人間ならなおのことだ、でもこの国では必要だと思った。貧困と階層の不公平感、格差は仕方がないなどと言っていられるのは、大したことない状態だ、この国では人々を救うには、国の体制をこわさなければならない。それができるのが阿部まりえなのだ。阿部まりえに付いている娘は報告ではうまくやっているようだが、まあ日本政府にはバレているだろう、うまくやり過ぎて逆に怪しいということがある。阿部まりえについている娘からは、逐一報告が入るようになっている、そしてその全てを自分まで報告するよう、指示を出している。報告によれば、明らかに日本政府からの監視と警護の人数は二十人オーバーでいるようで、そことの関係も考慮しなければならない。阿部まりえについている娘には、とても、難易度の高い仕事をさせている、しかし、せめてもの救いは、命の危険はない、拘束することは阿部まりえの手前できないし、無論それ以上のこともできない、そのせいか、日本政府の監視以外の四人の娘がついている。全員日本人だが、明らかにどこかの国のエージェントだろう。この状態がどこまで続くのか誰にもわからない、いずれどこかのタイミングで交代させなければならないだろう。
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