第4話 彼女は恥ずかしがりらしい

激動の午前を過ごした俺は、頭と体を休めたかったのでとりあえず部屋で寝ていた。

およそ30分ほど惰眠を貪った。人間は愚者になる時間も必要なのだ。というか適度なお昼寝は頭が働くらしいぞ。


ふと時計を見ると針は午後5時を指していた。


ん?


俺が家に帰ってきたのは遅くとも午後2時よりは前だったはずだ。

俺は帰ってから制服を脱いですぐに寝たので俺が小学校で習った引き算が間違っていなければ3時間ほど寝たことになる。

嘘だ!俺の体感では30分しか寝てないはずだ!!

こんな現実認められない!


「アサヒさぁんどうして起こしてくれなかったのさぁ~。」


「お前自分が一度寝たらなかなか目覚めないことそろそろ自覚したほうがいいぞ。」


じゃあ今日の朝もアサヒさんが俺を起こしてくれなかったんじゃなくて本当に俺が起きなかっただけってことか?


「夕也お前まだ疑ってたのかコラァ!」


「そんなことより夕也、夜飯はどうすんだ?冷蔵庫に食材なんも入ってねぇだろ。」


しまった。アサヒさんの言う通り冷蔵庫には本当になにも入っていない。せいぜいヨーグルトと飲むヨーグルトぐらいだ。ヨーグルトは体にいいからな。

食料なんて今日の夕方にでも買いに行けばいいなんて思っていたらもうその夕方になっている。早急に準備して買い物に行かないとまずい。

今の俺には、この夜を生き抜くためのごはんがないのだ。

一人暮らしするにあたって、並大抵の家事はできるように母さんに特訓してもらったので料理はできる。これからの時代は料理男子がモテるんですよ!彼女できる気配が一向にないけどなっ!

まぁ料理をするにも材料が無ければなにもできまい。買い物に行くぞ!レッツ購買!


─────────────────────

────────────────

──────────


鍵閉めよし、財布も持ったし買い物袋も持った、忘れ物はないな。

さぁ行きますよアサヒさん!


「へいへいあんま余計なもん買うなよ?」


この人はいつまで僕をガキだと思ってるんだ、そんな無駄なものなんて買うわけないでしょう。


「お前この前このカードコレクションしたいとか言ってウエハース箱買いしただろうが!」


ウエハース箱買い…?ウッ!頭が!なんだこの存在しない記憶は…!?


「ほら馬鹿やってねぇで行くぞ夕也」


なんてアサヒさんとコントをやっているとガチャリと隣の扉が開く音がした。隣の部屋から出てくる人は当然時雨さんだ。モコモコのパーカーが可愛らしい服装をしている。鼻歌も歌っている。可愛いな。そして部屋の鍵を閉めたあとこちらに気づく時雨さん。


「あっ!?夕也くん!?」


と俺を見て驚くやいなや自分の部屋の鍵を開けて戻ろうとする。

…なんで?


「ちょちょちょっと待って時雨さんなんでそんな急にお戻りになろうとなさっていらっしゃる!?」


こっちもびっくりして謎のはちゃめちゃ敬語が飛び出してしまう。だってそうだろ?可愛い女の子が部屋を出て俺を見るなり出たばかりの部屋に戻ろうとするんだから!もしかして俺が時雨さんの部屋の前で出待ちする変態だって思われてる!?

まずい、誤解を解かなければ!


「違う!時雨さん!違うんだ!これは違う!本当に違う!俺は君のことを出待ちしてたとかそんなんじゃない!変態じゃない!」


「お、落ち着いてください夕也くん!別に私はあなたのことを出待ちする変態だとか思ってないです! む、むしろ、か、かかかっこいいなとか思って…(小声)」


「え?俺のことかっこいいって言ってくれた?」


俺は難聴系ラノベ主人公じゃないから聞き逃さない、特に自分に対してプラスな言葉は遠くにいても聞き取ってやる勢いだ。


「い、言ってないです聞き間違いです!」


前言撤回俺はどうやら幻聴系ラノベ主人公だったらしい、もしかして遠くから聞こえてた俺に対するプラスな言葉って実は全部幻聴だったのか…!?惨めすぎるだろ… 

驚愕の真実にうひしがれている俺を横目にアサヒさんが時雨さんに声をかける。


「このバカは置いといて実際お前はなんで急に部屋に戻ろうとしたんだ?」


「え?それは、あのぉ〜、こ、この服装が恥ずかしかったというか〜。」


赤面しながら答える時雨さん。可愛い。

そして恥ずかしがることなんてない、時雨さんの格好はめちゃくちゃ可愛いんだから!さっきまでの制服とのギャップで更に可愛く見える。その服装を恥ずかしがって赤面していることで更に更に可愛く見える。なんだこの子は可愛さの殺戮兵器か…?(オタク特有の早口)

あれ、時雨さんの顔がさっきよりも赤くなってないか?なんかぷるぷる震えてるし…


「だっ、誰が可愛さの殺戮兵器ですかー!」


「おわーーーっ!!!」


ぺちーん!

いいビンタだ、一発K.O.だぜ…

顔を真っ赤にして震えてたのは恥ずかしさからでしたか…


「夕也、考えてること口から全部出てたぞ。」


アサヒさん、そういうことは早く言ってくれないかなぁ…









______________________


自分を見失って失踪していました。約2年経ってもこの作品を忘れることはできなかったのでもう一度描いてみようと思います。もし読んでいただけたら嬉しいです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る