第3話 まりえプロジェクト
辰巳情報サービス第一部が丸々まりえプロジェクトの中核になった。さらに各省庁、総務省、防衛省、警察庁を中心にほぼ全ての省庁から人員が出て、まりえプロジェクトは千人規模となった。プロジェクトは四の部署に分かれ、とある二十階建てのオフィスビルの最上階から下四フロアーぶち抜きで本部となった。何故最上階からというとこのビルは十六階までしかないことになっているのだ。そこから上には、隠された四機のエレベーターしかなく、厳重に入館者はチェックされた。
第一部は国内と海外の情報操作、第二部は対海外政府対応、第三部は護衛、警護、調査、第四部は国内調整。うち第一部と第三部にもっとも多くの人員と予算がさかれた。第一部二課は全ての警察本部のサイバー警察に指示を出し、まりえという文言のパトロールをさせた。そしてそれが「まりえプラン」がらみの時は、今度は一課がその対処に当たる、この一課の課長に就任したのが、野神慎也だった。
とりあえず
三部が阿部まりえの護衛というか、監視のために一人の娘を阿部まりえの高校に転校させた。本当なら最低二人おくりこみたかったが、公立高校なので二人いっぺんというと阿部まりえに気付かれる恐れがあり、やむなく一人になった。
さらに二人というと、人員の問題もあった。人知れず、さらに本人にも気づかれないように、女子高生を警護するのは、驚くほど困難なのだ。人材がいない、女子高生のエージェントはいない、仕方なくプロジェクトのメンバーの娘を選んだ。防衛省の1佐の娘だった。はじめ、彼女は難色を示した。
当然である。そこを父親の1佐が国家の危機だとか、お前にしかできないだ。英雄いなれるだ、さんざんおだててウンと言わせた。
警護、監視とは言え、はじめ単なる友達でよかったので問題はなかった。
ところが二部に外務省経由で、海外から阿部まりえについての問い合わせが来た。予想に反して中東の小さな国だった。さらっととぼけたが、そんな国が阿部まりえに興味を持つくらいだから、先進諸国は何を考えているかわからない。早急に阿部まりえの警護監視の人員を整えなければならなくなった。ましてこれから大学にはいればさらにオープンな環境になる。
ここで秘密裏に自衛官、警察官、政府関係者、などなどの阿部まりえと同い年の娘を選任するに至った、総数は千五十二人、その中から、二十一人が選ばれた。次に阿部まりえがどこの大学に進学するのかそれとなく、監視の娘にリサーチさせた。そしてその二十一人送り込み、自然な形で阿部まりえと友達になるように画策した。その過程で高校生時代の護衛の1佐の娘はお役御免となった、とはいえ音信不通というわけのはいかないので、家の事情で
海外の大学に行くことになったという触れ込みだ。これなら万が一街であっても一時帰国でバタバタしていて、連絡が取らなかったのゴメンねといえばいい。
阿部まりえが進学したのは中堅の私大だった。
阿部まりえには七人の友人が出来た。彼女たちは、セブンガールズと呼ばれ、それそれに
警護と情報操作でサブがつく
三人一組でそれが七組。二組二組三組で三つのグループを形成する。これにより阿部まりえが出かける時、遊びに行く時、旅行に行く時と必ずどこかのチームが同行する。
とはいえ、セブンガールズ以外の友人関係も完全に排除はできない。それなら
1佐の娘も加えればいいのではとい議論も出た、それを却下したのは野神慎也はだった。
理由は簡単である。
可愛そうといことだ。
そうなのだセブンガールズも、適当なところで、交代させないといけないと野神慎也は考えていた。おそらく阿部まりえの監視と警護は阿部まりえが生きているうちは続くだろう、これは非常に長丁場のプロジェクトなのだ。
そもそも小学校の時の友人、中学の時の友人はいる訳で、そういう子達は。三部から徹底的な内偵が入る、そして問題なしとなって初めて、セブンガールズのどこかのチームと接触させて無害にする、ところが大学二年になる頃、内偵をすり抜けた友人が四人増えた、これは実に巧みで流石の野神慎也も報告を受けて、逆に感心してしまった。
発覚したのは本当に偶然だった。セブンガールズが全員同じキーホルダーのお土産をもらったのだ。
阿部まりえが二泊で旅行に出かけたのは知ってはいたが、当然三チームのどこかと行ってると思っていたセブンガールズだったが、同じお土産をもらったことで、どこのチームも行っていないことがわかった。これには三部が上を下にの大騒ぎになった。
三部の把握していない人間が阿部まりえに接触したのだ、セブンガールズを駆使して、四人の接触者が特定された。三人の日本人と、一人の留学生だった。早速徹底的なリサーチが入る、一人二十人がつき、生い立ち、両親、友人関係、それも小学校、中学校、高校と全ての交友関係が、調べあげられる。留学生の女の子は大変だった、その出身の国に調査官を派遣して調べる。エージェントの数は三十人、そして問題なしと判断が下された。さてどこかのチームにという段になってチームCの護衛担当の子がおかしいと言い出した。簡単に調べがつきすぎるというのだ。言われてみれば当然である、人間の過去、それも本人に気づかれないように調べるのは至難の技だ。そのために、三部があるのだ。かくしてグレーであるということは、みんなが理解はしたが、だからといってその四人を排除もできなかった、ここまで綿密に一人の人間を作り上げるのは至難の技だ。生半可な組織に出来ることではない。調査護衛が専門の三部の調査に尻尾を出さないのだ。どこぞの国家と考えたほうがいい。ならば排除などすれば。こっちが何重もの護衛体制を敷いていることがバレてしまう。静観するしかないのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます