第5話 スーパーで二人で買い物してると夫婦に見えない?
「ゆ、夕也くんごめんなさい!あ、あまりにも可愛いとかって言われて恥ずかしくなっちゃって!大丈夫?」
「全然大丈夫!ナイスビンタ!ところで時雨さんはこれから何するところだったの?」
「お前の切り替えもはや気持ち悪いの領域だぞ」
うるさいアサヒさん!
女の子のミスも優しく受け止めるのが漢ってもんだぜ…
「お恥ずかしながら、引っ越して来たばかりでなにも食べ物が無くて…今からお買い物行くところだったんです。」
「俺と同じじゃん、こちらも食べ物がなんもないんで買い物行くとこだったんだよ。あー、あの、せっかくだから、い、いっしょに行きませんか?」
噛み噛みである。そもそも急に誘われたら気持ち悪いかな?いくら今朝衝撃的な出会いをして教室の席から住んでるアパートの部屋まで隣だからってさすがに距離詰めすぎか?いやでも名前呼びに関しては向こうからだったしそんな嫌がられることはないか?いやでもそれとこれとはまた話が違うか…!?
などと俺が思考の沼にハマっていると時雨さんからお返事が返ってきた。
「もちろんいっしょに行きましょう!逆にここから別行動するのもなんか変じゃないですか?」
ふふっ、と笑いながら言ってくれるこの子は天使だ。可愛すぎないか…?
「じゃあ改めてお買い物行きましょうか!」
どこへでもついていきます!
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というわけで時雨さんとスーパーマーケットに来た、来てしまった。女の子と二人でスーパーに来るってどういうシチュエーションだよこれ、謎に緊張してきたぞ。いいや落ち着け高校の文化祭の買い出しに女子といっしょに行く可能性だってあるんだこんなことで動揺するな宵宮夕也!
めちゃくちゃ動揺してるのがバレてないか不安になったので時雨さんの方を見てみると彼女も偶然こちらを見ていたようで目が合った。ニコリと笑う彼女、可愛いなほんと。
「どうかしましたか?」
そんなことを言いながら首をかしげる時雨さん、そうやって上目遣いをされるとちょっと心臓に悪いんでやめてもらっていいですか?
「いやなにも?それより買いたいものは決まってるの?」
至って平常なフリをして買い物の話題へと繋げる。
「いろいろ使える便利な卵に、とりあえずお肉とお野菜をいくつか買っておこうかなと思います!」
「そうかいそうかい時雨ちゃんはえらいねぇ」
なんか孫を見るおじいちゃんみたいな気持ちになってきたぞ。俺も歳を取ったな…
「私を子ども扱いしてしみじみしないでください!」
時雨さんをからかうのは面白いなぁ…なんて思いながらカートを取りカゴを乗せて二人並んで歩き出す。スーパーに向かう間に、どうせ部屋隣同士なんだし一緒に買い物をして後で家で仕分けしようと決めていたのだ。
あーなんかいいなこの感じ、なんかこう、スーパーで二人で並んで買い物してるとちょっと夫婦っぽく見えない?考えがキモい?俺もそう思う本当にすみません。
俺がそんなキモいことを考えている中、時雨さんはというと、
「このお肉美味しそうじゃないですか!?」
「料理するのが楽しみだなぁ」
「た、卵のタイムセール!?夕也くん、私ちょっと戦ってきます…!」
などと言いながらトコトコ歩いて買いたいものを持ってくる。とても可愛らしい。この子もしかして俺の孫なんじゃないか?きっとそうに違いないぞ!
タイムセールに向かっていく彼女を見ながら意味のわからないことを考える。
「なに言ってんだ夕也、お前さっきからアホ丸出しすぎだぞ。」
突然ひどい言葉をかけてくるアサヒさん。さっきまで静かだったのに時雨さんがタイムセールという戦場に身を投じたタイミングで声をかけてくるのはどうしてだろうか。
はっはーん、さてはアサヒさんも時雨さんの可愛さを直視するのが苦しいからちょうど離れたタイミングで話しかけてきたんだな。わかる、わかりますともその気持ち。
「ちげぇよお前みたいな童貞丸出しキッズと一緒にすんな」
アサヒさんあなたには今まで様々なことでお世話になってきましたが今の発言だけは許せない戦争だよ戦争!
「んな馬鹿なこと言ってねぇで黙って俺の話を聞け。このスーパーに来たあたりからずっと空気に違和感というか感覚のズレみたいなのを感じてたんだが、たぶん当たりだ。ここらへんになんかいるぞ。」
なるほど、何かいるっていう空気を感じてたけど時雨さんを心配させても良くないから変に喋らず時雨さんが離れた今声をかけてきたってわけだ。
「そういうことだ。いいな夕也、さっきまでみたいにふざけてらんねぇぞ。ちょっと気ぃ引き締めとけよ!」
「うぃーっす」
「気ぃ引き締めろっつってんだろ!」
さすがにこれ以上ふざけてるわけにもいかないので脳内ではちまきを巻いて気合を入れる。たとえイメージでも気合を入れるときはなにかしらの行動を取ったほうが力が入るよな。
さぁ、悪霊化け物なんでも来いや!!
「夕也くんなんか気合入ってますね、何かあったんですか?」
可愛い天使が来ました。
「ほぇっ!?いや、ナンモナイヨ!?ただこの買い物が俺のこれからの人生を大きく変えるんじゃないかと思ったら思わず気合が入っちゃってね!」
「なに言ってんだお前は…」
アサヒさんお願いだからテンパってる俺を冷めた目で見ないでほしい。自分でも変なこと言ってるってのはわかってるから!
「そうですか!確かにお引越ししてから初めてのお買い物ですもんね!よーし私も気合入れちゃいます!」
「「え?」」
俺とアサヒさんの声がハモる。俺の意味不明な発言を真に受けるなんて、この子けっこう強めの天然入ってる…?
まぁ、可愛いしいっか!
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